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第2話 四丁ガンマン

・第1話を読んで続きが気になった方、ありがとうございます。

・初めましての方、文章に拙い部分があると思いますが宜しくお願い致します。

・作者は趣味程度に小説っぽいものを書いています。

・誤字等ございましたら報告お願い致します。

先陣山貫行(せんじんやまつらゆき)だ。丸仲(まるなか)大附属中学に通っている。射撃部では無いが……射撃が得意だ。特別に国から合法での拳銃の所持が認められている。と、言っても実銃は持っていないがな。今あるのは防犯用の麻酔銃、閃光弾、それと脅し用のゴム弾が四丁と空砲だ。心配するな、命を奪える代物は持っていない。」

拳銃を所持しているなど恐ろしい話だが、入学予定の学校は厳選された生徒しか通学してこないので驚くような話では無い。彼がカーディガンを脱ぐと、彼は自らのカバンから三丁の銃を取り出し、白いベルトに下げた。

「先陣山君、宜しくね。」

「こちらこそ宜しく頼む。」

私は彼に向かって右手を差し出した。差し出された右手を彼は握らなかった。

「握手、してくれないの?」

「悪い……俺の手は不潔だからな。」

「……分かった。」

私はその理由を聞かない事にした。いつかまた話せる時に話そうと心に決めた。

「その銃は……見た事の無い形だ……。」

私の持っている銃を興味深く見つめる先陣山君。

「私も使い方よく分かんなくて……。」

私はこの武器の説明をした。銃のスペシャリストの先陣山君が見れば何か分かるかも知れない。

「形を見る限り……ただのメガホンだが……そうなると弾を装填する穴があるのは不自然だ。」

そのまま暫く私の武器を見つめていた先陣山君は閃いたかのように言った。

「カバンの中は他に物が入っているか?」

「え?今度の収録の台本と音楽プレーヤーと……演技確認用のボイスレコーダーが入ってるよ。」

「そうか……恐らくだが……」

言いかけた時に再び草むらが音を立てた。恐らく先程のスライムの仲間が中々帰って来ない彼(彼女?)の心配をしてやって来たのだろうか。

「クソッ……話は後だ。取りあえずこの森抜けるぞ。」

「抜けるって言っても……。」

「行くぞ。荷物持て。」

強引に手を引かれて私達は走り出した。


 走っていると雨が降り出して来た。丁度小さな洞穴があったのでそこで雨宿りする事になった。

「回復魔法使える人とかいないかな……。」

洞穴の入り口から外を眺めながら呟いた。

「何だって?」

先陣山君はこの手の世界観の作品を手に取った事無いのだろうか。

「ううん。何でもないの。」

「そうか。」

そう言って彼は再びピストルを磨き始めた。四丁の拳銃を腰から下げて走る姿は正直に言ってカッコよかった。

「そう言えば、先陣山君はどんな武器が支給されたの?」

「俺はあの神から武器を貰う事を拒んだ。俺が愛用しているのはマシンピストルを改造したものだが……あの輩は『そんなものよりももっと高性能な銃を用意してあげよう』と……頭に来たわけでは無いが性能より思い入れの方が大事だからな。あの翁には銃弾の無限供給と戦闘時のみゴム弾が実弾化するよう頼んだ。他にも翁に頼んだ事はあるがな。」

彼は簡単に愛銃『マシンピストル』について話してくれた。連射性能に優れていて小型で扱いやすいそうだ。

「それでだ。明星の持っているメガホン型小銃。そこにはボイスレコーダーを装填するのだろう。試してみろ。音が入った状態で引き金を引けば何かが起きる筈だ。」

「分かった。やってみる。」

意気込んで言うと先陣山君の表情がほんの少し柔らかくなった。少しは気を許してくれたのだろうか。

 私は早速、元々持っていたボイスレコーダーを装填してみた。すると驚く事にピッタリとはまった。

「わぁ! ピッタリだ!」

「やっぱりか。」

「そこの岩に試し打ちしてみるね。」

私は洞穴を出てすぐ横の岩の前に立ち、銃を構えた。息を飲むと同時に引き金をゆっくりと引く。すると、銃口から燃え盛る炎の渦が出た。雨が降っているのですぐに消えてしまう。

