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もう俺以外愛さない  作者: カイザーソゼ
9話 寂静の太陽
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9-6

 味方の巡洋艦一隻が、紫色の霧が立ち込める宙域を進んでいた。スラスター口の光はいつもより弱かった。

 巡洋艦は大量の紫水晶が浮かぶ宙域に入った。この水晶から、紫色の光の粒子が絶え間なく放出されていた。

 霧は益々濃くなった。巡洋艦の速度は低下した。スラスター光は弱々しく点滅した。

 濃霧で前が見えなくなった。スラスター光はほとんど消えかかった。巡洋艦はノロノロ進んだ。

 トンネルの入り口が見えてきた。イカリング状の構造物を何百個も連ねたトンネルで、イカリング同士は紫色の光の防護フィールドで結合されていた。

 トンネルの入口にも防護フィールドが張られていた。トンネル内は晴れていた。

 巡洋艦は防護フィールドをすり抜けてトンネルに入った。巡洋艦のスラスター光が復活した。巡洋艦はトンネル内を通常速度で進んだ。


 地桶軍の小艦隊が、真っ青に燃える太陽の周りを飛んでいた。巡洋艦一隻の左右に、護衛の駆逐艦二隻が展開していた。

 巡洋艦内の一室を借り切って、地桶軍首脳部の極秘会議が行われていた。

 イケメンゴリラの矢田掘統幕議長は、二枚の写真を机に置いた。緑の軍服を着たカンフーと、舟州会本山の写真である。


 霧に包まれた本堂に、黒茶色の人骨が飾られていた。頭は菩提樹の種に変化していた。腕と肋骨はなく、背骨はバネ状に捻じ曲がっていた。人骨は金色の座布団に胡坐をかいて座っていた。位牌には「光祖 妙新聖人 安置」と記されていた。


「舟州会教祖の即身仏だ。舟州会の過激分派は本山から即身仏を奪い、自分達の教祖に据えた。奴らの中では、この即身仏はまだ生きている事になっている。しかし実際にトップに立っているのは、即身仏と会話出来ると称するこの男だ」


 議長はカンフーの写真を指差した。


「戦争は和泉に乗っ取られつつある。いや、最初から和泉の物だったのかもしれない。

 和泉は今、金色蝶兵団を統幕直属から大統領府直属に付け替えようとしている。 世界最強の馬鹿と、国家最大の権力を持つ馬鹿。考えられる限り最悪の組み合わせだ。帰国後、直ちに然るべき処置を取りたい。戦争を私達の手に取り戻そう」


 地桶軍首脳部は拍手した。


 ミサイルが飛んできた。駆逐艦二隻は轟沈した。巡洋艦は前部デッキ、中央の艦砲、艦尾スラスターを吹き飛ばされた。

 青い太陽を背にして、帯刀機、了介、星美機が展開していた。

 了介機は生け捕りにしようと前進した。

 巡洋艦は強引にワープ態勢に入った。巡洋艦の正面に、色の薄い輪違い紋が現れた。

 帯刀機は生け捕りを諦めて、右手から相輪型の特殊ミサイルを発射した。

 ミサイルは巡洋艦周辺で複数の子弾に分かれた。子弾は小型の輪違い紋を発生させた。巡洋艦は周囲の輪違い紋に引っ張られて八つ裂きにされ、そして吸い込まれて消滅した。

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