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もう俺以外愛さない  作者: カイザーソゼ
5話 捨身飼虎の門
33/83

5-6

 カンフー機は豪風一機と都市上空で戦っていた。

 カンフー機は全身からビームを打ち上げた。上空の豪風はエルロンロール(ドリルのように回転する動き)で弾幕を掘り進み、距離五十メートルからビームを叩き込んで一撃離脱しようとした。

 カンフー機はびくともせずに反撃のビームを打ち込んだ。豪風機はクルビット機動(バク転で後ろに回り込む動き)でかわして背後を取り、自爆特攻した。

 カンフー機は炎上しながら川に落下した。

 しばらくして、川からカンフー機が上がってきた。首は吹き飛んだものの、分厚いアーマーに守られた胴体は無事だった。

 カンフー機は低空飛行で北岸を飛んだ。霧で視界が怪しくなってきた。僧侶が集団でお経を唱える声が聞こえてきた。

 高層ビル街の中心部に、大阪城似の城が建っていた。これが天軍大本営である。

 西の丸付近に大きな大仏の生首が転がっていた。額には銀色に光り輝く白毫(ほくろ状の突起)が付いていた。

 大量の蓮の蕾が、大仏の頭のイボイボを形成していた。蕾は集団で体を震わせて、お経に似た共振音を奏でていた。


 偽大阪城北側のビル屋上に、ビームスナイパーライフルを装備した豪風が待ち伏せていた。

 スナイパー豪風は大仏を狙撃した。大仏は破裂して、大量の泥を吐き出した。泥は大津波となって偽大阪城を飲み込み、周辺のビルを薙ぎ倒して川と合流した。一帯は瞬く間に泥の底に沈んだ。

 水中からカンフー機の大ビームが打ち出された。スナイパー豪風は逃げる間もなく蒸発した。

 川からカンフー機が飛び出してきた。水圧で全体が歪んでいた。

 カンフー機はアーマーをパージして、ノーマル装備の豪風に戻った。胴体は無事だが、首と左足はなくなっていた。

 カンフー機は一旦現場を離れようとした。

 上空から、最後の豪風が垂直降下してきた。その翼にホログラムの「愛」の文字が浮かび上がった。

 カンフー機は急上昇した。

 了介機はミサイルを打ち落とした。カンフー機は回避行動も取らずに突っ込んできて、右手を叩き壊された。

 カンフー機は左手でビームサーベルを抜刀して上昇突撃した。

 了介機は人型変形、ビームサーベル二刀流で降下突撃した。

 両機は空中で激突した。

 カンフー機は果敢に攻撃し続けた。面。胴。突き。小手。袈裟切り。逆袈裟。あらゆる斬撃を矢継ぎ早に叩き込んだ。

 了介機は守りに徹して勝機を待った。怒涛の斬撃を二刀流で捌きつつ、隙を見ては鋭く切り込んだ。

 カンフー機は突きを打ち込んだ。了介機は左の逆袈裟で弾き上げた。

 了介機は右の袈裟切りで切りかかった。カンフー機はバックステップでかわしたが、了介機は大車輪キックで追撃した。カンフー機は川面近くまで蹴り落とされた。

 了介機は右手を振り被って急降下した。カンフー機は半歩前に踏み込んでポイントをずらした。

 全力で振り下ろしたサーベルが胴体を袈裟切りするはずだったが、タイミングがずれて、手首で肩を殴ってしまった。右手首が砕けた。

 カンフー機は逆袈裟で切り上げたが、了介機はぎりぎりのバックステップでかわした。高熱の剣先が体をかすめて、腹から胸まで赤い線が刻まれた。

 カンフー機は片手突きで突進した。了介機はサイドステップでかわして、すれ違ったカンフー機の背後に回り込んだ。

 カンフー機は右足つま先の隠しビームサーベルを起動すると、背中を向けたままオーバーヘッドキックした。

 了介機は左の逆袈裟切りで切り上げた。

 カンフー機の振り下ろす刃。了介機の切り上げる刃。カンフー機の斬撃が半歩早く了介機を切り裂いた。

 了介機からボール型コックピットが緊急射出された。機体は爆発した。コックピットは川に落ちて沈んだ。

 カンフー機は突きの姿勢に構えて、コックピットに突撃した。


 了介は目を開けた。

 正面に青く輝く母星が浮かんでいた。周囲には月の白い地表が広がっていた。了介の乗るコックピットは、無勝荘厳から母星の二重月にワープしていた。

 後方に廃棄されたクレーター都市があった。クレーターに蓋を付けて、その下で生活出来るようにした街だった。

 蓋の一部が崩れて中が見えた。寂れたゴーストタウンの一角に、白く枯れた菩提樹と、大仏様の小さな廃寺があった。

 コックピットの真上に、銀色に光り輝く白毫が張り付いていた。


(続く)

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