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もう俺以外愛さない  作者: カイザーソゼ
10話 進者往生極楽 退者无間地獄
69/83

10-7

 孔雀ナルト星のリングの食堂で、司令とホログラムチベットは頭を抱えていた。

 司令は気を取り直した。


「終わった事はしょうがない。証拠は手に入ったのか?」

「既に七割方消されていました。残った分でやるしかありません」


 空中にホログラムモニターが現れた。


 公安が北地人協会の寺を立ち入り検査した時の映像である。

 本堂の屋根裏に、杉田玄白似の僧侶と、片眼鏡のキツネ目の日本軍人の肖像画が隠されていた。庭の池の底に、舟州会の経典入りの壷が沈められていた。経典の奥付には「妙宗真暦十年」とあった。


 ホログラムチベットは説明した。


「協会は舟州会の新しい経典を隠し持っていました。しかし協会員の無勝荘厳への入国は厳しく制限されています。公安監視下での個人の輸出入もほぼほぼ不可能です」

「第三国で舟州会関係者と会っていた」

「そこです。

 日蓮宗では四体の菩薩が重要視されています。上行菩薩、無辺行菩薩、浄行菩薩、安立行菩薩。

 舟州会でも重要寺院に四菩薩の名を付けています。地球の本山は上行菩薩院。無勝荘厳の本山は無辺行菩薩院。馬宝月は安立行菩薩院。浄行菩薩院もこの世界のどこかにあります。彼らはそこで会っていた。

 四つの菩薩院は秘密の門で繋がっています。そしてここに来て戦力を温存し始めた敵。結論は一つ。敵は浄行菩薩院の門を使って、聖王星を奇襲攻撃しようとしています」


 須弥連邦の中心星、帝釈天星の近海に敵の大艦隊が展開していた。

 大型移動要塞の東西南北上下に、空母艦隊六個が展開して、全体でダイヤモンドの陣形を形成していた。豪風が主力の最精鋭部隊だった。

 陣形の最後尾に、金色蝶兵団の黄金艦隊が展開していた。


 帝釈天星は木々が生い茂る緑の月を持っていた。

 東南アジアのような大ジャングルの中に、純日本風の大仏様の寺があった。看板は出ていなかったが、境内には菩提樹の御神木が生えていた。

 敵は味方を敵陣深く引き込んで、がら空きになった本国を一気に落とす計画を立てていた。


 孔雀ナルト星の司令は言った。


「だがそれは我々も同じだ。敵の中核戦力を叩いて一気に終わらせる事が出来る」


 孔雀ナルト星のリング周辺に、淡路島空母を中心とする七個空母艦隊が展開していた。この事態を見越していた了介の進言で、司令も逆殴り込み用に戦力を温存していた。主力は歴戦のプンダリーカ部隊。四つ顔の帯刀機や了介専用の新型機もこちらに残っていた。

 付近に銀色の輪違い紋が現れて、そこから銀色の炎の塊が飛び出した。炎は見る間に剥がれ落ちて、中から星美機が現れた。背中の輪光は輪宝紋に変化していた。

 星美機の輪宝紋が消えた。背中に何もない状態で、星美機は力なく淡路島空母の甲板に着艦した。


 チベットは不安を述べた。


「しかし浄行菩薩院の場所を確定させないと、うかつには飛び込めません」

「向こうが先に仕掛けるか。こちらが先に飛び込むか。ここが俺達のウォータールー(天王山)になる」


(続く)

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