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そろそろ召喚やめませんか?  作者: あひる隊長
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召喚された聖女の孤独な戦い

 「聖女様召喚のパレードは例年通り行う…と。予算は財務課のベルモント殿と相談するとして、華美にならぬ方が宜しいでしょうか?」


 宰相、グステフ・べオールの言葉に軽く首を傾げ、国王ロズワルドは綺麗に整えられた顎髭に触った。


 「昨年のドラゴンはパレードなんぞ出来るものではなかったからなぁ。聖女の事を考えたら呼んで早々連れ回すのもなんだが、他国への牽制の事もある。聖女の力を確認してから何かパフォーマンスを盛り込んで…」


 そう。アズール王国は魔法大国として恐れられているのだ。他国からのあからさまな干渉や侵略行為はないが、ラシナーン大陸の中央に位置するアズールは常にそんな危険と隣り合わせている。国内の安定と他国に向けて国力を示すパフォーマンスは必要不可欠なのだ。


 「いっそ昨年召喚したドラゴンに乗せてのパレードはどうだ?」


 落ち着いたドラゴンの気性は元々は大人しいらしく、今では8歳の第一王子ペットのようになっている。


 「それはいい…」


 いやまてよ。上空を行くドラゴンの背に乗る聖女様…。


 「見えないな」

 「見えませんな」


 聖女様の力については召喚の儀式を取り仕切った魔術師団団長にでも確認してもらう事になっている。そこは自分達の管轄外なのだ。それよりも、黙って座ってくれればそれなりに見えるのだが、よく言えば活発、悪く言えば…

 包丁を片手に迫って来るピンクの少女…


 「「礼儀作法の先生を…」」


 アズール王国最高権力者と宰相は奇しくも声を揃えたのだった。とにかく、その時だけ遠目から見て神々しく見えさえすればいいのだ。

 …その時だけでも近寄りがたい神々しさを放っているように見えたら、あの異様な迫力の乙女とは誰も思うまい。一瞬あの迫力でもいいような気がするが、王と宰相は首を振る。

 乙女は清楚な方がいい。決して好みでは無い。国民の理想の為なのだ。


   ◆◆◆


 「へーっくしゅ、へーっくしゅ!」


 乙女らしく無いクシャミをしたのはピンク髪の聖女様、チャチャである。向かい合うのは第一騎士団団長、マルス・テイルズ。後ろに控える部下達はあわあわしているが、マルスは何事も無かった様な顔をしている。さりげなくハンカチを出して顔を拭いてはいるが…


 「失礼。それであたしの魔法適正でしたっけ?」

 「はい。聖女様自身使用できる魔法はご存知でしょうが、失礼ながら何がお得意なのか、私の方でも確認させて頂きたく思っております。」


 チャチャはマルスをジト目で見る。シルバーグレーの短めの髪を後ろに撫で付けているイケオジだが、用件のみを淡々と語る姿は人形のようだ。17歳と言うチャチャに対して喋り方を崩さないあたりも慇懃無礼甚だしい。

 誰でも少なからず魔法が使えて当たり前のアズール王国では、聖女様の価値はさほどでも無いのかもしれない。ましてや、今は戦争時でも魔王降臨中でも無い。


 (ほうほうほう。聖女様のお手並み拝見って感じなんでしょうな)


 「何します?何から行きます?」


 聖女らしからぬ不敵な笑みでマルスを見た。

 

  ◆◆◆


 マルスは思っていた。


 ただ異世界から召喚されただけの娘が、血の滲むような努力を重ねて魔物の討伐に当たる我らの上に立つのかと。

 現実的に指揮されるわけでは無いが、何かの折には『聖女』と崇めて膝をつく形を取らなければならないだろう。例え国民や他国向けのパフォーマンスだとしても、己が命をかけて仕えると誓った王とは違う、正にポッと出てきた小娘にだ。

 見知らぬ国に呼び出したのは自分たちだ。しかし何処か割り切れぬものがあった。

 

 …しかし、この娘やけに堂々としている。


 思えば最初から物おじする事なく、困惑すらしていなかった。

 入団テストで好成績だった第二師団員に迫っていった。是非とも第一師団に入れたかった奴だ。異世界から呼び出された聖女には何か感じるものがあったのだろうか? 

 いやいや、魔法師団全体でも若手の彼は文句を言うのに言いやすかったのだろう…


 魔力判定にはスタッフの形に魔石を取り付けた魔道具を使う。そして今マルスの手元にあるのは技術局で開発した最新式のものだ。アズール王国では大体の者が魔力を持っているので、魔法師団や騎士団又は特別な魔力が必要な職種に限り魔力判定をする事になっている。しかし、その判定にはもっと簡易な判定具で行うのだが…


 (これは新しい魔道具を開発した技術局の依頼と聖女の能力を調べよと言う命令を同時にこなそうとしているだけなのだ。決して聖女の力を試そうなどと言う事では無いのだ)


 最新式魔道具は今までよりさらに詳細に魔力の判定ができる優れものらしい。しかし、マルスは、この国の…この世界の人間は知らなかった。この世界では魔法が当たり前ではあったが、大掛かりな魔法は大勢の魔力を集めて行うのが普通だった。なので、魔力量はさほど重要視されていなかった。しかし、チャチャの世界ではそうでは無かった。『魔法を使える』と言える者はある程度の魔力は持っていて当然の世界であった。そして、チャチャは最初の召喚のギフトで魔力量が増大していた。それは転生した後にも受け継いでいた。魔道具を差し出されたチャチャは『ふんぬううぅぅううぅ‼︎』と魔力を込めた。


 ―ガシャーン‼︎―


 技術局開発最新式魔道具魔力判定ハカール君はあっけなく破壊された。

 そしてマルスの目の前にはドヤ顔の聖女チャチャ様がいた。


恋愛要素が(まだ)薄いので作品傾向をファンタジーに変更しました(号泣)

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