第6話 真実を求める者
・他の話を読んで下さった方、今回も宜しくお願い致します。
・初めましての方、文章に拙い部分があると思いますが宜しくお願い致します。
・前書き、後書きの文章がいつも微妙に違う気がします。
起きた時間の太陽の傾きを見る限りその時は午前五時半。そこから体感三時間。小腹が空いて来た時間に遺跡のような場所に辿り着いた。ストーンヘンジのような建造物が沢山あり、岩の柱には象形文字のようなものが刻まれている。まぁ、これが象形文字じゃないにしても私は読めないけど……。
「うわぁ……凄いね……!」
「ああ。調べ甲斐がありそうだ。」
ストーンヘンジで囲まれた中心には地面より一段高い、円形の石の台座があった。そのまた中心には何かを引き抜いた跡のようなものがある。
「これってさ……。」
「この歴史書に書かれた内容を見る限り『少年は迷いの森の奥地にある勇者の剣を引き抜く為に森に入った。そもそも無事に剣の在処まで辿り着ける保証はない。辿り着いたとしても、剣に認められ剣を引き抜く事が出来る者はこの宇宙が始まり、終わるまでに一人いるかいないかの確率である。』とあるな。伝承の内容が正しければこれは少年が剣を引き抜いた跡と言う事になる。時間と共に遺跡そのものが廃れている気がするが……。」
「その『勇者の剣』伝説って確か百世紀前だよね? で『魔王』が眠りに着いたのが一万年前……。百世紀イコール一万年だから……。」
「それは俺も頭の中にあった。魔王が復活するなら今年。この遺跡を訪れて伝承の信憑性もあがった。」
「分からないけど……神様の本当の目的って、私達に復活した魔王を倒させる事かな?」
「少人数だと死ぬ……だから全員で立ち向かえと言う訳か。もしそうなら……今の国王は勇者の末裔……やはり目指すは王都だ。」
出発の前にもう少し遺跡を調査してみた。元々剣が刺さっていたであろう台座からストーンヘンジを眺めてみる。数は合計十個。それぞれ間隔が異なるが、時計回りに見るにつれて間隔が広くなっている。台座には剣があった場所を中心にぐるりと数字が刻まれた石板が敷かれていた。これは動かせそうだ。
「やっぱり、算用数字ってどんな世界でも共通なんだ……。一、五、二十一、一、二三三、十三、八十九、十三、五十五、三、三七七……。」
変な部分に感心しながら石板を外してみる。
「これ……どうすればいいの?」
「良く見せてみろ。」
「わっ!」
突然横から先陣山君が覗き込んできた。気配が無い……。
「数列……一が二つあると言う事はフィボナッチ数列をバラバラにした数列か……? いや、それなら二が抜けている説明が付かない……。」
「フィボ……?」
何語?
