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もう俺以外愛さない  作者: カイザーソゼ
11話 懐中電灯の墓標
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11-7

 夜八時、了介の輸送シャトルは映画撮影所のシャトルポートに着陸した。

 了介はパイロットスーツ姿で撮影所を歩いた。武士や騎士やコミックヒーローが、同業者だと思って「おはようございます」と挨拶してきた。

 とあるスタジオの中に、高校の教室のセットが組まれていた。

 五代辰砂はセットの机に座って、母親とメッセージアプリで連絡を取り合っていた。ミルクティベージュのロングパーマに、ラフに着崩したスクールカーディガンの制服姿。不機嫌そうに携帯をいじっていた。


 ―「その人の事何て呼んだらいいの?こないだ会社来た人なんだよね。おじさんが心配してたよ」


 ―「あの人も変な心配して」


 ―「別に付き合わないでって言ってるんじゃないの。ママには沢山パパがいてもいいと思うけど、でも私のパパは天国のパパ一人だから、それは忘れて欲しくないの」


 ―「お兄さんだったらどうするの?」


 辰砂は返信に詰まった。

 了介が教室にやってきて、辰砂に挨拶した。


「おはようございます。お姉さんから詳しい話は行っていると思いますが」

「お……お姉さん?」


 了介は携帯に課長のメモリーカードを差した。

 空中にホログラムモニターが現れた。二人は中の映像を早送りで見た。


 江戸湾をのっそり進む黒船艦隊。慌てふためく各藩の沿岸警備隊。恐れ、逃げ惑う人々の中に、目を輝かせて黒船を見つめる坂本龍馬役の大統領がいた。

 ここでタイトル「坂本龍馬のお通りだい」が表示された。続いて「監督・脚本・主演 秋宗六郎」とスタッフロールが始まった。


 辰砂は厳しい表情で念を押した。


「『お兄さん』。私、五代の娘だって公表していないんです。コネで仕事を取っていると思われるのは嫌なので。だから協力しますけど、この件は口外しないでください」

「分かりました」

「喋ったらガスバーナー耳に突き刺します」


 映画は中盤、土佐勤皇党結成のシーンに差しかかった。坂本大統領は武市道場で志士と激論を交わしている。


 ―「土佐モン同士で争うちょる場合じゃないきに!こん日本国をどういか一つに統制して」


 坂本大統領は過激な勤皇党と袂を分かち、脱藩を決意する。引き止めに来た平井加尾に、その心情を吐露するシーン。


 ―「武市氏の言いゆう事が分からんですきに!異人を切って切って切り捨てて、それが攘夷になりますろうか!誰かの血ィが流れんかったら、国家改造は成就せんのですろうか!」


 敵の黄金空母の艦内に、畳敷きのお堂があった。袈裟姿のカンフーはホログラムの人骨と大統領にひれ伏していた。

 大統領はあたかも人骨と話しているように相槌を打ったり、頷いたりした後、カンフーに指示した。


「一閻浮提広宣流布(日蓮宗を全世界に布教する事)。余、日蓮の現世の代理人である妙新はその役目を汝に委ねよう。いかに強敵重なるとも、ゆめゆめ退するなかれ、恐るるなかれ。妙法の勝利は白い蓮のように正しく、確実である」


 カンフーはお題目を唱えた。


「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」


 黄金空母が揺れた。

 宇宙に御神渡りが生じて、そこから味方艦隊が飛び出してきた。


(続く)

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