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國取り勇者  作者: 朝方
風纏う国
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魔力属性




 アルシェの話に相槌を打っていると、クリフ先生が戻ってきた。少し遅れて王子も戻ってくる。


 少し王子の様子がぎこちないが何かあったのだろうか?


「おっとアルシェ。王子達が戻ってきたぞ?」

「魔術的空間断層を利用して、関連性を高め――あれ本当だ!」



「どうだった王子、バルクの容体は?」


 近くまで歩いてきた王子を捕まえて話しかけると、素っ頓狂な声を上げた。


「へっ? 失礼、アイリス様でしたか。どうされました?」


「いやバルクの容体をだな……。何かあったのか?」


 明らかに気が漫ろだ。……というか落ち込んでるのか?


「いえ、少し自分の間抜けさに嫌気が差しまして……。」

「今更ではないか?」


 ガックリと肩を落とした。


「ですか………。あぁ、バルク君は大事無いとの事です。昼頃には回復するかと。」


 はっや! 魔術ってすごいんだな……。



「よかった!あの人ぶじなんだね!」


「ええ、なのであまり気を落とさないで下さい。」


 何にせよ良かった。いきなり同級生が居なくなったうえに、友達が殺人犯になるなんて事が無くて……。


 内心ホッとしてると、そこで授業終了を知らせる鐘が鳴った。



「時間だ。皆魔術を使ってる者は終了させて集まれ。委員長、気付いてない者が居たら呼んできてくれ。」


「わかりました。それでクズハさんですが、彼女は?」


「彼女なら養生室にてバルク君に付き添っている。折りを見てシャディ教諭がこちらに寄越すだろう。」


「それなら良かったです。では声掛けに行ってきますね。」


「頼んだぞ。」


 そう言うと委員長は魔道場の奥の方の、まだ何かしらの魔術を使って的当てをしている人達の方に歩いて行った。


 そういえばクズハさんと委員長は友人だったな。戻ってこないし心配するのも無理はないか。



「では全員揃ったな? では、皆それぞれ思い思いに魔術を体験したと思う。その力、利便性、多様さ。または怖さを知れたのなら僥倖だ。

 次の授業ではいよいよ皆に魔術の修得をしてもらう。簡単なものではあるが、我が学園の、独自に築き上げた魔導学に基づいた教導を行う。既に魔術を扱える者にも無駄な時間とはならないだろう。」


 ふむ……。魔術にも色々あるのか?

 俺の疑問に気が付いたのか隣のアルシェがこっそりと話掛けてきた。


「ベリアル式魔導教法だよ。いままで散在してた魔術をまとめあげ、定型化して教えやすくしたんだって。」


「へえ?物知りだなアルシェ。」


「えへへ。じつはわたしもその方法で魔術をおそわったんだ!」


 ベリアルとはこの学園の名前だったな。それを冠する程とは随分自信があるんだろう期待できそうだ。

 まあ、比較対照がないからなんとも言えないんだけどな。



「アルシェ。無駄話とはな、私の話はそんなにつまらなかったか?」


 

 やばい、話してたのがバレた。声がした方に目を向けると、クリフ先生が眼鏡を触りながら青筋を立てて睨み付けている。


「せ、先生!ごめんなさい!」

「済まないな、彼女は私の疑問に付き合っただけだ。叱るなら私にしてくれ。」


 俺ははアルシェを庇って前に出た。


「………次からは気を付ける様に。疑問の解消も大切ですが、それで話を聞き逃してしまってはもともないですからね?」


「は、はい!」

「もっともだ。肝に命じよう。」


「………よろしい。では、次の時間は十分後だ。場所は変わらずここで行うので、それまで各自自由にすると良い。

 だが、危険な事は控えるのだぞ?」


「「はーい!」」



 クリフ先生が魔道場から出ていくと、皆自由にし始めた。特に的当てが人気なのか人が集中している。


 的を壊せてる者は居ないが、特に皆それを狙ってる訳ではなく、どちらかといえば遠距離から当てるのを重視している様だ。外したものに当てた人がアドバイスをしたりして、わいわいと楽しそうに見える。


「アイリスありがと!かばってくれて!」


「アルシェは私を思って教えてくれたのだし気にする事は無い。」


 というか俺が怒られなかったのは多分勇者だからだろう。それでアルシェ一人怒られるのは良心が咎めるからな。

 そ、それに友達だし……!





 *





「それでは魔導教養の授業を開始する。各人の魔力属性を測定するので、名前を呼ばれた者から順にこの水晶に触れてくれ。」


 クリフ先生が指し示したのは透明な水晶だった。魔道具かなんかだろうか?


「あれは魔泡玉だね。」


「ジョンか、無駄話をすると怒られるぞ?」


「大丈夫だよ。先生は測定に忙しそうだからね。それに待っている間暇なんだからそのくらい多めに見てくれるよ。」


 言われてクリフ先生を見ると、確かに忙しくしている。

 生徒が手を置いた水晶を真剣に見つめると、一言二言生徒に告げ、何事かメモをして次を呼ぶのを繰り返していた。


「……だとしても、何故私に話し掛ける? 気でもあるのか?」


 俺の中身男だし、もしそうなら勘弁して欲しい所なんだが……。



「あはは、違うよ。僕の友達はイストと委員長だけでね、話相手を増やしたいんだよね。」


 名前の出た二人を探すと、委員長はクズハさんと何か話してて、イストはちょうど先生の所だった。

 ついでに王子はアルシェと何か話してる。……変なこと吹き込んで無いよなあいつ?