「あれ……? この炎の渦……どこかで見た事あるような……。」

またも記憶の糸を伝ってみる。あれは確か今から二年前……。中学一年生の時だ。


「ハァ……初めての主人公役、緊張するなぁ……。」

昼下がりの近所の河川敷で、私は一人で役作りをしていた。異世界転生モノの主人公の女の子の約だ。女の子向けで恋愛要素が強いお話だった。

「原作のラノベ読んでみたけど『常に前向きな女の子』って印象だったなぁ……。」

ボイスレコーダーの録音ボタンを押して、気持ちをこめて台詞を言った。

「『散りゆく紅き紅葉の炎! 渦巻紅炎(うずまきこうえん)!』……こんな感じかな。」

録音を止め、今の台詞の確認をする。若干痛いのは禁句だ。

「うん。これでいいかな。」

 私がこの職に就いたのは幼い頃に見ていたアニメの影響によるものである。私には三つ年上の兄がいて、その兄は所謂「アニオタ」であった。リビングに降りて来ては少女アニメを見ていた。当然、一家共用の居間でそれを見ていたのだから私ですら嫌でも目に入る。これが小学二年生の時。おかげで私まで今ではアニオタだ。

 小学四年生の時、母親と兄が勝手に声優事務所に私の履歴書を送り、一次審査に通った。アニメを見ている兄の横で「声優になりたい」と呟いたのを聞かれていたらしい。

嫌々行った第二審査の面接も、第三審査の実技も「素質アリ」と言われて難なく合格し、晴れて声優として駆け出した。

 別の日、河川敷で練習していると、見知らぬおじさんに声を掛けられた。

「君……明星光ちゃんだよねぇ? 応援してるよぉ。」

不気味な笑みを浮かべて徐々に距離を縮めてくる様子に若干寒気がしたのを覚えている。

「な……何ですか?」

「これからおじさんと遊びに行かない? たまには息抜きも大事だよぉ。」

今度は手を伸ばして来た。恐怖で声も出なかった。後退るのがやっとだった。腕を掴まれそうになった時に怒号が聞こえた。

「おい! クソジジィ! 俺の妹に何しやがる! その汚ねぇ手離しやがれ!」

たまたま通りかかった兄が助けに来てくれた。引きこもりがちで趣味に関しても周りから理解されない兄は自宅以外では孤立していたようだ。だが、自分を慕ってくれている妹だけは何としてでも守りたかったのだろう。

「君、この子のお兄さん?」

「黙れ。分かっているくせに。それより、お前が妹に手ェ出してるとこはしっかりと写真に収めたからな!」

兄はスマホの画面を突き出した。そこには確かにおじさんが私に手を出そうとしている写真がきっちりと収められていた。

「コイツを警察に出したら……分かるよな。もう既に取り返しのつかない事してんだぞ?」

「クソッ……」

観念したおじさんは小走りに逃げて行った。その様子を見つめる兄の背中は物凄く震えていた。後日そのおじさんが逮捕されたと知らされた。

 その後、何度も声優を辞めようかと悩んだ。履歴書を事務所に送った兄も母も止めなかった。しかし別の日……。

「『だってユウタはアタシの事が好きだって言ったじゃない! なのにどうして……。』ハァ……これでいいかな。」

あの事件以降、私の役作りには必ず兄か学校の友達が付き添ってくれるようになった。場所は変わらず河川敷だ。

「ああ。いいんじゃないかな。……あ。」

兄は土手の方を見て声を漏らした。

「ん?」

私も気になり土手を見る。そこにはこちらを見てモジモジとしている女の子が立っていた。

「お兄ちゃん……。」

兄は行っておいで、と言わんばかりに私に笑いかけた。

 その女の子は私が近付いて来ていると分かり、体をビクッとさせた。近付いて分かったが、その子は私と歳が近そうだ。

「こんにちは!」

「こ……こんにちは……。」

「私のファンなの?」

「は、はい!」

「応援してくれてありがとうね!」

「あ、あの……握手……してください。」

「はいどうぞ!」

震える女の子の手を握る。

「あ、ありがとうございます! 私、あなたにお礼が言いたくて……。私、学校でいじめられてて……今もです。誰も助けてくれないし、両親にも言い出せなくて……。正直に言うと自殺……も考えました。そんな時に明星さんが声優を務めるアニメが始まって……。私と似たような境遇の女の子の役をされていて、その子が生きる希望を見つけるシーンに私は救われました。ありがとうございました。」

