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もう俺以外愛さない  作者: カイザーソゼ
8話 サッチウィーブ
50/83

8-3

 若竹島のパイロットはコックピットから降りた。

 フロアには楽観的なムードが漂っていた。帯刀は透明感と話し合った。


「おかしくね?」

「投げ槍ではありますよね。いずれにせよ、気は抜けないです」

「お前が冷静で助かるよ」


 元ヤンは二人に話しかけた。


「どうしたんですか?ここだけ空気違いますよ」

「勝って兜の緒を閉めよだなって、今二人で話していて。

 向こうが勝つには戦力をかき集めて、決戦で一発逆転勝利を狙うしかない。なのに正面からマッチアップを挑んで戦力を浪費してるでしょ?ディレイ(時間稼ぎ)もしてこない」


 了介は三人に話しかけた。


「その事でちょっと話があるんだけど、いいですか?」


 孔雀ナルト星のリングの士官食堂で、艦隊司令はホログラムの戦況図を睨んでいた。今日の昼食は砂糖をまぶした揚げパンの耳。給仕も軍楽隊もいなかった。


 砂漠星の敵司令部は、大陸の東端の半島の丘陵部にあった。東西二十キロの丘全体が要塞に改造されていた。

 味方は北、西、南の三方から半島の司令部を目指していた。一週間以内に落とせるはずだった。


 司令の携帯にメッセージが入った。「防衛省 防衛研究所所長 中屋敷初範」からだった。


 ―「すまないな 作戦中」


 ―「今はプライベートだ」


 ―「木下装備長官が出頭するらしいぞ。腹心の裏切りだ。小久保派には大打撃だろう」


 ―「基地に引き籠ってるらしいな?中村の報復を恐れて」


 ―「あれから家にも帰ってないようだ。車も吉倉門(官庁街)に止めっ放し。俺達は役人ったって、根っこは戦士だからな。こういう時に命を惜しむ奴は尊敬されないよ」


 局長は首都北部の第一師団基地の司令部に引き籠っていた。

 局長はバゴーンのスープを立って飲んでいた。不潔な恰好だった。髪はぼさぼさ、ひげは伸び放題、シャツはバゴーンのソースはねで汚れていた。しかし目付きは鋭く、頭も冴えていた。決して戦意を失ってはいなかった。

 基地の外にはほうれん草畑が広がっていた。

 畑のビニールハウスにもたれかかって、中村課長が手帳にメモを付けていた。いつも通りダブルのスーツを着て、キャプテンアメリカの盾のカフスを付けて、髪はオールバックに揃えて、ひげは青々と剃っていた。何一つ諦めていなかった。

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