第3話 はじめての戦闘・宿探し
・前の話を読んで下さった方、ありがとうございます。
・初めましての方、文章に拙い部分があると思いますが宜しくお願い致します。
・作者は趣味程度に小説を書いています。
・今回は作者の人生初の戦闘描写があります。
私達は『不気味な雰囲気がする方と逆方向に歩けば平地に出る』と言う考えのもと歩き続けていた。少し休もうと思い、開けている場所に腰を下ろした時だった。これから進もうと思っている方向から地響きがしてきた。
「な、何?」
「何かが……来るぞ。」
先陣山君が拳銃を構えた。私も臨戦態勢に入る。
「ぐじゅワァァァァァ!」
聞き覚えのある鳴き声と共に姿を現したのはここに来て最初に出会ったスライムの巨大版だった。約二メートルはあろうそのモンスターを見上げて、思わず目を丸くする。
「でかっ!」
スライムはお怒りの様子だ。まさか最初に私が襲われたスライムの復讐に来たのだろうか。
「おい、後ろにも小さいのが複数いるぞ。完全に退路を断たれた。俺が小さいのを相手する。こいつらは身体の中心に核がある。そいつを破壊しなければ永遠に再生を繰り返す。」
確かに後ろからぴちゃぴちゃとスライムが跳ねる音がしている。後ろのモンスターは先陣山君に任せて、私はこの大きいスライムを相手しよう。
銃口を向ける。弱点属性はあるのだろうか。
「えいっ!」
引き金を引くと、炎の渦が光線状に発射された。直ぐに敵に当たる。
「ぐしゅうぅぅゥゥゥ」
唸り声をあげている。よく見ると身体の中心に穴が空いている。しかし、相手も一筋縄では死なない。身体をくねらせ、緑色の粘液を吐き出して来た。
「なにこれっ!」
素早く身を引く。粘液弾が地面に着弾する。目を戻すと、先程スライムに空けた穴が再生していた。
「ぐっじゅっ!」
再び粘液を吐き出す。私はまた避ける。
「ふんっ……(何か隙がある筈……)」
「よっと……(攻撃の前に必ず身体をくねらせてる……)」
「うわぁ!」
少し気を抜くと粘液弾に当たってしまいそうだ。
何度か避けている内に攻撃頻度や後隙が見えて来た。その間を上手く縫い、再び攻撃を仕掛けた。
「『渦巻紅炎』!」
あの時演じたキャラクターの声で技名を言う。
「ぐしゅうぅぅゥゥゥ」
核が見えた。青い球体だ。出来るかどうか分からないが、『破壊』なら物理技の方が良い。
「『炎炎昇華』!」
これは『渦巻紅炎』を使うキャラクターと同じキャラクターが大剣を用いて使っていた技だ。
引き金を引くと炎に包まれた太刀が現れ、そのまま縦方向に鋭く振り下ろされた。
「ぐうぉぉぉぉぉォォォ!」
スライムの断末魔が響き渡る。炎が消えて視界が開けると目の前の核は真っ二つに割れていた。
「ハァ……ハァ……」
この時やっと異世界に来たと実感した。
先陣山君は弾を装填して銃を構えた。銃口を向けられた四体のスライムは興奮して彼に飛び掛かった。
「散れ。」
低い声と共に銃声が響く。この時は気付かなかったが瞬きする間に四発発砲したようだ。スライムの核を一撃で破壊してしまったようだ。
「百発百中、狙った的は外さない……。」
「先陣山君、勝ったよ!」
「ああ。快勝だな。」
「うん。先を急ごう。」
私達は森の外を目指して再び歩き始めた。――少しレベルアップした気がする。
森を歩いていると、この世界にも昼夜がある事が分かって来た。そう、段々と暗くなってきたのだ。
「うぅ……暗くなって来たね……。」
「そうだな……。」
流石の先陣山君にも焦りの表情が垣間見える。
「だが……この道はどう考えても獣道では無い。必ず外に繋がっている筈だ。」
「だといいけど……あっ!」
私が指を差した先は身体の小さな男の子がいた。紛れもなく知的生命体だ。その子はこちらに気付くと驚いて逃げてしまった。髪は金で目は青かった。
「あの子について行くぞ!」
「うん!」
「ねぇ、君、待って!」
運動は苦手だが、なぜか今は身体が思う以上に動いた。やはりスライムとの戦闘で鍛えられたのだろうか。男の子は私達が歩いてきた道と同じ道を暫く道を走るとようやく森を出た。
「ハァ……ハァ……ここ……村?」
森を抜けると明かりの点いた建物が数十軒並んでいる集落のような場所に出た。
「村と言うより集落のように見えるな。明かりが消えている建物は店の類か……。」
