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第1話 天才が集う学校

・読んで下さりありがとうございます。

・初投稿です。

・文章に拙い所があると思います。

→それでも大丈夫ならよろしくお願いいたします。

「本当に私なんかがこの学校に入学してもいいのかな?今日はまだ新入生のオリエンテーションだけど……」

推薦状を手にした少女はある高等学校の門の前に立っていた。肩まで伸ばした髪で、他校よりも少し目立つチェック柄のスカートと明るめの色のブレザーを着けている。

「ここの入学条件……都内の全ての中学校から各校一人ずつ三年生が推薦される……そこからこの学校側で選考会が開かれてそこから二百人選ばれる……。成績だけじゃなくて肩書とか運動神経とかも見られる……私の場合は…………。まぁ良いか。ここに入れることを素直に喜ぼう。」

少女は胸を張って門の中に足を踏み入れた。守衛所で推薦状を見せ、笑顔で迎え入れられる。

「入学おめでとうございます。」

「えへへ。ありがとうっ、守衛さん!」

少女は指定された教室へ足早に歩みを進める。電車が遅延してしまい、遅刻しかけていたのだった。

(急がないと……)

 少女は走って教室へ向かった。今回組まれるクラスが、入学後も継続されるので、期待はより一層深まる。


「ハァ……ハァ……ハァ……着いた! ここだ!」

肩で息をしながら、推薦状に書かれた教室の引き戸を思い切り開ける。大きな音を出てしまい、周囲の視線が一気に集まったが、すぐにみんな前に向き直った。そこで初めて恥ずかしい事をしたのだと気づき、赤面する。

 自分の席は他に空いている場所が無かったのですぐに分かった。最も教卓に近い窓際の日当たりのいい席だ。左隣と前には人がおらず、右と後ろにしか人がいない。お互いに知り合いがおらず緊張感がヒシヒシと伝わって来た。

 ふと横に目を向けると隣に座るマスク姿の男子は何かを熱心に磨いていた。覗き込もうとした時に丁度チャイムが鳴ってしまった。即座に姿勢を正し、前を見る。しかし、待てど暮らせど教員が入って来る様子が無い。次第に周囲もざわつき始める。

「もう十分も過ぎてるのにまだ来ないのか?」

「大丈夫かしら……段々心配になって来たわ……。」

「……。」

そう言えば、先ほどから雲が動いていないような気がする。待ちきれなくなった生徒がドアに手を掛けたその時、何もない筈の天井に大きな穴が開き、そこから眩い光が差した。眩しいせいで顔を覆ってしまったが、何かの声が聞こえた。耳では無く、心に直接話し掛けられているように感じる。

『皆さん初めまして。突然すまんの。』

(え? 誰?)

『ワシは神だ。』

そんな馬鹿げたことがあって堪るかと呆れていたが、神と名乗る者は続けた。

『君達はそれぞれ何らかの「才能」を持っているようじゃ。ワシの気まぐれで異世界に転送させようと思う。勿論、こっちの身体が死んでしまう訳では無いから大丈夫じゃ。』

何を言っているのか詳しく説明して欲しかったが、それを頼む間もなく、光が強くなり、そこで意識が途切れた。


 あれからどれ位の時が経ったのだろうか。私にはよく分からない。でも、気付いた時には元居た教室ではなく、どこかの森の中で仰向けになっていた。とても静かで不気味な空間だが、どこか神聖な雰囲気がある。奥地は暗く、不気味なオーラが漂っているのを肌で感じた。

「どこ……ここ……? そう言えば神様とか言う何かが『転送』云々言ってたよね……。」

私は職業柄(・・・)このような状況が理解しやすい。普通は起こりえない出来事であるが、なぜか慣れているのだ。

 起き上がって辺りを見回す。足元には学校に持って来たカバンが置いてあった。それを拾い上げ、もう一度周囲を見渡す。この世界の事をちゃんと理解するよりも、出口の確認と安全の確保が最優先だ。

『ようやく目覚めたようじゃの、明星光(あけぼしひかり)ちゃん。』

「私の名前?! 何で?!」

神様の声が聞こえた。

『ワシは神じゃからの。君の名前くらい分かる。君達がすべきことについて軽く教えておくぞ。君達クラスメイトはこの広大な世界にバラバラに転送させた。全員が集合すれば、元の場所に返してあげるぞい。』

「こ、ここはどんな世界なの? 剣とか魔法があるの? それに気になるのが転生じゃ無くて転送?」

『流石現役JC声優の光ちゃん。君がこれまでに演じて来た役の人たちが転生した世界だって考えてもらって構わんぞ。勿論、剣も魔法もあるけど、君は両方とも使えない。ただし、君の特技を活かした武器をカバンの中に入れておいたぞ。流石に丸腰はきついからの。』

