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もう俺以外愛さない  作者: カイザーソゼ
10話 進者往生極楽 退者无間地獄
64/83

10-2

 味方主力は東を攻めた。敵は東に兵力を集めた。これを見て、味方は少数精鋭で西を攻めた。

 開戦から四日目、若竹隊は西の金の月攻略作戦に参加した。


 上陸部隊は金の月に降下した。地面は硫黄蒸気で金色に変色していた。

 輸送艦から各部隊が発進した。プンダリーカが主力の精鋭部隊だった。

 フリダヤの了介機は単独で降下して、露天掘りの廃鉱山上空に到着した。地面にすり鉢状の大きな穴が掘られていた。

 了介機は垂直降下で穴底に飛び込んだ。

 長いトンネルが続いていた。道は狭く、暗く、迷路のように入り組んでいた。了介機は左右に曲がりくねり、上下に波打ったトンネルを飛び抜けた。

 道に鉱石運搬車二台が放置されていれば、機体を九十度傾けて真ん中を通り抜けた。

 落盤で道が塞がっていれば、クロールのクイックターンの動きで反転した。

 ゴツゴツした長い縦穴があれば、バーティカルクライムロール(ドリルのように錐揉み回転しながら垂直上昇する動き)で駆け上がった。

 了介機は縦穴を抜けてトンネルを突破した。

 金色の湖の湖畔に敵の基地があった。敵は出撃準備の最中だった。滑走路に軍艦五隻が止まっていて、そこにトラックが物資をのんびり運び込んでいた。

 了介機は相輪型の特殊ミサイルを基地上空に発射した。ミサイルは紫色に燃え上がった。その炎の中から、自走式ビームカノンを装備した「龍」のプンダリーカが現れた。

 帯刀機は軍艦の艦尾スラスターを打ち抜いた。

 帯刀機はビームカノンを投げ落とした。ビームカノンはハンドスピナー状に回転して地上部隊を弾き飛ばし、またブーメランのように戻ってきた。

 敵は対空攻撃を始めた。二機は距離を取って回避した。

 了介機は相輪ミサイルをもう一発打って、ビームマシンガン六刀流装備の村田のプンダリーカをワープアウトさせた。

 村田機は急降下した。

 滑走路の地下ゲートが開いて、嘉風二機が発進しようとした。村田機は銃剣ビームサーベル六刀流で二機を切り裂いて、地下格納庫に突入した。

 広いスペースに嘉風三十機が止まっていた。

 村田機はビームマシンガンを乱射しながら飛び抜けた。駐機中の機体は爆発炎上した。

 村田機は別のゲートをミサイルで破壊して脱出した。格納庫は大爆発して、二つのゲートから火柱が吹き上がった。

 帯刀機はビームカノンを敵司令部に向けた。敵は攻撃を止めて降伏した。

 四時間後、清海率いる本隊がやってきた。若竹隊はここで一旦ログアウトした。


 コックピットブロックから出たパイロットは、とりあえずハイタッチして勝利を祝った。皆まだこれからという表情だった。


 若竹隊には四日間のローテーション休みが与えられた。

 帯刀と透明感は待機所で金の月防衛作戦を討議した。村田も指揮官修行で強制参加させられた。

 了介、星美、元ヤンはオペレーター室で新型機の調整を進めた。帯刀達三人も後から参加した。

 他のパイロットもオペレーター室で自主トレーニングを行った。


 マスコミは要塞攻防戦を連日盛んに報道した。ニュースは朝から夜まで要塞戦一色になった。関連グッズや特集本がブームになった。

 警視庁は逮捕に備えて関係者宅を二十四時間態勢で監視した。

 自宅から証拠を燃やす煙が一日中上がった。業者のトラックは関係先を回って証拠を回収した。関係者は料亭に集まって口裏を合わせた。


 敵は三倍の兵力を集めて西の金の月を包囲した。味方は引き籠って出てこなかった。

 敵が西を取り囲んでいる間に、味方主力は東に猛チャージをかけた。


 西の敵は上陸前の準備砲撃を開始した。金の月は真っ赤に燃え上がった。

 砲撃は一時間経っても終わらなかった。二時間が経ち、三時間が経ち、とうとう六時間が経過したが、その勢いは衰えなかった。

 地上は火の海だった。味方は軍艦単位でトンネルを掘って、地下百メートルまで逃げていた。

 敵はバンカーバスター(地面にめり込む爆弾)やサーモバリック爆弾(ダメージがトンネルの隅々まで行き渡る爆弾)を打ち込んだ。マスドライバーで小隕石も飛ばした。

 味方はミミズ型の穴掘りロボにトンネルを掘らせて、更に地下へ逃げた。攻撃そのものは届かなかったが、地中を伝わってくる衝撃波で、ミミズロボが予期せぬ誤作動を起こして止まったり、軍艦の標識灯が消えたりした。

 十二時間が経過した。地上は炭化して黒くなった。

 二十四時間が経過した。夜、地上は降り積もった灰と、火事の火の粉と、絶え間なく降り注ぐビームの青いしぶきが入り混じって、幻想的な光景を見せた。


 砲撃開始から七十二時間が経過した。

 孔雀ナルト星の司令部は意気消沈していた。参謀の声は刺々しかった。オペレーターの顔には不安が浮かんでいた。一部の若手参謀はポジティブ発言で周囲を奮い立たせようとした。


「落ち着こう!大丈夫落ち着こう!」

「最後の悪あがきだ!行ける行ける!」

「敵はヤケだ!この勝負勝ったぞ!」


 作戦主任参謀は司令部の隅に設置された神棚に手を合わせていた。参謀長は誰もいない休憩室でサッカーボールをリフティングしていた。

 司令は士官食堂で本国のチベットと連絡を取り合っていた。

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