周りを見渡すと先程の男の子が家に入って行くのが見えた。その子が入って行った家に泊めてもらえないだろうか。
「ねぇ、あそこに入れてもらおうよ。」
「これ以上暗くなると命の保証が無いからな。やや強引でも泊めてもらわねば……。」
私は意を決して木のドアをノックした。
「ごめんください。」
「どちら様ですか? こんな夕暮れ時に……。」
中から落ち着いた様子の女性の声が聞こえて来た。こちらの言葉は通じているようだ。
「私達、旅人です。宿を探していまして……。よろしければ泊めてもらえませんか?」
「ですが急に押しかけられましても……。」
「俺達は森の方から来ました。人を探して旅をしてます。今までも様々な方に泊めてもらいました。飯等、御迷惑をお掛けしてしまう事は重々承知しております。」
先陣山君が旅人の設定に合わせて助け船を出してくれた。
「も、森から?! 良くご無事で……。」
「もうへとへとなんです……。」
「……分かりました。何日ほどこちらに?」
「二、三日で出て行きます。」
すると、ドアが開かれ、中から金髪青眼の佳人が顔を覗かせた。
「目……青い……。」
「髪が……金色だ……。耳も尖っているな……。」
こちらがその見た目に驚き、言葉を失っているのと同様に、相手も宝石のように輝いている青い目を丸くしていた。服はやや古い型のものを着用している。
「そっちの君……髪が黒いわ……」
特に、糸に墨汁を塗りたぐったような髪色の先陣山君の見た目には驚かされたようだ。
「取りあえず家に入ってください。」
「ありがとうございます。」
恭しくお辞儀をして家に入った。
家の中は木造りで暖炉に薪がくべてあり温かい雰囲気を醸している。照明は暖炉の火とろうそくで補っているようだ。部屋の中心にはテーブルと椅子が置いてあった。壁沿いに台所も設置してある。
「取りあえず、テーブルに座ってください。もう少しあなた方のお話を伺いたいです。」
言われるがままテーブルに案内される。佳人は台所から木で出来たコップに水を入れて持ってきてくれた。
「……あなた方、森から来たと仰っておりましたが……。」
「はい。」
「ここは田舎町なんです。わざわざあの森を抜けてまでここに来るとは思えないのです。」
「私達は旅人なので……。」
「どちらからいらしたのですか?」
「え……。」
答えに詰まってしまった。
「俺達は『日本』と呼ばれる国から来ました。小さな国故、存在が薄いかも知れませんが俺達にとっては立派な祖国です。」
先陣山君は私が詰まるとすぐに助け船を出してくれる。
「『ニホン』……確かに初耳です。旅の目的は何ですか?」
「人探しです。でも……どこにいるのか分からなくて……。」
「この広大な世界をですか……。地図はお持ちでしょうか?」
「それが……森でなくしてしまって……。」
咄嗟に出た嘘がこれだった。
「ならば明日、製図家のオーギーさんの所にご案内しましょう。……あ、申し遅れましたが私、ルーシリアと言います。ドアから覗いているのは息子のアランです。あなた方は……。」
ルーシリアさんは胸に手を当てて自己紹介をした。どう名乗ろうか……。
「私達は……姓・名に名前が分かれていて、私の場合は姓が明星、名が光です。どちらで呼んでくれても構いませんが、名前で呼んでくれた方が嬉しいです。」
「そちらの君は……」
「俺は姓が先陣山、名が貫之です。短い間ですが世話になります。」
「あら、二人とも礼儀正しいですね。今からお食事の用意を致しますが宜しければ息子と遊んであげてください。人見知りですが、積極的に話し掛けてあげれば自然と打ち解ける筈なので。」
ニコリとして彼女は席を立った。
私が男の子の方に目をやると、ドアの影に隠れてしまった。私は会話を試み、近付いてみた。彼の前にしゃがみ、優しく話し掛ける。私からすれば、ファンの子に話し掛けるのと何ら変わらない。
「こんにちは!」
「こ、こんちは……。」
「アラン君だっけ?」
「は、はい……。お、お姉さん、綺麗ですね。お兄さんも……カッコいい……。」
アラン君の顔が赤くなるのが分かった。
「えへへ、ありがとう。もう少し君の事教えて欲しいな。どんな事が好きなの?」
「ぼ、ぼく……森で遊ぶのが好きなんだけど……ママが危ないからダメだって言うんだ。」
