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もう俺以外愛さない  作者: カイザーソゼ
6話 神を見た夜
38/83

6-5

 若竹隊は壁をビームで打ち抜いて強行出撃した。

 どの機体も追加オプションを装備していた。外付けのせいでレーダーに映りやすくなっており、飛行形態にも変身出来なくなっていた。

 帯刀機の「龍」は高速電子戦型だった。

 後頭部が大きく突き出したエイリアン状の頭部。追加アーマーを装備した体。脚部はロケットブースター型のドライブユニット二基に換装されている。長大な自走式ビームカノン一門を持っていた。

 帯刀は部隊に指示を出した。


「第二と第三は総理を連れて来い。指揮は清海が取れ。第四は俺と来い。敵を鹵獲するぞ。清海の方もチャンスがあったらどんどん仕掛けろ」


 若竹隊は南北二手に分かれた。


 生き残りの軍艦から味方が、コロニーからGIF部隊が順次発進した。GIF部隊は輸入型の青いニルデーシャを使用していた。

 コロニーと民間船は中央の淡路島空母へ逃げた。あちこちでサーディンランのような大渋滞が起きた。


 透明感隊と元ヤン隊八機は南にやってきた。こちらでも渋滞が起きていた。宮殿シャトルは巻き込まれて身動きが取れなくなっていた。

 透明感隊はホログラム分身を飛ばして、手信号で交通整理を行った。

 避難船が秩序だって動き始めた。元ヤン隊は宮殿シャトルを淡路島空母まで護衛した。

 邪鬼隊四十八機が接近してきた。透明感機は単独で前線に向かった。

 透明感機も高速電子戦型だった。頭部はエイリアンクイーン型で、ビームマシンガンを装備していた。

 前線に到着した透明感機はホログラム分身を百体放出した。レーダー画面の中では、二倍の味方が増援として現れたように見えた。

 敵四十八機は前進を止めて距離を取った。本物の敵と偽者の味方が、コロニーの無数の残骸を挟んで対峙した。

 コックピットの中で、透明感はじっと前を見ていた。嘘がばれれば敵が雪崩れ込んできて全滅するが、彼女は冷静で勇敢だった。頭に浮かんだ選択肢の中で、これが最も安全だった。


 元ヤン機が増援にやってきた。両肩に対艦ビーム砲、背中にウェポンコンテナを背負い、潜水艦ほど大きな重力ビーム砲一門を装備していた。

 敵が探りの縄文ミサイルを打ってきた。元ヤン機は紫色の重力ビームを左右に薙いだ。縄文ミサイルや残骸は潰れてクレープのように平べったくなった。

 重力ビーム砲は口から紫色の煙を吐き出した。再使用にはインターバルが必要だった。

 敵は更に縄文ミサイルを打ってきた。元ヤン機は重たい体でノロノロ動いて、対艦ビーム砲を何発も見越し射撃した。

 対艦ビームは一発もヒットしなかったが全弾かすめた。高熱で炙られた敵ミサイルはよろけたり、ふらついたりして酔っ払い飛行した挙句暴発した。

 オプション付きの味方が二機だけやってきた。味方のほとんどは避難船の護衛に回っていた。

 敵は怪しんで前進を再開した。元ヤン機はチャンスと見て勝負をかけた。

 元ヤン機は正面の残骸に重力ビームを発射した。

 重力ビームは目標を潰す事も、引き寄せる事も、固定する事も出来た。本体を目標側に引き寄せる事も出来た。

 元ヤン機は本体引き寄せ能力で残骸に接近した。その状態で重力ビームを解除して、別の残骸に重力ビームを発射し、また引き寄せ能力で接近した。

 元ヤン機は重力ビームのウェブスイングで残骸間を高速移動した。酷使された重力ビーム砲は煙まみれになった。

 元ヤン機は軍艦の残骸に着地すると、全翼機一機に重力ビームを見越し射撃した。

 重力ビームは全翼機をかすめた。

 元ヤン機は重力ビームを引き寄せた。全翼機は重力ビームの縁に引っかかった状態で、元ヤン機の方に飛んできた。

 全翼機は捕まえる前に自爆した。

 重力ビーム砲は壊れた。潜水艦ほど大きな砲身は、ジェット風船のように空気が抜けてどこかに飛んでいった。

 敵は後退して距離を取った。元ヤン機の仕掛けで、結果的に時間が稼げた。


 味方の小型空母の甲板上に、星美が操作する「義」のフルアーマーニルデーシャが現れた。

 上半身はブルースター防護服と化していた。背中にはウェポンコンテナを背負っていた。両腕はプテラノドンの翼型の可変複合ユニット(開くと翼に、折ると腕になる。武装は内蔵ビーム砲と実体剣)に、脚部はロケットブースター型のドライブユニット三基に換装されていた。

 星美機は高速移動で南へ向かった。


 小惑星から了介のプンダリーカが発進した。基本装備のみで、「愛」の字はなかった。


 了介はゴダイ本社ビルの社長室から機体を操作していた。

 アンピール様式の格調高い部屋である。仏十九世紀の高級家具が並んでいた。

 了介はパイロットスーツ姿で応接ソファに座っていた。ホログラムのコックピットブロックが彼を包んでいた。

 社長はスーツ姿でハンコを付いていた。

 了介は現地の帯刀に通信を入れた。


「分派の教義の中心も未来年表なんでしょう。そのスケジュールが俺のせいでずれてしまった」

「敵が慎重なのは、鹵獲されてずれが広がるのを恐れているから?」

「おそらく。『無』はずれの大元の俺を探している。俺が動かなきゃ、向こうも動かない」

「宗教家ってすげーな。じゃあ、動ける部隊は南に全振りするぞ。お前も清海の方に行ってくれ。皆安心する」


「無」の菩薩隊は動かなかった。三方から攻め込めば勝利は確実だったが、カンフーは軍事的勝利より宗教的勝利を優先させた。

 帯刀は司令に話を付けて、動ける部隊三十機を全て南に向かわせた。星美機以外は移動中にオプションを全て投げ捨てた。

 ステルスの三十機は南の前線に展開した。

 敵は遠距離から縄文ミサイルを打ち込んだ。味方はいつもより早く大きく、セーフティに回避した。敵は攻撃力は高いがレーダー能力は低く、ステルス機の味方を上手く攻撃出来なかった。味方は遠距離から打ち合って時間を稼いだ。


 避難船の移動はほぼ完了した。淡路島空母の周囲に生き残りがひしめいた。

 南の部隊も徐々に撤退を開始した。

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