第七話 街の襲撃
・お読みいただきありがとうございます。
・文章に拙い部分があると思いますが宜しくお願い致します。
「取りあえず、先に部屋取っちゃうから。」
載間さんが部屋の確認をしている間に、私は先陣山君に近付く。先程の載間さんのように、言われると余計意識してしまう。
「せ、先陣山君。」
「どうした?」
何でだろう? 何とも思わない筈なのに、何故か緊張する。これってもしかして……? いやいやいやいやそんな筈はな……
「おい。ボーっとしているが、大丈夫か?」
そんな筈は無くは無いかも……。
「あ……あのね、部屋一人で大丈夫かなぁって思って。」
「平気だ。一人でも、大部屋でもな。」
つまり他に人がいようが何だろうが関係無いって事か。
「先陣山君はどうしたい?」
「俺は一人が良い。その方がお前達にも迷惑がかからないしな。」
「あ、あのね、私、心配なの。」
この先を言うかどうか一瞬迷った。
「何だ?」
「君が、死んじゃうんじゃないかって……。先陣山君を見てると心配になるの。あまりにも表情が動かないし、たまにどこを見てるかも分かんない時があって……このままじゃ、いつか死んじゃうんじゃないかって……。」
想像しただけで恐ろしい。
「俺は……いや、お前は俺を必要としてるのか?」
「そんなの、当然だよ……。誰か近しい人が死んだ時に、『その人の分まで生きる』とか言うけど、私には出来ないよ。だって、その人が本当に望んだ生き方なんて出来ないもん。」
口から出任せ? いや、決してそうとも言えない。
「とにかく、死ねないと言っただろう。言ったからには死なない。」
「良かった……。」
ホッと息を吐くと安心からか自分の表情がほころぶ。
「……明星の名前が『ひかる』では無く『ひかり』と読む理由が分かった気がするな。とにかく、明星が俺の事に関して不安がったり、落ち込んだりしている所を、俺は見たくない。」
先陣山君はただそれだけを言った。
「私の名前はね……」
「悲報……部屋とれなかった……。」
名前の由来を言おうとした時に、載間さんが残念そうに言った。
「先陣山! アンタは椅子で寝る事! 分かった?」
「構わない。正直、載間の方が俺より明星に対して変な気を起こしそうだが……。」
「ハァ!? もういいや。行くよ。」
キレてはいたが、載間さんの声音に若干の焦りが見えた。恐らく全面否定は出来ないのだろう。
階段で三階まで上がり、私達は部屋に通された。ここが、これから暫く寝泊まりする部屋……! 期待に胸が膨らむ。
「まぁとにかく、ベッドに座ってよ。さっきの『大事な話』しないといけないから。」
言われた通りにベッドに座る。
「まずはこれ見て。」
反対側のベッドに座る載間さんはカメラの写真を見せて来た。
「これって……」
写真はかなり残酷なものだった。馬車に襲いかかるオークの首や腕、脚を何者かが切り落としている写真だった。相当素早いのか、写真がブレて顔や服装が良く見えない。
「この写真の人、多分だけど『クラスメイト』だと思う……。さっき私の新聞の売り文句『少年を直撃!』ってあったでしょ?」
「そう言えばそんな事を言っていたな。」
「あの人ね……シャツ来てた。ワイシャツ。それで話聞いたら『俺はこの高原で魔物狩りしてレベルアップしてっから。』だって。他にも『エイルランス高原には危険な原住民がいる。攻撃的なのでオークですら寄らないから、みんなも気を付けんだぞ。』だって。」
「ホントに?!」
耳を疑ってしまった。
「だからこの人探しにエイルランス高原に行きたいんだ。先陣山は王都に行きたそうだから、私の意見言っておこうかなって。」
「俺は高原でも王都でもどちらでも良い。」
「じゃあ、エイルランス高原に行こう!」
次の行き先が決まった所で、今日の残りはどう過ごそう……。載間さんとお出かけ? それとも……。
載間さんが私に耳打ちをする。
「先陣山とデート、してきたら?」
「でも、行き先なんて思い当たらないよ……。」
「デートに行く事は否定しないんだ。」
完全に言葉を失った私を見て、載間さんはいたずらっぽく笑っている。
「もっと素直になりなよ。全然隠せて無いよ。」
圧倒的に劣勢……話題を変えないと……。