「習っていないのか? 隣り合う二つの数の和が次の数になる数列だ。」
「う、うん。中学も推薦で入ったから受験勉強してなくて……。先陣山君は附属校だから色々知ってるっぽいけど……。」
「二、八、三十四、一四四……偶数か。偶数が抜けているのか! この石板を最初の一に合わせて数が小さい順に、時計回りにはめてみろ。抜けている偶数は空けるんだ。」
言われた通りに石板を並べ替える。すると突然地響きが起こった。
「怖いっ!」
思わず先陣山君の腕に抱き付いてしまう。間もなく地響きが収まったが、気恥ずかしさからかえって先陣山君から離れる事が出来なかった。
「……なぁ。そろそろ離れてくれないか?」
相変わらず表情筋が仕事をしていない。
「…………じ、事故だけど、ちょ、ちょっと位顔赤くしてくんないと……面目が立たないんだけど……。」
「割とドキドキしている。女の子にここまで密着された事が無いからな。」
……きっと、この人を堕とせる女の子はこの世に居ないと思う。
「それより、台座が割れて何かが露出しているぞ。」
そこでようやく、自然な流れで離れる事が出来た。
「何だろう……これ?」
「物凄く古い本……のように見える。」
表紙には星が円の中に入っている図……魔法陣? としたらこれは魔導書……。持ち上げてもあまり重くない……。
「これ、持ってて損は無いかも。持って行こう……。」
私はカバンに魔導書のような本を詰め入れた。そのまま背負って立ち上がる。
「じゃあ、出発しよっ!」
私達は遺跡を後にした。道中に襲い掛かるスライムも、もう敵ではない。次に目指すは商業都市、『エイルランス』。誰かクラスメイトが居るかも知れないと期待を胸に歩みを進めた。
――商業都市『エイルランス』
「やっっっと着いた~! 『エイルランス』~!」
大きく伸びをする私。遺跡を後にして六時間。私達はようやく目的のエイルランスに到着した。
建物の造りはレンガに変わり、いくつかの建物の煙突からは黒煙が出ている。街には活気が溢れ、行き交う人々も忙しそうだ。太陽が南の方向にあり、元の世界では丁度お昼休みの時間なので人が多い時間帯なのかも知れない。
「まずはどうする? 腹ごしらえをしてこの街でクラスメイトを探すか?」
「うん。お店とか字が分かんないから教えてね。」
この街は道も丸石で舗装されている。基本的にこのような世界観の場合、道には馬車や人力車のような乗り物しか通らないので車道、歩道の概念が無い。
道を歩いていると広場のような場所の噴水の前に人だかりが出来ていた。そこの中心からは私と歳が近そうな女の子の声が聞こえた。
「号外、号外! 『勇者の剣伝説』から一万年後に当たるのは今年! エイルランス高原のオークが王妃の馬車を襲撃! 助けた少年を直撃!」
新聞を販売しているようだ。異世界に新聞の概念があるのか分からない。でも、無いよね? だったら今新聞販売してる女の子はもしかして……。期待がどんどん膨らみ、気付けば人混みの方に駆け出していた。
「明星! 待て!」
後から先陣山君も追って来る。
「ハァ……ハァ……。」
誰でもいい。一人でも仲間を増やしたい。その一心で人混みを掻き分ける。
「すみません……通してくだい!」
人混みの中心にはポニーテールでセーラー服姿の少女。頭にのったベレー帽が可愛らしい。首からはカメラをさげている。驚いた様子でこちらを見つめている。
「……もしかして、あなた……遅刻して来た……。」
彼女の表情が微かに明るくなる。私は相手が同じ転移させられた人と分かり、彼女の手を握ってしまった。
「そうだよっ! 私があの時に遅刻して来た人だよっ!」
「ホントに?! じゃあ、ちょっと待っててね。先にこの新聞全部売るから。」
暫く噴水の縁に座って待っていたが、新聞は五分もせずに完売してしまった。
「ふぅ……売れた売れた。待たせちゃってごめんね。」
「ううん。逆に凄いよ。あの短い時間で新聞全部売っちゃうなんて。」
「フフ。ありがとう。」
「私達『迷いの森』を抜けて来たんだ。」
「ホントに?! 凄いね。私戦闘力無いからさ……。」
戦闘力については後で聞く事にした。まずは名前! 自己紹介大事!
「ところで……あなたの名前は?」
「私?」
そう言うと彼女は咳払いをして姿勢を正した。
「私、載間真。十字記念中学校出身で、推薦理由は新聞部での成績。」
「私、明星光。宜しくね!」
「あの、『明星光』ちゃん? ヤバ……ホンモノ超カワイイ……。」
もしかしなくても、見惚れてる……?
