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そろそろ召喚やめませんか?  作者: あひる隊長
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ピンクモンスターの懊悩

 今日は待ちに待った給料日だった。いつもは買わないちょっとお高めの、お肉と迷った末のイキのいい魚を捌いている途中だった。


 鼻歌を歌いながら狭い台所で料理をしていた。唯一の楽しみの時間であった。

 そこに突然の眩い光…


 狭い一人暮らしの台所からいきなり青空の元へ。薄暗い部屋から風の涼しい外に放り出されたようで、明るさに慣れるまで少しかかった。

 目が慣れあたりを見回すと、頭までマントを被った男達(?)に囲まれていた。

 足元には魔法陣。光はもう無い。

 周りを囲んでいる男たちは膝をついているものがほとんどだ。中には倒れ込んでいるものもいる。


 その中で1人びっくりと見開いた目で自分を見つめる青年?()()()()()()()()()()()()だろうか?


 ツカツカと青年に近寄るピンク髪の少女。その間約5秒程。


 青年が身構える。


 一あ、やべぇ。あたし包丁持ってるし一


 少女はチラリと手に持つ包丁を魔法陣の真ん中(自分が元立っていた場所)に放り投げるとそのまま青年に近寄ろうとした。


 「せ、聖女様!」


 マントの男達の後ろに控えていた騎士達が少女に声を掛けた。

 少女は無視してそのまま青年に近づき、その上着の首元あたりを掴んで睨んだ。


 「……」


 掴んだ手を振るわせ血を吐くように呟く少女。給料日…待ちに待った給料日…涙目なのは致したあるまい。


 「…ドワーフ…?」


 ピシャーン‼︎


 少女の目がこれでもかと見開かれた!


 「人間よ!」


 一あたしがちょっと人より小さいからって!小さいからって‼︎一


 ギュウギュウ首元を締めるが届いていないので攻撃力は弱いらしく、青年は困ったような顔をしている。

 それがさらに腹立たしさに拍車をかける。


 「あんた、名前は?どこ所属?何歳よ!」

 「あー、美しき聖女殿」


 キッ!と睨んで声の主を探すが見つからない。

 怖い顔でキョロキョロしていると騎士達の列が割れて豪奢なマントを着たスラリとしたイケおじが現れた。これは王様か?とにかく偉い人そうだ。

 

 「あたしのご飯を返して下さい!」


 一ごはん?一


 皆が頭を捻った。


 「美しき聖女殿、呼び出しておいて何だが、良ければ別室にてお話を伺わせてもらえないだろうか?」


 とにかく召喚に成功『聖』なる少『女』なので聖女。魚臭い女の子では無いのである。


 ◆◆◆


 場所を移す前に少女にさりげなく湯浴みを勧めてみたが、素気無く断られた。しかし気を利かせた誰かが女官に着替えを頼んだのだろうか?ピンクの髪をお下げに編んで、お仕着せのドレスに着替えていた。

 

 謁見の間での接見となる予定であったが、食事前に聖女様を召喚してしまったようだったので軽食を揃えた高級官僚が使う食堂での接見となった。


 国王、宰相、召喚の時に中心となっていた第一魔術師団団長と副団長、同じく召喚時にいた魔法騎士団団長と副団長、召喚には参加しなかったが第二、第三魔術師団団長もいる。

 聖女に圧迫感を与えないために、皆の前にもお飾り程度の紅茶と軽食が並べられている。数人の侍女も入れられていて、にこやかな笑顔で聖女のお世話をしている。

 聖女も先ほどとは打って変わり、満面の笑みで焼き菓子を頬張っている。


 聖女はお越しいただいたありがたいお客様なのだ。

 

 …だが、男達はみんな渋い顔をしていた。まさか人間が召喚されるとは思っていなかった。

 なんせ数百年ぶりだ。

 その手の文献に詳しい第二魔術師団団長の手は忙しく色々な書物のページをめくっている。普段なら図書室から出す事の禁止されている書物である。


 本日の予定としては聖〇〇の召喚を行なってから、できるもの(兎、猫、子犬等)であれば王女殿下が抱きかかえ、お披露目、大きい物(牛、馬、羊等)は後日パレードでお披露目するはずであった。

 

 今のところ、少女への聞き取りはなんの問題もなく進んでいた。

 少女の名前はチャチャ。異世界から召喚されたらしい。文化的水準は同程度、魔法が使える世界というのも同じらしい。


 「ありました。約350年ほど前に聖女様を召喚したとの記録がありますね」


 無言でひたすら書物のページをめくっていた第二魔術師団団長が突然口を開いてそう言った。

 チャチャがビクリと肩を震わせた。


 「ああ、申し訳ありません、聖女様」

 「いえ…」


 チャチャは作り笑いの様な笑みで答えた。

 似たような世界とはいえ、突然見知らぬ世界に連れてこられたのだから緊張も心配もあるだろう。ましてや若い娘である。


 「…あの…」

 「何かな?聖女殿」


 国王陛下が優しく返事をするとチャチャは緊張からか少し頬を赤らめて口を開いた。


 「あた、わたしは平民で特に何の特技もありません。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、もともと持っていたのは簡単な癒しの力くらいで…」


 チャチャが一瞬しまったと言う顔した。


 一今回の召喚によるギフト一


 「…聖女様には他にもお話しいただくことがありそうですな」


 国王陛下の横で孫娘を見るような人の良さそうな笑顔でチャチャを見ていた宰相が、人の良さそうな笑顔のままで口を開いた。

誤字脱字報告ありがとうございます。

思っていたより人物が増えていってぷちパニックです(´・ω・`)

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