魔術師団長の懐疑と聖女様の憂い
(…やってしまった…)
数分前の己の所業を激しく後悔するチャチャ…。丁寧に振る舞う中で若干の胡散臭さを漂わせてチャチャを見ていた第一魔法師団団長は、まるで崇拝するが如き目に変わっていた。それもそのはず、彼の手には技術局開発最新式魔道具魔力判定ハカール君が残骸となって握られていた。技術局曰く通常の3倍測れる優れものだった。
「特に炎系、光魔法もあるようでしたね」
ハカール君が残骸となる寸前、赤と白の魔石がいち早く光ったのを見極めたらしい。確かにチャチャの持っている魔法の中では炎の魔力が一番高かったが…光魔法は前世で回復魔法をよく使っていたから伸びたのかもしれない。
1回目にチャチャが召喚された時は魔力判定が出来る物は無かった。2回目に召喚された時になんの魔法の適正があるかが分かる魔道具を完成させたのは召喚された前世のチャチャだった。
今回の召喚でも相変わらず一人の人間に魔力を集めて行う形だったので基本的な所は変わっていないと思い有りったけの魔力を込めて(力を入れて魔力が反応するのかは謎だが)臨んでやった。召喚した癖にエラソーな態度の魔導師団長にちょっと目にモノ見せてやろうとか
「これは技術局に依頼した物なのですが、我が国では生来魔力量と言う概念が無かったのですが、適正に加え一人が持つ魔力の量も測れた方がより魔力を集めやすくなるのではと言った団員の意見から考え出した物で、いやはや、その団員の魔力も素晴らしいのですが、それをも凌ぐ…僭越ながら次期師団長に任命したいほどの実力かと…」
「とんでもない事です‼︎」
怒涛の勢いで話すマルスを慌てて止める。なんだかこのままでは前世、前々世の二の舞いになってしまうような気がする。
「あのヒョロっとした、えーと…ランドルフくん!ランドルフくんの魔力も相当じゃ無いですか⁉︎」
「あ…まさにランドルフです。ランドルフ・マクファーン。」
マルスが驚いたとばかりにチャチャを見る。奇しくも第一師団に是非ともと思っていたランドルフの名前が出てきたのだ。
しかし、それどころではなかったチャチャはまたやってしまったのかも…と、冷や汗をかいていた。
「聖女様…チャチャ様は人間の魔力量を見ることができるのですか?」
「あ…なんとなくですが…」
これは本当だ。召喚された時も、あたりを見回して飛び抜けて魔力量がありそうだったランドルフが責任者だと思って詰め寄ってしまったのだ。
「感じるくらいです。体から溢れている量と言うか…意識して隠している場合はわかりません。」
「意識して隠す…そんな事もできるのか…」
「ん〜、見せたく無いとかそんな感じでもある程度は隠れる?見えにくくなるかと。これはあたしのいた世界では常識って言うか、こちらの世界との使い方の違いと言うか…」
慌てて『普通』を強調してみるが
「チャチャ様は随分魔法に造詣が深いように思われますが、魔法学校又は魔法を使われる仕事に関係されていたのですか?」
と聞かれて慌てる。
以前の生では(爆炎の)魔術師と(すごいスパルタ教育の)治癒魔術師(の師匠)やってましたが(汗)
「ま、そんな感じです」
いくら前世、前々世の華々しい(?)功績があっても元の世界では17歳の平民の女の子(ここ強調!)だったのだ。
「もともと、あたしの使える魔法は炎と治癒系です。たぶん魔力量は多いですが、今回の召喚で得たギフトじゃないかと思いますので、どれくらいの力かは分かりません。」
チャチャが聖女らしくそっと胸を押さえて節目がちに答えると、マルスはほぅっ…とため息をついて年甲斐もなく頬を赤くそめた。
(い、いける、これはいける!今回こそはいけるわ‼︎この、今回のギフトで、今世こそ普通の女子の幸せを掴むわ‼︎)
ふわふわのピンクの髪の美少女がこんな事を考えているとはさしもの魔術師団長も気付く事は無かった…
ギフト巨乳!
好みのタイプはそれぞれですが…