「光ちゃんとか……軽々しく呼ばないでよね。」

『まぁまぁ。まだ話は終わっとらんぞ。君達の才能や見た目、性格は元居た世界と殆ど同じじゃ。身体能力の強化をちょいとばかりさせてもらったがの。そんな事したらそれこそチートスキルになってしまうからな。じゃあ、ワシは雲の上から見とるぞ。』

「あ……! ちょっと待ってよ!」

叫びも空しく神様は姿を消した。

『言い忘れておったが、この世界の住人は皆言葉が通じるから安心せい。』

唖然として見つめていた空から声だけが聞こえた。

「もう……。」

 取りあえず、私自身の事について少し自己紹介をしておこうと思う。さっきの会話で分かった通り、私の名前は明星光。現役中学生声優として活躍しています。元々は声優の専門学校が付属している中学校に通ってたけど、今回、周囲からの推薦と運により、晴れて栄転する事になりました。周りからは「声も顔もカワイイ」とか「真似したい」とか「憧れです」とか言われるが、正直、私は私として生きているとしか自覚が無い。背中を追われるような人間ではない。

「ハァ……。」

先程私が職業柄……、と言ったのは他でもないこの声優業が関係している。当然、『異世界転生小説・漫画』原作のアニメの主人公もやらせてもらった事がある。

 神様に言われた通り、まずはカバンを開けて見る。さっさと帰りたいのにどこか異世界にワクワクしている自分は客観的に見ると呆れる。

「なにこれ……。」

カバンの中にはメガホンを縮小させたような小型小銃が入っていた。使い方等は一切書かれていない。先程の神様の言葉を思い出し、ヒントを探ってみる。

『君の特技を活かした武器をカバンの中に……』

私の特技……メガホン……そうか。そう言う事か。つまりこの得た絵の知れない武器は『声』を使った『銃』だ。これを『ボイスガン』と名付けよう。性能はまだよく分からないけど声音によって威力とか飛距離が違うのかな?

 銃をいじっていた時、背後の草むらからカサカサと音がした。演じて来た役の『チュートリアルシーン』を思い出せば、パターンは二つ。一つ目は仲間になる人が飛び出て来て、その後ろから追いかけて来たモンスターと勝負になる。二つは急に敵が飛び出して来て戦闘になる。

……どっちにしろ戦闘じゃん。

無理だよ使い方分からない武器で生態も分からない怪物と戦うなんて……。

 使い方が分からない武器を草むらに向かって構える。

「ぐじゅ」

鳴き声とも分からない音と共に、草むらから何かが飛び出して来た。

全身緑色で半透明のプルンとしたアレだ。スライムだ。ベタすぎる序盤の敵に笑いそうになったが、相手は容赦なく飛びついてきた。

「きゃっ!」

避けるので精一杯だった。意外に移動速度が速く、避けてもすぐに体当たりを仕掛けてくる。

 一方的な攻防が続き、遂に私は転んでしまった。スライムが力を込めているのに気付いた。もうダメだと思った時に背後で声がした。

「絶対に動くな。」

人が襲われていると言うのに酷く落ち着いた声だ。そのまま背後ではカシャンと言う音がするやいなやスライムが飛び掛かって来た。目を閉じ顔を逸らす。しかしいつまでたっても痛みを感じなかった。代わりに、風船が割れるような大きな音が聞こえた。

 恐る恐る目を開けると、既にスライムはその場から消えていた。今度は背後に顔を向ける。

「そこにいるのは誰? 私を助けてくれたの……?」

呼びかけると気の影から誰かが姿を現した。間違いなく人間の男の子だ。その男子の髪はボサボサで、カーディガン、ズボンは黒く、シャツとベルトは白い。グレーに青色の斜め線が入っているネクタイをしている。カーディガンは全開、腕はまくっている。マスクを着用しているのも好奇心をそそる。

……マスク姿!

「あ! 君は確か隣に座ってた……。」

「そうだ。」

低音で渋い声が響く。今の声優界はこんな声の人が不足している。

「助けてくれてありがとうね。」

「……当然だ。死人を出せば帰れなくなる。」

「う~ん……取りあえず自己紹介からかな。今の所君以外に頼れそうな人もいないし。」

「ああ。置かれた状況は同じ……。まずは互いを知る事からだな。」

私は胸を張り、大きく息を吸った。

「私、明星光。七色(なないろ)中学に通ってるんだ。」

「七色中学と言うと……声優の専門学校が付属している中学だったな。道理で声が良いわけだ。」

少年は腰に手を当て頷いている。

「言うの恥ずかしいから言って無かったけど、私、現役の声優なんだ……えへへ。褒めてくれてありがとうね。……君の名前は?」

「……先陣山貫行(せんじんやまつらゆき)だ。」

 この不思議な少年に私は興味をそそられた。


ありがとうございました。誤字等がありましたら教えて下さると幸いです。

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