「私達もあの森から来たんだ。」
「そうなの?! モンスターに襲われなかったの?」
「スライムとかと戦ったよ。」
「お姉さん達ってもしかして魔法が使えるの?」
「う~ん……どうかな~。私は使えるけど、あっちのお兄さんは不思議な武器を使うんだよ。」
私は先陣山君の方を見た。彼はケースに弾を詰めているようだ。
「へぇ! 凄いね!」
少しは心を開いてくれたようで、アラン君は目を輝かせた。
「どんな武器なの?」
「う~んとねぇ……鉛? の弾を飛ばすんだって。」
「音がでかいのが欠点だがな。」
先陣山君にその声が届いていたようで口を挟んだ。
「僕にも使えるかな?」
実態を知らないとはいえ、恐ろしい事を言う子だな……。先陣山君はケースをしまい、立ち上がってこちらに近付いて来た。アラン君の前にしゃがむとこう言った。
「この武器を使えるのはライセンス保持者だけだ。」
「じゃあお兄さんは凄い人なんだね! 『勇者の剣』みたいだね! ぼくもお兄さんみたいに世界中を旅してみたいなぁ。」
「俺なんかに憧れるんじゃないぞ。明星は尊敬できるがな。勇者、か……」
先陣山君は何かを考え込んで席に戻った。……私の事尊敬してくれてるんだ。
「お姉さん達は勇者なの?」
「ううん。違うよ。私達はただの旅人だよ。」
私がアラン君の頭を撫でると、彼の顔は今までに見た事のない位赤くなった。
「息子と遊んでくれてありがとうございます。ご飯出来たので食べましょう。」
「すみませんルーシリアさん。」
「こちらこそありがとうございます。」
出て来た食事は至って普通のキノコシチューだった。窓の外は既に真っ暗だ。
「あのね、このお姉さん達凄いんだよ。」
「そうなのねぇ」
「いえいえ、滅相もございませんよ。」
「光さん、お口に合いますか?」
「はい、とっても美味しいですよ。」
そう言えば、マスクをしている先陣山君の顔を見るのは初めてだ。横に顔を向けてみると、彼はマスクをつまんで顔が見えないように食事をしていた。
「顔を見られたく無いんだ。」
見ているのがバレたようで先陣山君が声を響かせた。
食卓を囲む人数が増えてはしゃいでいたアラン君は食事が終わると奥の部屋へ行ってしまった。
私達はもう暫く居間で休む事にした。ルーシリアさんは食器を洗っている手伝いを申し出たところ旅人に労働させるわけにはいかないと断られた。
横には先陣山君が座っている。お互いに予想できない事態に陥ったせいで娯楽の道具を持っていなかった。スマホや音楽プレーヤーは充電式と言う名の欠点がある。彼の事を知る為にも色々質問をしてみよう。
「ねぇ、先陣山君は好きな食べ物って何?」
「好きな食べ物は歌舞伎揚げだ。」
「あ、美味しいよね。私は甘いものが好きだけど……。信玄餅とか。」
「渋いな……。」
「先陣山君も負けて無いと思うよ。」
「……否めないな。」
「プッ……フフフ……」
思わず吹き出してしまった。声は出さないが、先陣山君も楽しそうだ。
「特技ってある?」
「そうだな……輪ゴム鉄砲作りが得意だな……。」
「流石……」
この男……特技まで鉄砲か。
「ガトリング、スナイパー、リボルバー……実在する型なら何でも作れる。」
「スナイパーなんてどう作るの?」
「とにかく飛距離が伸びるように作る。それに加えてレンズが必要になる。」
「へぇ~。」
話が盛り上がってきたところでルーシリアさんが飲み物を持ってきてくれた。
「ありがとうございます。」
「お二人はどのようなご関係なのですか?」
「私達は……旅の途中で出会いました。目的と出身地が同じだったのでそのまま共に旅をしています。」
「そうなんですね。お二人は戦えると息子が楽しそうに話していましたが……。」
「はい。」
「実はあなた達が訪れていた森には巨大なモンスターがいると言われていまして……。入った者が帰らなくなるので『迷いの森』と言われています。森を抜けると都市がありますが、森からそこに向かおうとした者は誰一人として帰って来た事がありません。私の夫もそのうちの一人です。」
「え……」
衝撃的な話の内容に私達は言葉を失った。
・お読みいただきありがとうございます。お楽しみいただけたしょうか?
・誤字等ございました報告お願い致します。
・今後とも宜しくお願い致します。




