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もう俺以外愛さない  作者: カイザーソゼ
1話 群蠅の王
5/83

1-5

 了介は静かな立体駐車場二階を歩いていた。

 指定された場所に輸送トレーラーが止まっていた。キーを向けると、荷台のドアが開いて、「プンダリーカ」が姿を現した。

 可変前進翼の白い大型双発機である。ステルス性を考慮して、武器は全て内蔵式だった。全ての軍用機は本来無人機だが、これは特殊部隊用に有人仕様に改造されていた。

 了介は胴体上部のコックピットハッチから中に入った。

 ボール型のコックピットである。全天周囲式の球形モニター。ヘルメットが置かれたコックピットシート。左右手元にある二つのボールレバー。足元にはフットペダルがあって、ここでアクセル/ブレーキを制御する。

 了介はヘルメットを被ってシートに座った。コックピットハッチが閉まって、球形モニターが外の様子を映し出した。

 了介は両手でボールレバーを握った。正面下部に、実体のない半透明のホログラムモニター(速度や地図、レーダー情報等が表示される)が現れた。

 右のボールレバーは攻撃、左のボールレバーは移動担当だった。レバーには五つのボタンがあって、ここを押すとビームやミサイルが飛んだり、事前にセットしたプログラムが作動して、複雑なムーブで自動攻撃/回避してくれた。強力なプログラムアクションはその分容量も食う。MP消費の大きい魔法のような存在だった。

 了介は左のボールレバーを前に倒して、右のアクセルをベタ踏みした。


 プンダリーカは急発進した。機体は直進して外に出ると、急降下して海底トンネルに突っ込んだ。

 トンネル内は渋滞が起きていた。誰もがライトを点けたまま、イライラした顔でクラクションを鳴らしていた。その上を、白い戦闘機が高速で駆け抜けていった。


 敵部隊は悠々と首都上空を飛んでいた。迎撃に出る部隊はいなかった。

 敵部隊は官邸上空に到着した。警察カラーのケンタロボ警備隊が赤いレーザー光弾を打ち上げてきたが、敵は青い光のビーム一発で黙らせた。

 敵部隊は変形した。

 ティラノサウルスのような姿である。ピラミッド型の頭部。太く短い胴体に、逆関節の両足。

 敵部隊は子供の声を機械的に組み合わせた音声を繰り返し大音量で流した。


「五分」「以内」「の」「降伏」「のみ」「を」「受け入れる」「それ」「以外」「は」「皆殺し」「だ」……


 降伏勧告は官庁街まで聞こえてきた。役人達は避難場所の公園でそれを聞いた。


「五分」「以内」「の」「降伏」「のみ」「を」……


 役人達は泣いたり、喚いたり、政府の無策を罵ったりした。

 避難所には徳さん達もいた。三人は焚き火でお湯を沸かして、災害備蓄用のペヤングを食べていた。


 局「久しぶり美味しい」

 課「湯を捨てる劣等焼きそば。やはりバゴーンこそが至高か」

 徳「納豆ねえ?混ぜると最高なんだよ~」


 官邸の北側から、帯刀の乗るオレンジ色のニルデーシャ一機が接近してきた。こちらも訓練用の有人機だった。

 敵四機は帯刀機を迎え撃つべく、飛行変形して北へ移動した。残り四機は官邸に残った。

 官邸上空の四機は北には注意していたが、南からの攻撃は警戒していなかった。彼らは棒立ちで北を見ていた。


 大河の中には複数の島があった。大河の北岸、島々、南岸は瀬戸大橋似の巨大な橋で繋がっていた。

 了介機はある島の地下トンネルから飛び出して、北岸へ続く橋の橋桁に飛び込んだ。

 橋の下の、X型の狭い枠の間を、了介機は機体を傾けて飛び抜けていった。その姿は衛星にもレーダーに映らなかった。

 了介機は橋の下から飛び出して、ミサイル四発を奇襲発射した。ミサイルのスラスター口も紫色に光っていた。

 ミサイル群は北岸上空を突っ切って官邸に殺到し、棒立ちの敵三機を背後から吹き飛ばした。一機は炎上した。

 火だるまの敵はミサイルを発射した。

 了介機は半透明のホログラム分身を上空に飛ばした。敵ミサイルは分身に釣られて上昇していった。

 敵はビームを無照準乱射した。了介機は正面から弾幕に突っ込んで、玉と玉の間を飛び抜けた。

 了介機は接近して人型変形した。

 西洋の騎士のような機体である。アーメットヘルムの頭部に、プレートメイルの体。

 了介機は大車輪キックで蹴り飛ばした。火だるまの敵は宮殿の水堀に叩き落とされた。


 北へ向かった敵四機の内、三機は北東方面へ逃げた。一機はそのまま北上して、南下してくる帯刀機を抑えにかかった。

 帯刀のニルデーシャは人型変形した。

 騎士に従う従士のような機体である。サレットヘルムの頭部に、キルティングアーマーの体。武器は右前腕部の内蔵ビームサーベル一本のみ。

 帯刀機は急降下して、高層ビル屋上のシャトルポートに降り立ち、クラウチングスタートの姿勢で低く構えた。

 敵がやってきた。帯刀機は地面を蹴って飛び上がり、宙を一直線に突き進んで、青い光のビームサーベルで切り上げた。


 敵三機は北東へ逃げた。その北東から、ニルデーシャ十六機がやってきた。

 敵三機は高度を下げて、付近の高層ビル街に逃げ込んだ。


 人型変形したニルデーシャが一機、高層ビルの合間に潜んでいた。機体は空色のマントを羽織っていた。

 マントに紫色の輪違い紋が幾つも浮かんだ。輪違い紋から、群体兵器のロボットカラスの群れが飛び出した。

 群れは寄り集まって、巨大なカラスの足三本になった。

 ビルの物陰から、ロボカラスの三本足が飛び出してきた。敵は逃げたがすぐ捕らえられた。ロボカラスは連鎖爆発して赤い炎の足となり、捕らえた敵機を吹き飛ばした。

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