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島の港の中に、温泉付きの道の駅があった。
了介と村田は島に戻って、道の駅の地産地消レストランでから揚げチーズカレーを食べた。
レストランのテレビは夜七時のニュースを流していた。ニュースは空港爆破事件一色だった。
「今日は俺がおごります。の代わりに聞いて欲しい事があるんですけど。本気でですよ?」
「はい」
帯刀は繊細そうな元ヤンはデリケートに、いつもヘラヘラしている村田は雑に扱っていた。しかし実際は逆で、村田は色々とため込んでしまっていた。
「ジュニアの頃、玉離れが悪いってよく叱られてました。俺、あの頃と何も変わってません。変わっていたら、今日もっと出来たはずなんです。
機体を信じれば六出せる。じゃあ、そこから更に三積み上げるにはどうすればいんですか?」
「俺が常に三出している前提で聞いていると思うけど」
「一兆億出してます?」
テレビに課長の顔と、「元防衛省情報局八課長 中村敬容疑者」のテロップが映った。了介は画面を少し見て、また村田に話しかけた。
「前はそれぐらいに思っていたよ。
雄翔君は一番最初が一番良かったように思う。あの時、楽しかったでしょう?だからむしろ、もっとエゴ剥き出しで動いたらいいよ。帯刀君は俺が説得する」
「マラドーナでいい?」
「君はそのままでいい」
「彼が活躍出来たのは十人がフォローしたからですよ」
「マラドーナは十一人でマラドーナだよ。失敗を怖れず、自分を信じ、仲間を信じる。これが雄翔君の新戦術だ」
了介と村田は道の駅を出た。二人は駐車場で星美達に出会った。星美は彼らに声をかけた。
「こんばんは。連絡付かないから心配しましたよ」
了介は携帯の電源を入れた。色々な人から安否を確認するメールやメッセージが入っていた。
「ああ、ごめん……」
村田が「今日は謝罪セールっすねえ!」とからかった。透明感はとろけるような笑顔を見せた。
透明感は二人に申し出た。
「今からご飯食べるけど、二人もどうですか?」
「俺らさっきカツカレー食べたんですよ」
「大丈夫だって。二週目行こう!」
「湯葉一枚も食えねえよ!」
村田と透明感は道の駅へ向かった。
了介は携帯をぼんやり眺めた。元ヤンは彼に一リットル入りポンジュースを手渡して、二人を追った。星美は苦笑いした。
了介は星美に謝った。
「この事はちゃんとお詫びして、お礼させてください」
「じゃ、一緒に美味しいもの食べて、この件はそれで永久にお終い、でいい?」
了介は頷き、星美は穏やかに微笑んだ。二人は一緒に道の駅に向かった。
「今日はいっぱいレモンかけていいからね?」
(続く)




