5-1
宇宙がひび割れて、そこから紫色の炎の塊が飛び出した。炎は見る間に剥がれ落ちて、中から巡洋艦が現れた。
巡洋艦の正面に、霧に覆われた惑星が浮かんでいた。ここが開戦原因となった無勝荘厳国である。
巡洋艦から三角形の大気圏突入シャトルが発進した。シャトルは大気圏に突入して真っ赤になった。
シャトルの貨物室に、攻撃シャトル一台が格納されていた。
攻撃シャトルには特殊部隊十二人と、装甲車一台が乗っていた。了介も課長も徳さんもいた。貨物室はガタガタうるさくてオーブンより熱かったが、攻撃シャトル内は水平で静かだった。
徳さんは課長に説明した。
「今回の作戦は防衛局長個人の非公式な命令だ。派遣決定までの経緯は全て文書化して、協議の様子も全て録音録画して(了介の方を見ながら)あいつに預けてある」
「帰国後は小久保を反乱罪で逮捕ですか」
「十分に弱らせてからだ。今強引に排除すればクーデターが起きる。何にせよ、無事に帰るのが最大の目的になる。
下では慎重に行動してくれ。帰った後難癖付けられて逮捕されたらかなわん」
「小久保が指示しなくとも、俺はここを調査するつもりでした。ここには全てがある。持ち帰れるだけ情報を持ち帰りましょう」
徳さんはタブレットに地図を出した。
無勝荘厳の首都、雪山。南北に走る幹線道路と、東西に流れる大河の十字路に築かれた街である。川によって街は南部、北部に分かれていた。
「期限は八時間。それ以上かければ侵入がばれる。
とりあえず軍事顧問団の反応が途絶えた場所から見ていく。ここ、中堀小峰小学校だ」
徳さんは南を指差した。
「調べた後は北に向かって天軍タワーを調べる。ここは特権階級専用の高級マンションで、色んなもんが全部揃っている。生存者がいるかもしれん」
「在留邦人は開戦直前に全員脱出したはずですが」
「外務省の退避勧告が遅れて、田舎の駐在員家族は逃げ遅れた。顧問団派遣には残留邦人救助の側面もある」
徳さんはメンバー全員に注意した。
「お前ら、この国は初めてだろ。クソみたいな国だが切れるなよ。クソさを楽しめ」




