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淡路島艦隊が敵惑星近海に展開していた。周辺には敵守備艦隊の残骸が漂っていた。
敵の惑星は乾いた砂漠星で、大小二つの月を持っていた。
味方は領土を奪い返しながら北上して、須弥連邦(敵の南にある同盟国)の南部国境にまで達した。戦はスタート地点に戻った。ここからは防衛戦ではなく侵攻戦になる。
敵は連邦の南部国境に防衛線を構築して、味方の進入を阻んだ。初期計画ではここで何年もグズグズ戦って敵の疲弊を待つ事になっていたが、味方は選挙を見据えて、力攻めでの一挙突破を目指す事になった。
周辺諸国は一応味方に協力していたが、頼りにはならかった。東の腐敗国家の仙予は敵に宣戦布告したが、攻め込まずに東部国境で睨み合いを続けていた。西の野心国家の獅子法は火事泥参戦の機会を窺い、須弥連邦との西部国境付近に大軍を展開させた。両国をコントロールするには戦の主導権を握る必要があった。
味方は単独で防衛線を攻めた。特に防衛線の両端に攻撃を集中した。この砂漠星は防衛線西端の七色要塞攻略の際、重要な足がかりとなる。味方は最精鋭の淡路島艦隊を投入して早期制圧を図った。
淡路島艦隊は上陸部隊を発進させた。
若竹隊は上陸部隊の輸送艦の格納庫にいた。
若竹隊は隊長三機が基本装備のプンダリーカ。部下はウェポンコンテナを装備した新型機のフリダヤ。周りはニルデーシャばかりだった。
帯刀の「龍」と星美の「義」はいなかった。了介は「愛」なしのフリダヤに乗っていた。
帯刀の新型機は淡路島空母の格納庫で調整中だった。星美は聞き込みで上京していた。
帯刀は部隊指揮を透明感に委ねた。
「俺の機体は調整が間に合わない。指揮は清海が取れ」
「了解です」
「七色要塞攻略の起点を作る重要な作戦だが、実戦三度目の俺らがベテラン扱いされるほど新人が多い。面倒見てやってくれ。
了介、新型はどうよ?」
「俺は全然平気です。言うほど悪くないと思うけどなあ」
「お前はホウキに乗っても落とせるからな。開発者が何故かいないのが答えじゃね」
上陸部隊は砂漠星上空に達した。
輸送艦一+駆逐艦二が一セットになって、順に降下を開始した。部隊は真っ赤になって落ちていった。地上からの反撃はなかった。
若竹隊を載せた輸送艦が大気圏に突入した。輸送艦は摩擦熱で炎上した。
敵の細かい残骸が宇宙から落ちてきた。輸送艦の上空は炎の流星群に覆われた。
他部隊の新人パイロットは、地上からの反撃に備えて、ボールレバーから片時も手を放さなかった。表情も固かった。
若竹島のパイロットは、コックピットの中で手首のストレッチをしたり、体を大きく反らしたり、静かに目を瞑ったりして気持ちを整えた。
輸送艦は大気圏を突破した。砂漠では既に戦闘が始まっていた。部隊は輸送艦の甲板から次々発進した。




