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もう俺以外愛さない  作者: カイザーソゼ
2話 鳥無き星の蝶
9/83

2-2

 首都北部の山奥に、「金剛不壊の法 醍醐の会」の総本山が建っていた。東大寺南大門風の山門を挟んで、警察と寺のロボ部隊が睨み合っていた。

 警察部隊の主力は、盾とレーザーサブマシンガンで武装したケンタウロスロボ部隊である。サラブレッドサイズの軍用ケンタロボと比べると、ポニー程度の大きさだった。ケンタロボ隊の前衛に、動く盾として非武装の軽装甲車が配置されていた。

 寺の部隊も同じ構成だったが、前衛はレーザーマシンガンを搭載した装甲車で、後衛のケンタロボはレーザーライフル装備の軍用だった。

 境内にもケンタロボロボや装甲車がひしめいていた。しかし人の姿はなかった。

 門を潜って玉砂利の敷地を進み、石階段を上っていくと、赤銅瓦の安立行菩薩堂があり、ひょうたん池と浄行菩薩堂があり、無辺行菩薩堂があり……山頂に建つお堂は一際大きかった。ここが本堂の上行菩薩堂である。敵のオペレーター室は本堂にあった。


 首都の宮殿の東側に、神戸税関庁舎風の白い警視庁庁舎が建っていた。

 警察は警視庁内のオペレーター室から現地部隊を指揮していた。オペレーター室の指揮官はマイクで呼びかけた。


「これより、内丸兵器使用殺人未遂事件の強制捜査を始めます!山田栄輝総帥の他、幹部八名に逮捕状が出ています!武器を捨てて直ちに降伏しなさい!」


 寺側に動きはなかった。指揮官は現地部隊に指示した。


「突入!」


 警察は携帯ミサイル装備のケンタロボ隊を繰り出した。

 ケンタロボ隊は携帯ミサイルを発射した。ミサイルは山なりに塀を飛び越えて、境内の敵装甲車を撃破した。

 軽装甲車は体当たりで塀を崩して境内に乗り込んだ。生き残りの敵装甲車がレーザーマシンガンを打ってきた。太いレーザー光弾が軽装車を打ち抜き、ケンタロボ隊を薙ぎ倒した。

 警察と寺のケンタロボ隊が衝突した。様々な太さのレーザーが飛び交った。

 警察はビート板型の輸送シャトルを使って増援部隊を呼び込んだ。寺は境内の部隊を山門側に移動させた。境内の守備は手薄になった。


 警察のクモ型六脚戦車部隊が道なき道を移動していた。ビーム砲装備のクモ型戦車は急斜面を登攀し、手薄になった山頂の本堂を目指した。


 コブダイ顔の僧侶に変装した中村課長が、寺のお堂を土足で調べていた。靴底は紫色に光っていた。

 お堂には宇宙人グレイの顔の金の仏像が祀られていた。

 廊下から気配がした。課長は壁を垂直に歩いて、天井に逆さに立った。

 寺のケンタロボ隊がやってきた。彼らは天井の課長には気付かずに、お堂の前の廊下を通り過ぎていった。

 課長は天井から下りて、黒携帯で徳さんに電話した。


 警視庁の地下駐車場にステーションワゴンが止まっていた。その車内で、スーツ姿の徳さんは課長の電話に出た。


「俺です。武器はパルスライフルからAFVまで揃っていますが、兵隊は素人です。人はどこにもいません」

「搬入ルートは?」

「輸送会社に協力者が」

「俺は軍を疑ってるよ。未知の抜け穴でもありゃ別だが」

「(どこが支援国かばれないように)装備は多国籍ですが、補給思想は地桶軍です。弾薬庫には一個中隊五日分ありました。これは地桶軍の特徴で、人間は不眠不休でも四日間は集中力を維持出来る。だから奴らは四日粘って五日目に退く」

「四日粘ったらどうなんだろ」

「粘らせましょうか?」

「いいよ、あんたおっかねえなあ」


 こにゅうどう君がやってきて、徳さんの車に乗り込んだ。落ち着いた様子だった。徳さんが「中々いい調子なんじゃないの」と褒めると、こにゅうどう君は謙遜した。


「どうですかねえ。アンリツギョウ菩薩堂まで辿り着けるかな」

「アンリュウギョウな」

「アンギュウリョウ」

「日蓮宗で重要視される四菩薩の一体だ。そのー、手柄自慢って訳じゃねえんだが、うちが一機生け捕りにしたから強制捜査に入れた訳だろ?」

「感謝してますよ。この後軍の見せ場も作りますから」

「記者一家心中事件の捜査資料、こっちに渡しちゃくれねえかな」


 女性職員が車の後ろを通り過ぎた。こにゅうどう君は肝を冷やした。

 こにゅうどう君は辺りを確認して、小声で頼んだ。


「……車出してください、適当に」


 車は駐車場を出て、官庁街を無意味に走った。


「何が目的です?」

「孫にせがまれてよう」

「あれは妻の不倫を疑ってノイローゼになった夫の突発的犯行でした。

 大臣の事件なら何とかなりますよ。俺の担当だから。でもあっちは無理ですって」

「こっちであんたに迷惑かからないような、あんたが殺されないようなもらい方考える。それなら安心だろ。とりあえずお通しもらおうか」

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