「載間さん、お願いがあるんだけど……。」
「何?」
「私と先陣山君のツーショット、撮ってくれないかな? 前にお世話になったシングルマザーとその息子くんに写真送って上げたくて……。この世界には手紙の文化があるっぽいし……。」
顔の前で手を合わせ頼んでみる。
「う、うん。良いよ。私の力でコピーできるし……。」
「先陣山君!」
椅子に座り、弾を詰める彼に声を掛ける。そう言えば、銃に新しい弾を装填する事を『リロード』と言うらしい。向こうも気付いたようでこちらを見る。手招きをすると、すぐにこちらへ来てくれた。
「何だ?」
「写真、一緒に撮ろうよ。ルーシリアさん達に送ろうと思って。」
「写真か……。」
「この世界では鳥とか舟とか馬車使った物流は一応あるみたいだからね。じゃあ撮るよ~。」
載間さんがカメラを構える。レンズに横に並んだ二人が写る。
「もうちょっと寄ってよ。」
載間さんは不満げに、ボールを蹴るサッカー選手が他の選手に手を仰いで立ち位置を指示するような素振りを見せる。少し肩を近付ける。
「ダメダメ。もうちょっと寄って。」
今度はカメラから顔をずらす。仕方なく肩が密着するくらいまで近付く。
「オッケーオッケー。じゃあ、撮るよ。ハイ、チー――」
「ちょっと待ってね。せっかくだから載間さんもどうかな? 仲間に会えたって伝えたいし……。」
珍しくかわい子ぶって言ってみる。
「キューン……! お言葉に甘えさせていただきますっ!」
載間さんは部屋のどこからか三脚を持って来た。カメラを設置し、私の隣にどかりと座った。
「はい、十秒前~。」
少し間が空き、フラッシュと共にパシャリとシャッターを切る音。緊張でポーズも出来なかった。
「いいね! じゃあ、今すぐ『印刷』しちゃうね。でも、良かったの?三人で写真撮ると真ん中の人早死にするって言うけど……。」
「だ、大丈夫だよ。そんなの迷信でしょ……。」
この世界にいると、迷信でもよりリアルに聞こえてしまう。私の不安をかき消すように横から先陣山君が口を挟んだ。
「……明星が死ぬなら俺が盾になる。」
載間さんはなぜか浮足立っている。
「はい。出来たよ。」
「はやっ!」
本当に一瞬だった。取りあえず受け取る。裏面に字を書いて手紙にしようと思っている。
「先陣山君。この裏に手紙書こうよ。」
「明星。お前字書けるのか?」
彼は呆れた様子で言った。字より大事なのは心がこもってるかどうか……だと思う。
「ハァ……俺が代わりに書けば良いんだろ。」
依然、呆れた様子だ。
「分かったならよろしい。」
謎に開き直って見栄を張ってしまう。強引に椅子に座らせ、載間さんからペンを借りる。
「じゃあ、文面は私が考えるね。『拝啓 ルーシリアさん アラン君……』」
先陣山君が筆を滑らせる。見た事も無い文字をすらすらと書きつけていく。自分が書いている訳では無いのに、何故かその気になってしまう。
「『この度は――』」
言いかけた時に外から大きな物音がした。いや、物音と言うより地割れ? 地震? とにかく、窓から外を見てみる。
「何あれ……?」
建物から砂煙が舞い、シルエットが浮かぶ。やがて煙も収まり、シルエットが鮮明な像になっていく。……暑い。
砂煙の中から現れたのは首が二つあるライオンのようなモンスターだった。しかし、たてがみは青く、大きさも大きい。しかも口から火を吹いている。
「怖い……。」
載間さんは子羊のように震えている。無理も無い。戦闘能力を与えられていなかったのだからモンスターを前にしても戦う事が叶わない。
「明星。行けるか?」
隣から先陣山君の声。私も怖いけど……ここは覚悟を決めて戦うしかない。
「載間さん! 載間さんの『アナライズ』、宜しくね!」
「ちょっと待った! 属性の話を軽くしとくね。属性は全部で10個! 火炎、氷、雷電、疾風、大地、念力、光、闇、毒、物理だよ! 相応の技を使わないと倒せないから、よく支持を聞いてね!」
載間さんは早口で言って私達の背中を押した。
「行くぞ、明星!」
先陣山君と共に外へ飛び出す。モンスターを倒せばヒーロー。無理なら死。戦う前から首筋を冷や汗が伝う。
『もしもーし? 聞こえる?』
載間さんの声? どこから指示出してるの?