「……カワイイ!」
直後、載間さんはギュッと抱き着いて来た。
「わっ……!」
「う~このやろう、ほっぺぷにぷにじゃないか~!」
今度は軽く頬を引っ張られる。
「おひまひゃん、ひゃめへ……。」
「この小動物感、堪んないっ! ねぇ! 横の君! さりげなくずっと横に居るけど誰?」
先陣山君に対しては手厳しい。
「俺は先陣山貫行だ。明星とは道中で出会ったんだ。」
「へぇ~……先陣山……。アンタ、光ちゃんに変な事してないでしょうね?」
「何を言うか。俺は布団を使わず椅子で寝ている。」
それで疑いが晴れるの?
「せ、先陣山君は良い人だよ……強いし……。そ、それより、戦闘力が無いってどういう意味?」
ふぅ~んと腑に落ちない様子の顔をしながらも話題を変えた事に乗ってくれた。
「無いって言うか……正確には『仲間がいないと戦えない』って感じだけどね。私が『神様』に貰った能力は、『アナライズ』だよ。敵の弱点分析とか、その他もろもろの補助とかね。感覚としては『真実を記事にする』って事みたいだけど。あとは印刷能力。新聞はこの力使ってコピーしてる。『印刷機が無いから』とかあの神様言ってたなぁ。」
真実を記事に……。カッコいいな、新聞記者さん。
「それと……私は字が読み書き出来るから新聞書いてお金稼げるからね~。」
載間さんのオッケーサインを逆にした手の動きがやらしい。
「それで……載間さんは私のファンなの?」
「私はアニメあんまり見ないけど、新聞のインタビュー記事見てカワイイ娘だなって。学校でも男子は彼女にしたい、とか、女子は真似したい、とか言ってるよ。」
あの一回のインタビューで知らぬ間にそんな人気が……。
「ねぇねぇ、私ってカワイイと思う?」
グイグイ来るなぁ……この子は。
「か、カワイイと思うよ……。」
大体「う~ん、どうかなぁ~」なんて言える訳ないじゃん
横から突然、お腹が鳴る音がした。
「……腹が減った。飯が食いたい。ついでに宿も見つけたい。」
先陣山君がお腹をさする。
「ああ、お構いなく。俺は飢えるまで待てる。」
先程の発言は独り言だったようで、唖然として見つめる私達に気付いた様子で言った。今更だけど、どうしてだろう? 親族以外の同級生以上の男の人は例の件があってから苦手な筈だけど……先陣山君はどちらかと言えば…………好きなくらい。
「私もお腹空いてきちゃったかも。朝五時半位から歩きっぱなしだからさ……。」
「分かりました。私が下宿してる宿の食堂、連れてってあげる。ついでにもう一部屋取ってもらおうかな。」
載間さんは腰を上げた。
「ついておいで。」
連れていかれた食堂は一言で言うなら、ちょっとお洒落な大衆食堂って感じだった。カウンター席とテーブル席があり、天井からはろうそくを箱に入れたシャンデリアがぶら下がっている。
「あら、真ちゃん。お帰りなさい。後ろの方はお友達?」
「ただいま! おばちゃん。そうだよ。そこで会ったんだ。」
載間さんと食堂のおばちゃんは仲が良いようだ。ただいまって言って歓迎してくれるのって、あったかくていいなぁ……。おばちゃんの見た目は、目こそ黄色いが他は関西にいそうな普通のおばちゃん……。因みに髪は黒く、ヒョウ柄の服も着ていない。
「今日は『シンブン』? 売れたの?」
「即完売。びっくりしちゃったよ。お昼、いつものちょうだい。三人分!」
「はいよ。カウンターで待ってな。」
椅子に座るよう促され、三人で並んで座った。
「さてと。ねぇ光ちゃん。この後はどうするつもりなの?」
「う~んとね……王都に行こうと思うんだけど……今先陣山君が地図見ててくれてる。」
雑なバトンタッチをしてしまった。
