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もう俺以外愛さない  作者: カイザーソゼ
7話 Joy Soldier
41/83

7-1

 若竹島の基地は休日だった。中はひっそりしていた。

 パイロット待機所で、了介達三人とホログラム透明感は、宙に浮かぶホログラムモニターで録画映像を見ていた。


 火星のように乾いた星があった。重力は軽く、砂は舞い上がって宙を漂った。

 乾き星のクレーターに銀イボが埋められていた。その上空に、成長を観察するカステラ型の実験ユニット船が浮かんでいた。


 銀イボから菌糸が芽吹いてきた。菌糸は互いに寄り集まって双葉に変化した。

 双葉は急成長して菩提樹となり、花を咲かせた。花から銀色の光の粒子が放出された。

 粒子は重力を変えた。

 花が散って、実が一Gの重さで落ちた。実は芽吹いて様々な植物に育った。杉、ヒノキ、ツツジ、アジサイ……

 粒子は赤い空を青く変えた。

 空が曇って大雨が降った。クレーターは湖に、裂け目は川になった。実は風や水に流されて星のあちこちに散らばり、そこで植物を咲かせた。


 空が晴れた。

 木は白く光る実を落とした。ケンタウロス型作業ロボは白い実を回収して、地上に降りた実験ユニット船に運び込んだ。

 船内に研究室があった。シーリングライト型の重力ビーム照射装置と、黒ボール型工作ユニットだけのシンプルな部屋である。

 天井から円柱状の重力ビームが照射された。実は宙に浮かんだ。

 複数の黒ボールが実の回りを飛び回った。黒ボールは実に金属粉を吹き付け、レーザーでそれを焼き固めて、様々なパーツを作った。

 実を内蔵したスピーカー型の実験ユニットが完成した。

 スピーカーは大仏生首のお経を実に聞かせた。

 スピーカーから白い粒子が無音で勢いよく放出された。ロケットエンジンのようだった。

 スピーカーの全身から細いツルが大量に生えてきた。壁が緑に覆われていった。

 スピーカーを突き破って、ニシキヘビほど太いツルが放射状に生えてきた。ヘビツルは壁を破壊して伸び続けた。

 粒子の放出が止まった。部屋の中は緑の日章旗になっていた。


 星美はレースチュニックにショートパンツで、いつも通りのヒラヒラした格好だった。了介はロングTシャツにクラッシュデニムで、普段と違う崩した恰好だった。

 帯刀は白のサッカーユニフォームを着ていた。この後は地元チームと試合だった。

 ホログラム透明感はサマーニットとチュールスカートを合わせた格好で、今は地元に帰っていた。


 敵はこの銀イボを御神体として崇めていた。

 帯刀が言った。


「人知を越えた力を目にした原住民は、以降それを神のように崇める。パプアニューギニアのある部族は懐中電灯のために神殿を建てた。懐中電灯が仏像に変わっただけだな」


 ホログラム透明感は星美に確かめた。


「向こうにはオレンジと金があった。こっちにもレアの白と、SSレアのもう一種類があるはずだよね?」

「実はもう銀を一個確保してる。この銀でハイエンドの三機を作って、向こうの金に当てる。白はローエンドの量産機に」


 了介は今後の方針を説明した。


「警察の心中説は犯行現場に第三者がいた事を立証出来れば崩せる。これには警視庁、外務省、法務省の連携が必要。三者の連携には七色要塞の攻略が必要。ここが落ちれば早期勝利の流れが決定的になって、局長派は崩壊する。

 犯人は局長の要請を受けて犯行に及んだ。局長も攻略後に逮捕する。二人が繋がっていた証拠を押さえて犯人に逮捕状を請求する。

 犯人に逃亡の恐れはない。(愛を倒して未来年表のずれを修正したい犯人と)俺達とは必ず戦場で会う。逮捕は戦場で行う」


 情報局の中村課長は復讐を宣言して姿を消した。攻略前に局長が死ねば残党の大反乱が起きる。事件の全容解明も不可能になるだろう。


 帯刀がまとめた。


「やる事は変わらないな。戦場で頑張って仲間を増やす」


 了介は三人に言った。


「合言葉は『のばら』。頼りにしています」


 帯刀は「おう」と答えた。

 星美は了介の目を真っ直ぐに見て頷いた。

 ホログラム透明感は「任せて。私、期待されるほど力が湧くタイプだから、どんどん頼って」と微笑んだ。

 星美は了介に申し出た。


「今なら大勢の人が味方してくれると思うんだ。前に取材で北辰日報の記者さんと知り合ったの。一度あちらと会ってみたらどうですか?」

「うん。そうしよう」

「あーでも、私はこっち見てないとだから、記者さんに紹介状書いておくね」

「俺も今日は地元サービスで三連戦だ。清海も今実家だろ?」

「私は行けるなら行けますけど」

「せっかくの休みなんだし、桃ちゃんは家族とゆっくりしていて。パートナーは別に呼んであるから」


 人の気配がした。三人はカウンター裏に隠れた。

 村田がやってきた。悪羅悪羅系の格好だった。オラついたサングラスに、テーラードジャケット。白の開襟シャツ+シルバーネックレスに、スキニーデニム。

 了介は村田を激励した。


「今日はよろしくお願いします。雄翔君(村田)に捜査の突破口を開けてもらいたい」

「OKっす!若竹のケーヒルが流れを変えてやりますよ!」

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