「うん。聞こえるよ。」
『良かった。戦闘時に私が言う事は皆の頭に聞こえるようになるみたいだから宜しくね。さっきも見たと思うけど、裏にいるモンスターは口から火を吹くみたい。光ちゃん若干不利かも。先陣山の銃は物理に入るからどんな敵にも安定したダメージが入るって。』
「了解した。」
『場所は今いるとこ左に曲がってすぐ!』
場所まで把握できるのか。感心しつつも指示通り左に曲がる。
いた。近くで見るとさらにでかい。
「怖気づくな。やる事は同じだ。」
先陣山君が銃を構える。撃って挑発するようだ。彼の瞼がピクリと動いたや否や銃声が響いた。
「ゴォウ!」
怒ってる怒ってる! モンスターはたちまちこちらに走って向かってくる。
『アイツ、心臓と脳みそが二つずつあるよ!飛行機のエンジンみたいに片方が無くても動けるみたい! でも全部攻撃しちゃった方がいいかも! 弱点は氷属性だよ。』
私は剣を構えた。この剣は持ち手を九十度曲げる事によって銃と使い分ける事が出来る。
突然、顔の前に手のひらが映る。
「下がっていろ。明星。ここはひとつ、俺一人で行かせてくれ。」
「あ……ちょっと!」
先陣山君は一人でモンスターの元に駆け出して行ってしまった。止める間もない。
「最後に向かって右側の首を落としてくれ。」
彼の背中からそう聞こえた。咆哮を上げたモンスターが突進してくると同時に銃声。二、三歩進んだだけで勢いが衰えた。よく見ると向かって左側の首ががっくりしている。先陣山君の両手から煙が上がっている。
「『三弾殺陣』だ。一度の発砲が三回になる代わりに正確さがアップする。」
しめたと見て、私も突撃する。演じた役は『万能属性型主人公』なので炎系じゃない技もたくさん揃えている。一気に詰め寄りジャンプをする。モンスターと目が合う。
「『氷徹冷』!」
身体を横に捻りバツを描くように斬る。氷の結晶の白いエフェクトとは対照的に赤い血が飛び散る。……そっか。スライムじゃ無いから出血は当然か……。痛いよね……ごめんね……。
『光ちゃん! 死角から爪!』
「え?」
首を横に向けると、モンスターの左前足が目前まで迫っていた。私も引き裂かれて死ぬ?
「明星っ!」
いや……先陣山君には頼れない。剣の持ち手を曲げる。
「『霰台風』!」
足が凍るがまだ動いてはいる。
『強化・先陣山の銃弾! そのまま撃ってみて! その銃、|意識次第で軌道がずれる《・・・・・・・・・・・》から』
「了解だ。」
先陣山君が立っている位置から見て、丁度私と足は一直線だ。
「明星を、避けろ。(凄い……狙ってはいけない明星の体を丸ごと透かして狙うべき足が見える……。)」
銃声が響く。弾は一直線にしか動かない筈なのに、まるで弾が意志を持っているかのように私を避けて足にヒットした。
間もなく、私は着地をした。一瞬の出来事なのに長く感じた。
「よっと……。」
先陣山君が小走りで近付いて来る。なぜかは分からないが笑みがこぼれる。でも、今なら握手が出来るような気がした。手を差し出す。
「君がどんなに自分を汚いと思ってても、私は君を信頼してるよ。君が私を信頼とか信用してなくても、私は君を信頼してるよ。」
「なっ……。」
珍しく動揺を見せていた先陣山君だったが、遂に私の手を握ってくれた。
「えへへ。」
「ここにいたのね! 撮るよ! 明日の一面!」
載間さんがカメラを持って走って来た。横には食堂のおばちゃんもいる。
「じゃあ撮るよ。ハイ――」
「しかし珍しいわねぇ。モンスターが街を襲うなんて……前例が無いわ……。小っちゃい頃に言われたのは最後に襲われたのは一万年前だって……。」
この言葉に私達は凍り付く。載間さんもシャッターボタンを押す手を止め、おばちゃんを見つめる。私はおばちゃんに向き合った。
「その話、もっと詳しくしていただけませんか?」
・お読みいただきありがとうございました。
・誤字等ございましたらご報告お願い致します。
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