「この街の東に向かえば王都『タロットリア』、『タロットリア運河』『タロットリア海』。北へ向かえば『ロックガン洞窟』、『ゼロックス鉱山』、鉱山と逆方向に『ラセロガ』と暗い地域が続くな。西は『エイルランス高原』、抜けた先に『スポットマン』か。」
「カジノ・酒場街『ラセロガ』、勇者伝説の記念像が置いてある『スポットマン』、どっちも夢があっていいなぁ。」
「勇者の剣伝説と言えば迷いの森で遺跡に入った時に見つけたんだけど……。」
私はカバンから魔導書のようなものを取り出した。
「これって……もしかして所在地不明の……魔導書……。勇者の仲間が使っていたけど、危険すぎるから魔王封印後に封印された……。王都の石像には『星と円が重なる書、はじまりの地の奥にあり。』って書かれてて、はじまりの地と思われる迷いの森には誰も入れないから見つからず仕舞いだった……。」
載間さんは目を丸くしている。
「光ちゃん。私はきっと光ちゃんに使ってもらう為に見つかったのかも知れないよ。」
「この世界で私達がすべきこと……魔王の復活は本当なら今年だよね?」
「うん。私も新聞記事にした。本当なら早く帰らないと……。」
「載間さん……あくまでも予想なんだけどね、私達の本当の目的は復活した魔王を討伐する事……なんじゃないかな?」
載間さんに納得してもらえるように説明した。
「そう言われればそうかもね。少人数じゃ倒せないから全員で……。」
おばちゃんがカウンター越しに食べ物を置いた。色は黄色い……。
「これは……?」
「高原に棲んでるモンスターの肉を使ったカレーだって。美味しいよ。脂っこく無くて。」
スプーンを使い、恐る恐る口にカレーを運ぶ。
「……美味しい! 濃いけど、しつこくない……。」
「そう言う肉を使ってるのさ。」
おばちゃんが得意げな様子で鼻を鳴らした。
取りあえず食事を済ませた。やっぱり、先陣山君はマスクを外さずに食事をしていたようだ。
「こう並ぶとべっぴんさんとイケメンだらけねぇ。特に真ん中のあなた。カワイイわねぇ。娘にしたいわ。」
「と、とんでもないですっ!」
私は顔が赤くなっていたのだろう。載間さんがにやにやしながら私の頬を人差し指でつついた。
「ご馳走様でした。」
先陣山君は気にせずお礼を言う。
「はい。お粗末様。」
「じゃあね、おばちゃん。また夜ご飯の時来るね。……じゃあ二人とも、部屋、案内してあげる。」
そのまま同じ建物内のフロント部分に案内された。
「ここってビジネスホテルみたいな場所なの?」
「そだよ。一部屋ベッド二つだからさ。三人だともう一部屋必要だよね。大体男子と同部屋とかムリ! 絶対!」
私は少し離れて座っている先陣山君を見る。俯き、ポケットに手を入れている。彼を見ていると不安になる。不安と言うか、放っておけなくなる。不謹慎だけど、このまま一人にしていたら、彼は一人でいなくなってしまいそうだ。実弾を持っていないのも、もしかしたら自殺の防止の為……?
「おーい、光ちゃん?」
載間さんの声で我に返る。
「ご、ごめん……ちょっと考え事。」
「ハァ……いつから好きなの?」
「えっ?! 勝手に恋バナが進んでる?!」
「何? 違うの?」
「ちちち、違う違う!」
両手と首を左右に小さく振る。
「本当は?」
載間さんの表情が段々とにやける。
「ちがーう!」
まぁ、彼に出会ってから何度かはドキドキさせられたけど……。もう何が本音か分からない。
「まぁいいや。私、空き部屋の確認してみるね。それと……もう一部屋とれたとしても取りあえず私の部屋に着て。大事な話があるから。」
急に真剣な表情になる載間さんに釣られ、こちらの表情も硬くなる。大事な話って何だろう?
・お読みいただきありがとうございました。お楽しみいただけたでしょうか?
・誤字等ございましたらご報告お願い致します。
・今後の参考にしたいので評価や感想を頂けると幸いです。




