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味方首都の中心部に、旧朝香宮邸風の首相官邸があった。二階の首相政務室で、逃げ帰った総理、艦隊司令、防衛局長、そして帯刀が向かい合っていた。
シオジ材の家具で揃えたシンプルな部屋である。一見すると無印良品の家具売り場のようだが、どれも木曽産の美しい木目を備えた高級品だった。
総理は帯刀と司令の労をねぎらった。
「皆を代表して礼を言わせて欲しい。君達のおかげで多くの命が救われた。本当に素晴らしい活躍だった」
司令は謙遜した。帯刀は後ろに大人しく控えていた。
それから、総理は局長に戦争の早期終結を命じた。
「国民は邪悪な敵国に報復を強く望んでいる。秋の衆院選までに結果を出してくれ」
局長も司令も即答を避けた。
帯刀は一歩前に進み出て、総理に力強く約束した。
「お任せください。九月までに秋宗大統領を逮捕して、戦争裁判にかけてみせます」
総理は帯刀の両手を握って頭を下げた。
「ありがとう、ありがとう、君は私の神だ。君が先頭に立ってくれれば、こんな戦争もすぐに終わるだろう……」
戦争が続いている間、局長は独裁者でいられた。しかし短期決戦になれば、彼は王座を追われる。
絶頂の瞬間は、同時に転落への始まりでもある。事件は新たな局面を迎えようとしていた。
(続く)




