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そろそろ召喚やめませんか?  作者: あひる隊長
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夢見る乙女の些細な秘密

 (何言った⁉︎落ち着けあたし!ギフト、ギフト言っちゃった?あれ?あんた達何で知らないのよ‼︎あんた達が言ってたに!召喚何回目よ!あたし何か疑われてるの⁉︎)


 チャチャは焦っていた。それはもう、かなり焦っていた。

 繰り返したくない失敗。

 その事ばかりが脳裏を過った。


 初めて召喚された時か?ギフトで膨大な魔力を得たのは。


 その時アズールはまだ混乱していた。国と呼べるほど形を成していなかったかもしれない。隣国との小競り合いにモンスターの大量発生。まだ人間の住める土地は限られていた。

 そこに召喚された可憐な姿で巨大な炎を操る魔術師。人々は畏怖の念を込めて召喚された乙女をこう呼んだ。


 『爆炎の魔術師』


 元々チャチャ(その時は別の名前で呼ばれていたが)は炎の魔法が使えた。生活に便利なくらいの魔力だった。


 爆上がりの魔力の制御は簡単には出来なかった。

 

 チャチャは仲間たちと戦いアズールを守った。押し寄せる魔物の群れも炎の魔法で薙ぎ払った。たまに近くにいる仲間にも被害がでた。

 幸い仲間たちに死者は無かった。癒しの乙女達が懸命に治療したからだ。心優しい癒しの乙女達に救われた仲間たちはやがて恋に落ち、アズール王国が出来上がる頃には幸せな家庭を築いていた。


 『爆炎の魔術師』は魔術師団の元になる組織を確立し、たくさんの弟子を育て、その弟子達に見送られて穏やかに一生を終えた。


 お一人様で。



 2度目の召喚には癒しの力が宿った。


 国同士の小競り合いで疲弊していた人間たちを絶え間なく襲ったのは増えた魔物であった。

 以前の召喚でチャチャ達が基盤を作った組織が魔術師団、騎士団として確立していたアズールはまだましではあったかもしれない。だが、魔物の住む土地に近い王都から離れた町や村が魔物に襲われる危険な場所であるのは変わらなかった。


 癒しの乙女達は数人掛で怪我人、病人を癒していた。辺境の村まで来る事は無かった。

 そこに召喚された美しい乙女は、誰もが諦めるような傷を負った人々も、たった一人で治してしまう強大な力を持っていた。

 

 チャチャ(その頃も別の名前で呼ばれていたが)は聖女として、その大いなる力でたくさんの人を癒した。王都以外でも精力的に訪れた。

 今度は怪しげな二つ名がつかないよう、爆炎は誰も見ていない所でしか使わなかった。


 しかし、聖女様をデートに誘ったりする強者は居なかった。おじいちゃんおばあちゃんには「孫の嫁にぃ」言われたが、本当に紹介してくれる人は居なかった。


 『聖女』は癒しの乙女達をさらに鍛え上げ、素質のある子供達を治癒術師にするべく教育機関を確立し、たくさんの弟子を育て、その弟子達に見送られて穏やかに一生を終えた。


 これまたお一人た様で。


 過ぎた力や憧れや崇拝は悪でしかない!

 なぜなら、デートに誘われた事も皆無であったからだ!!


 バレてはいけない。前世のことは。だってチャチャは17歳。今度こそは彼氏が作りたい。デートもしたい。あわよくばイケメンと結婚もしたい!


 だからバレてはいけない。

 転生&召喚を繰り返して若干人の域を超えているかもしれない事は!(涙)


  ◆◆◆


 「あた…わたし、なんか言いました?混乱してるのかな?ギフト?」


 宰相は人の良さそうな笑顔を崩さないでチャチャを見ている。チャチャの背中をじっとりと汗が伝う。


 「わたしのいた国では、神から与えられた力をギフトと呼んでいたのでその事を思い出しました。そして、それは何か試練があると新たに力が加わったりする事があったので…」


 突然今まで生きてきた世界から別の世界に呼び出されると言う事がうら若い乙女にとって試練だと言われればそうなのかもしれない。菓子を貪っていたのは自分を落ち着かせる為なのか。

 長く戦乱から離れているアズール国民は基本善良なのである。


 「癒しの力は350年前の…苛烈の聖女様の再来のようですね。」

 「す、すごい名前ですね〜?わたしは大した力はないと思いますよ〜。お役に立てるかどうか…」


 (なんて事言うんだ!メガネ!しかもそんな強烈な呼び名あたしだったら泣くわ!)


 「苛烈の聖女様ですか。かの乙女はアズールに治癒術を広めたとされています。この方のお陰で男女問わず治癒魔法が使える事が証明され、首都から離れた土地にも治癒術師を配置出来る様になされた方だとか…」


 トドメを刺したのは人の良さそうな宰相だった。

 

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