「それで、同じく溢れてる私の所に来たわけか……。」

「だね!」


 なんか気持ちが落ち込んできた……。一人でいるのもなんだしアルシェの所に突撃しに行こう、そうしよう。


「……では一人で居るといい。私は友人の所に行くとしよう。ではな。」


 アルシェと王子なら話し掛け易いしな。同じ編入組なのもあるし無下にはされまいよ。……もしされたら泣こう。


「うん? ちょ、ちょっと待って! 冗談だから! 少し話したい事があったんだよ!」


 話したい事?


「……なら最初からそう言えば良いだろう? それでなんだ?」


「それはね――」

「次、アイリス・ブリタニア。」


 っと俺の番か。


「悪いが順番の様だ。話は後にしてくれ。」


「……そうだね。」


 ジョンの話も気になる。

 だが、それよりも魔力属性の測定だ! 正直めっちゃ楽しみだぞ!? 俺はどんな魔術が使える様に成るんだ? 火?水?地?それとも王子と同じ風とかか?


(いったいどんな魔法が使える様に成るんだろうな!)


 アイリスはわくわくした気持ちを出来るだけ隠しながら、水晶に手を置く。

 ――とたんに、色とりどりの泡が水晶の中に溢れだした。


「これは……。(流石勇者だな……。)全属性だ。泡の色が多過ぎて判断に困るが大抵の魔術が使えるだろう。」


「ぉぉ! ……そうか。」


 多分勇者だからだろう。多分全属性は珍しいんじゃないか? 女神様々である。

 俺は小さくガッツポーズをした。



「では次アルシェ・リブート。」


 測定が終わり、その場から離れようとしたが、アルシェの名前を聞いて、少し離れた所で足を止めた。


 あまり他人の結果を覗くのはいい気はしないが、気になるな……。


(離れるついでだ。少し聞こえてしまっても誤差だろう。うん)


 自分を誤魔化すとアルシェの方にちらりと目を向ける。

 すると、ちょうど手を置くところだった。



 アルシェが水晶に手を置くと、最初反応が無いが少しすると泡が溢れて来る。

 ()()()()。まるで墨の様な泡が隙間なく水晶を覆い尽くす。次第に半透明の水晶が真っ黒に染まった。


「……全属性だ。訓練次第では全てを使う事も出来よう。」


「うん。」


 ……まじか、あれ? 全属性って普通なん? なんか水晶の反応がだいぶ違ったけど……。あれはまるで……。


 ………まあいいか。それでアルシェに何かあるわけでも無いし。



「これで全員だな。では次だ! これから対応した魔術触媒を配布する! 各自それぞれ対応した属性の触媒を持っていってくれ! 忘れた者は聞けば教える。質問はないな? では、『招来(サモン)』」


 クリフの詠唱によって、教卓の上に袋が出て来た。それを先生がひっくり返すと中から、色とりどりの石が嵌め込まれた指輪がうえにばら蒔かれた。


「属性は色と連動している。見れば直感的に分かるだろうが、わからないものがあれば聞くといい。

 ああそれと、既に触媒を持っている者も授業ではこちらで用意した物を使うように。」


 先生が言い終わるが、皆動こうとしない。触媒?とか言うやつではあるが、指輪を漁るのに抵抗があるのだろうか?卑しいと思われるとか?


 動きがない俺達の中から二人が先んじて指輪の元に向かった。


「わ~! きれいだね~! ぼくの属性は水だから水色のこれかな~!」

「イストはそれにしたの? 僕はこれにしたよ。」

「お~翠玉みたい~!」

「良いでしょ? リングは単調だけど魔精石は個性があるからね! 先んじた人の特権さ。」

「流石だね~、ジョンなら良い商人に成れるよ~。」

「おっと、商家のお坊ちゃんにそう言われるのは嬉しいね♪」

「も~からかわないでよ~。」

「ごめんごめん。」


 おー!ぱっと見同じ様に見えたが色々違いがあるのか! それは少し気になるな。

 他の生徒達も彼らの言葉でそわそわし出している。



「因みにだが、その触媒は譲渡に成る。後の授業でも使うので失くさないように。」


 その言葉に一斉に皆机に群がった。流石に物欲が勝った様だ。

 ……アルシェや王子もあの中に居るがあれはノリで行ったな?



「あらら、大盛況だ。」

「だね~!」


 机に向かった皆と入れ替わりにジョンとイストが戻ってきた。


「煽ったのはお前だろ?」


 ジョンに非難の眼を向ける。正確にはイストもだが彼は素みたいだし、主犯はこいつだろう。


「まあ、魔術の触媒って買うと高いからね。手に取るのを躊躇するのは分かるけど、どうせなら拘りたいからね。」

「そだね~。」


 ……そういうものか、まあわからんでも無いが。てか答えになって無いよ。



「あっそうだ! さっきの話の続きだけど――」


「悪いが私も触媒を取りに行かねばいかん、取り尽くされてはたまらんからな。」

「そうだね……。じゃあまたあとで。」



 そう言うとアイリスは人混みの中に身を投じた。


 ――そういや俺って全属性だから全色取るんだよな? ……すごい強欲なやつに思われないかそれ……?



 


読んでいただきありがとうございます!


いきなりなのですが、会話文末尾の句点についてどう思いますか?


作者としましては何となく使うものだと思ってたのですが。調べたところ一般的ではないようなので、修正しようか迷っています。


もし変えた方が良い、読みづらいなどありましたら、お手数ですが感想欄か何かにお願いします。


特になければそのままでいきます。



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