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もう俺以外愛さない  作者: カイザーソゼ
12話 ギブアンドテイク
82/83

12-6

 帝釈天星の亜寒帯地方に、針葉樹のタイガ地帯があった。静かな氷の森に、宇宙から炎の雨が降ってきた。

 両機は同時に飛び降りた。正面からヘッドオンコースですれ違い、8の字を描いて反転し(互いに左カーブで反転して再びヘッドオンコースに入る)、ドッグファイトに突入した。

 残骸は絶え間なく降ってきた。通り抜けられるルートは炎の合間に浮かんでは消えた。カンフー機はノーブレーキでトンネルを飛び抜けた。了介機はアクセルをベタ踏みして、夢幻に変化する炎のトンネルをフルスロットルで駆け抜けた。

 両機の距離は離れていった。了介機が三秒前に通過出来た場所でも、カンフー機は行く手を阻む破片を排除しなければ通れなくなった。カンフー機のサーベルは金色からオレンジに変わり、刀身は縮んでナイフになった。

 黄金空母の残骸が落ちてきた。了介機は最高速度のまま左カーブして、空母を舐めるように一周した。

 カンフー機はブレーキを踏んで空母手前で止まった。

 一周した了介機が左正面から飛んできた。カンフー機は最後の力で急加速して、炎の雨から飛び出した。

 カンフー機の輪宝紋が消滅した。動きが極端に遅くなった。

 了介機が炎の雨から出てきた。こちらはまだ少し動けた。了介機は最後の力で急加速した。

 カンフー機はゆっくり反転して、了介機に向き合った。その背中に金色の二重火炎光背が現れた。

 カンフー機は七支刀型の黄金ビームサーベルを抜刀して振り下ろした。了介機は急停止した。

 切っ先が数十センチ先を通り過ぎた。サーベルの高熱で、頭から股下まで縦一直線に赤い線が刻まれた。

 了介機は急後退した。輪宝紋と愛の字が消滅して動きが止まった。

 両機は空中で対峙した。

 了介機の全身から、様々な武器が溢れ出しては落ちていった。ビームライフル、ミサイル、刀、駆逐艦ソード、紫水晶、重力ガトリング砲、大型ドライブユニット……地面に武器の山が出来た。

 了介はマイクでカンフーに呼びかけた。


「俺が素手になった。この意味が分かるか?

 ここから!本気で相手してやるって言ってんだ!」


 了介機の背中に銀色の二重火炎光背が現れた。頭に再び愛の字が輝いた。

 カンフー機は合掌した。


 宇宙空間に金色の毘盧遮那仏が現れた。爪先で宇宙全体を圧し潰せるほど大きな仏だった。


 了介機に向かって、天から毘盧遮那仏の右手中指の先が落ちてきた。

 了介機は中指の爪先の一部を掴んで、キャプチュードで反り投げた。毘盧遮那仏は後方に投げ飛ばされた。

 毘盧遮那仏は宇宙の果ての無明空間に背中から叩き付けられ、銀色に燃え上がって消滅した。後には新しい無数の銀河が生まれた。

 両機は正面突撃した。カンフー機は片手突きを打ち込み、了介機は大車輪キックで飛び込んだ。

 了介機の蹴りが半歩早く到達して、カンフー機を蹴り飛ばした。了介機は更にフライニングニールキックで追撃して吹っ飛ばした。

 了介機は再突撃で仕留めにかかった。カンフー機は素早く態勢を立て直し、右足つま先の隠しビームサーベルを起動して、右のミドルキックを打ち込もうとした。

 了介機は一歩早く懐に飛び込んだ。了介機の脇腹を、サーベル付きの危険なつま先ではなく、太ももが鈍く叩いた。

 了介機は蹴り足をロックすると、垂直落下式キャプチュードで投げ落とした。

 両機はプラチナの火の玉となって落ちていき、針葉樹の森に落下した。衝撃波で森が抉れて、蝶の形の落下痕が出来た。

 カンフー機の頭は砕けた。二重火炎光背も消えた。了介機はカンフー機から離れて、大の字に倒れた首なし機体を見下ろした。

 機内から、カンフーがマイクで話しかけてきた。


「……喋ると思うか?」

「喋れば、大統領には戦犯として名誉の絞首刑を与える。喋らなければ、教祖を人目に晒して世界中の笑い者にしてから地獄に落とす。

 どちらが得か、取り調べの日まで考えろ」

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