困ったことが起きた
困ったことが起きた。
私は電車内の座席に座り頭を抱えた。
列車は見知らぬ田園地帯を走り続けている。
かれこれ三十分はこの状態だ。
私はいつも通り地元の駅から電車に乗ったはずなんだが・・・
いや、確かに普段はホームに数人はいるはずの客が今日は珍しく一人もいなかったけど、まさかこんなことになるとは思わないじゃん。
いや、誰に言い訳をしているんだよ。てかこれ、オカルト的にまずいやつでは?
「・・・。」
やばい、考えたら怖くなってきた。
おおお、おちおちおち落ち着け。ここで冷静さを失ったら事が起こる前に気が狂ってしまう!
事ってなんだ?
ここで一気に加速する想像。
やばいやばいやばい!もういっその事発狂した方が・・・ああああああ!!
「あの、もし。」
「ううぉう・・・!!」
頭を悪い方向にフル回転させているところに突然声を掛けられ、私は声を上げて飛び上がった。
私に声をかけたのは制服に身を包んだ乗務員だった。
「・・・大丈夫ですか?」
私の反応に驚いた様子だったが、直ぐに乗務員が苦笑いで聞く。
「あ、はい・・・いや、大丈夫じゃないです。」
反射的にはいと答えたが、すぐに訂正する。
「どちらから乗られましたか?」
「袋田です。」
「ああ、あそこか・・・少々お待ちください。」
私が言った駅名に合点がいったという様子の乗務員は、ズボンのポケットからPHSのような物を取り出した。
「この電車は何なんですか?」
「なんと言いますか・・・ああ、まあ、点検車両みたいなものですね。」
乗務員は歯切れが悪そうに答えるとPHSを耳に当てた。
「・・・ああ、もしもし?私です。
ちょっと一般の方が乗られてしまいまして・・・。ああ、はい。はい、袋田駅の方にお願いします。・・・はい、はい、頼みます。」
どこかに電話を掛けていた乗務員が通話を終了するとすぐに電車の速度が落ち始める。
「これで大丈夫です。あとは停車したら普通にお降りになってください。」
「あ、はあ・・・」
ただでさえ理解が追いつけないような状況下でさらに追い打ちを掛けられ、気のない返事が出る。
そうこうしているうちに電車が止まりドアが開く。
「さあ、どうぞ。」
乗務員に促され私は電車を降りた。
「あれ?ここって・・・」
私が降り立った駅は出発駅の筈の袋田だった。
「どういうこと・・・あれ?」
振り返ると私が先ほどまで乗っていた電車は跡形もなく消えていた。
「いない・・・」
時計を確認すると時間が三十分ほど巻き戻っている。
私は夢でも見ていたのだろうか。




