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もう俺以外愛さない  作者: カイザーソゼ
4話 排除の論理
22/83

4-1

  帯刀は防衛局長室に呼び出された。

  空中に浮かぶホログラムモニターに、現在の戦況図が映し出されていた。


 敵三軍は南下侵攻を諦め、北部まで後退して防衛線を形成した。こちらは敵の残存勢力を叩きながら北上していた。いずれ防衛線を巡って激しい攻防戦が始まるだろう。

 敵は国力に乏しい。同じペースで戦力を消費すれば、向こうが先に倒れる。奇襲作戦が破れて消耗戦になった今、敵の敗北は確実になった。ここからは「ハメゲー」になる。しかし味方が何らかの事情で消耗戦を選べなくなれば、勝利は再び不安定化するだろう。


 戦争の流れは変わった。金輪、地桶は参戦工作を活発化させた。寄合所帯の須弥連邦からは寝返る小国も幾つか出てきた。しかし力のある国は態度を明らかにしなかった。断るほど見返りの条件は良くなるので、彼らは限界まで様子を見る気でいた。


 国内も変わった。敵の態勢が十分なら、逆に淡路島艦隊は全滅していた。帯刀の評価は高まった。彼が鹵獲兵器解析の仕事を回すように運動すると、多くの理解者、協力者が現れた。

 局長は帯刀に仕事を託した。


「敵の勢いは死にました。これから貧乏人を消耗戦に引き込みます。向こうの機体と戦ってどう思いました?」

「レーダー能力に劣るのに、空戦能力に力を入れている。街の喧嘩屋では軍隊には勝てません」

「向こうはこっちより貧乏なのに、こっちより贅沢に金を使っています。最も豊かな金輪は、最も効率的な国でなければいけません。

 君にはコピー生産を念頭に置いて、あれをしっかり解析してもらいたい。必要な人、物、金は全てこちらで用意させてもらいます」

「いえ、全部俺が集めます」

「分かりました。

 その昔、最優秀の官僚は作戦局に配属されました。でも今は防衛局。上手い作戦を考える人より、沢山兵器を作る人が重要になった。長期戦になれば益々そうなる。俺の軍隊に作戦馬鹿の居場所はありませんよ」


 了介と星美は首都北岸のビジネス街の洋品店を訪ねた。

 パッラーディオ様式の華麗な通りを、地球製の高級外車が走っていた。こちらではタイヤ付き、シートベルト付きの車がステータスだった。

 無人で走っている車もあった。あまり賢くない車は、散歩させて芸を覚えさせる必要があった。

 店内のファブリックスペースで、星美は女性店員と素材を選んだ。


「これは地球から取り寄せたビキューナ生地で、大変お高くなっております」

「軽さで言えばタスマニアンウールですね。お客様ならとてもお似合いになると思います」


 星美は押しの強さに圧倒された。彼女は黒のノーカラージャケットに、白のロングポイントカラーシャツを合わせて、膝まで隠れたタイトスカートを履いていた。見た目はグループ面接に挑む女子大生である。

 星美はジョージアン様式のラウンジに戻った。

 イタリアンスーツを着こなした了介がソファに座っていた。単剣襟の黒ジャケットに、白のワイドスプレットシャツ。ソリッドナロータイを締めて、スリムなチョッキを重ねていた。無担保でも五百万ぐらい貸してもらえそうな雰囲気である。

 了介は「お帰りなさい」と労わった。星美は「うん」と少し疲れた顔で答えて、席に座った。


「帯刀君から今連絡が来て、OKだそうです。ただ内心かなり怒ってるから、注意しろって」

「悪の帝王かと思ったら、おちょこの裏みたいな人だ。事件、絶対解決しようね?」


 星美は了介の目を見て言った。了介は頷いた。


「私、今日は防衛省で取材を何件かこなして、その後はガレージで隊長を手伝うよ。明日は助っ人に話を聞きに行く」

「俺は一日銀行回り。映画にも文化部にも詳しい助っ人って誰?評論家?」

「女優さん。芸能人。セレブ!」

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