そう言うと彼女は恭しくお辞儀をした。私はああ、あの役かと思い当たる役を見つけ、そのキャラクターの声で背中を押してあげた。

「大丈夫だよ! あなたは強いから。」

「あっ……ありがとうございます!」

その子は走り去って行った。アスファルトの上には水滴の跡が残っていた。

 自分の演じた役が、誰かの生きる希望になった。それが嬉しくてこの仕事を続けることにしたのだ。


「……あ。」

要らない部分まで思い出してしまった。

「この技は『渦巻紅炎』だ……。昔私が演じた役の一人が使ってった火属性の技……。」

「そう言えば確かあの翁が『○○属性』とか言ってたな……。」

「でも、やっと使い方が分かったよ。きっとボイスレコーダーに入れた『実在する技』がそのまま攻撃になるんだ! その代わり、私が演じた事の無いキャラの技は出ないかもだけど……。」

「おい。体がびしょ濡れだぞ。そのままでは風邪をひくから戻ってこい。」

先陣山君が洞穴の中から手招きした。

「あ……そうだね。……クシュン!」

「おいおい、序盤の序盤で風邪はやめてくれよ。」

「大丈夫だよ。」


薄暗い森にただ雨が滴る音だけが響いていた。

「地図でも手に入れば冒険も楽になるが……。」

「うん。きっと村とか街がどこかにあるんじゃないかな。『製図家』の職業(ジョブ)の人もいるんじゃないかな。」

このままでは埒が明かない。そう言えば、転送された時に森の奥地から不気味な雰囲気を感じ取った事を思い出した。恐らく、あの奥にはボスっぽい何かが居るのだろう。今いる場所はその不気味な雰囲気が落ち着いていた。この『不気味な雰囲気』について先陣山君に話してみた。

「そうか。……そのボスっぽい何かを倒しに行かないか?」

「えっ」

「いや……俺も極力戦闘は避けたい。だが、それを倒さないと他の連中に会えない気がしてな。」

「なら先に拠点を探さないとね。ここは安心できないからね。食事も無い。」

「せめて方角さえ分かれば良いのだが……磁石を持っていない。そもそもこの世界に方角の概念があるのかも分からない。昼夜も春夏秋冬も同様だ。」

「スマホ生きてるかな……?」

私はカバンから自身が声優を務めたアニメキャラのストラップが着いたスマホを取り出し、電源を入れた。一応電源は点いたが、『圏外』。分かってはいたが『圏外』は萎える。それでも気を取り直して画面をスワイプする。

「地図アプリは……。」

もしかしたら神様が粋な機能を付けているかもと期待したが、それはすぐに打ち砕かれた。そうだよね……元々GPSで動いてた地図が中世ヨーロッパ風の異世界で機能する筈が無い。

「充電を無駄にするなよ。モバイルバッテリーがあってもコンセントが無い。」

それもすっかり忘れていた。最後の望み、『方位磁針アプリ』を開く。

「神様! 頼みますっ!」

この場面で神頼みとは皮肉なものだ。

 スマホを地面と平行にして回転させてみた。北の位置が動かない。正常に機能している事になる。

「良かった……。コンパス使えるよ。」

「そうか。」

先陣山君の表情は分かりにくい(マスク姿だし……)が、声を仕事にしてきた私にはほんの僅かな声の違いも分かる。彼の声も安堵の声音だった。その時、空もまた表情を変えた。雲の合間から差した光芒が私の左側の頬を優しく照らした。

「それじゃあ、早速出発しよっ!」

「ああ。」

二人で荷物をまとめて洞穴を出た。心強い味方を手に入れて、この世界への期待が増した気がする。


・お読みいただきありがとうございました。お楽しみいただけたでしょうか?

・今後ともよろしくお願いいたします。

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