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そろそろ召喚やめませんか?  作者: あひる隊長
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聖女の企みと魔法師団長

 (ギフトとはすごいものだな…)


 マルスは思う。鍛錬せずとも得られる力。あの幼女のような女の子がハカール君を破壊した。どんな力が得られるのか、召喚される世界がどのようなものか分からないと言うのが難点だ。


 (もし、召喚する人間を選ぶ事が出来たら…)


 新しい力が与えられて…しかし逆もある。召喚された人間が善人ばかりと言えるのか?一体何が呼ぶ人物を決めているのか?

 マルスは知っている。召喚の儀式はより大仰にみせているが、実はとてもシンプルなものだ。ためしたことはないが、式を行う前に書き込まれる複雑な魔法陣の大半は必要無いものでは無いかと。膨大な魔力が必要なのは確かだ。しかし、魔力の質は…狂信的な集団がなにかを召喚してやろうと思う事は無いのか?

 マルスはブルリと頭を振って考えるのを止めた。


  ◆◆◆


 「とりあえず、後日改めて目視出来る状態での魔力の確認を行う事に致しましょう。そうですね、炎と回復…回復魔法はどれくらい使う事が…」

 「か、回復はほんのすこぉしです!どちらかと言うと炎系の方が得意かもです!」


 チャチャは元々炎の魔力が一番強い。最初の召喚でコントロール出来ないほどの魔力と言うギフトを得てかなり苦労した。しかし炎なら日々の生活にも使っていたので魔力調節がずいぶん上達したように思う!回復魔法は…直前の転生で、弟子達を鬼瓦のような顔で叱咤していた自分の顔がよぎった。

 あれは完全にダメなやつだった。


 「炎ですか…安全面が…」


 何やらブツブツ言っているが、パレードとかの余興で何かパフォーマンスをするような事を言っていたのを思い出す。

 前世や前前世と比べてずいぶん平和になったと思う。前前世は魔物の溢れる世界に、ほんの少し人間の住める場所があるだけだった。召喚されたチャチャも必死に戦うだけだった。不思議とそんな世界に呼び出された不満は無かった。それは2回目の召喚の時もだった。

 元の世界での家族の縁が薄かったのもあるかも知れない。召喚されると何故か『帰って来た』ように思った。もしかしたら生まれる世界を間違えていたのかもしれない…と思うくらいだった。

 だから魔物が溢れていても、戦争が起こっていても、召喚された事に対する怒りは無かったのだろうと思う。


 3回目の召喚が一番理不尽なのかもしれないが、ひょっとしたら今までのご褒美なのかもしれない。平和になった異世界(こきょう)で生きていける…


 「魔力の確認をする時にギフトでどれくらいの魔力量になったかも確認しておきたいんです。その時に同じ系統の魔法を使える人の魔力の流れが見たいです。」

 「ああ、チャチャ様は人の魔力量が見えるのでしたね。なるほど、それで魔力の流れか…」


 嘘である。うまいこと言って誰かにお手本をみせてもらって今の時代の一般魔法師団員のレベルを把握したい。それよりほんの少し強い魔法を使って、ちょっとすごいくらいのレベルを装いたい。

 ただし、チャチャにそれだけ細やかな魔力の操作が出来ればだか。


 「では、早急に手配して準備ができ次第チャチャ様にご連絡します。」

 「分かりました。お待ちしています。」


 (やった!上手く行ったわ!)


 そう思っている事はお首にも出さず、チャチャは再びニッコリ笑った。


  ◆◆◆

 

 「チャチャ様はとてもいいな。」


 チャチャとの対面の後、第一魔法師団長はボソリと呟くように言った。


 「…そうですか?まぁ…整った顔立ちでお可愛らしいですが…」

 「まぁ…それもそうだが…」

 「?」


 マルスは暫し考える。


 「…私の息子に良く似ている」

 「師団長の…先日3歳のお祝いをされた?」

 「無垢だ…」

 「??」


 アズールに召喚された歴代の聖女達、少なくとも、現存する資料では聖女達は突然アズールに召喚されたにも関わらず、何の関係もないアズールの民のために身を尽くして、アズールの地に骨を(うず)めた。

 チャチャもいずれはそうなるのだろうか?

 彼女らが召喚された時は世界が、国が混沌としていた時だった。今はどうだ?

 召喚としての儀式は意味を成さない。祭りの余興と言っても過言では無い。若い娘に命を賭けさすよりはマシだろうが…

 マルスに真摯に受け答えをする年若い聖女。イタズラが見つからなかった事を喜ぶような笑顔。まだ隠している事がありそうな感じだが、せめて隠せていると思わせてあげようと思う。


 「話は聞いていたな?炎魔法は、キリアン、お前得意だったな。」

 「はい。三魔術師団合わせても1、2の実力であると自負しておりますが。」

 「よし、お前と、念のため結界魔法を使える者数名、それから水魔法を使える者…第二師団からランドルフ・マクファーンを貸してもらえぬか聞いてくれ。彼を借りようと思ったらグースワルドもくるかも知れんな…いっそ第二師団長ごと手伝って貰おうか。」

 「でしたら第二師団長に聖女様の魔力測定にご協力頂きたい旨と、その時にさりげなくマクファーン殿を含める様にし、ついでに結界、水魔法の得意な団員を少人数借りれないかと伺ってきます。」

 「ああ、頼む。」


 自分の考えを良く理解する部下に苦笑するマルス。部下が優秀なのかそれとも…案外自分も隠し事が出来ないのかも知れない。



 期せずしてランドルフと同じ事を考えるマルスであった。

 

 

マルス様、全部チャチャですが…

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