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もう俺以外愛さない  作者: カイザーソゼ
3話 若竹の真面目なパイロット
20/83

3-6

 戦闘開始から一時間が経過した。

 敵は徐々に疲弊し始めた。交代要員が足りなくなったので、中央の部隊を抜いて両翼の前線に送るようになった。

 三時間が経過した。

 敵陣が崩れ始めた。両翼の戦線はまだ何とか維持されていたが、中央前列は相次ぐ引き抜きでほぼ消滅した。


 孔雀ナルト星の司令は中央部隊に攻撃を指示した。


「予備部隊を投入して敵陣を中央突破する。最後尾の空母を叩け」


 若竹隊は動転した。帯刀は部下を落ち着かせた。


「第一小隊が前に出る。残りは後からついてこい。準備砲撃が終わったら行くぞ。俺達が空母一番乗りだ」


 味方後方から予備部隊が到着した。敵中央は既に半分減っていたが、新手の到着で戦力差は更に開いた。

 後方に控えた味方艦隊は短期間、突撃前の準備砲撃を全力で敵中央に叩き込んだ。辺りはビーム光で真っ青になった。


 若竹隊のパイロットはコックピットの中で雄たけびを上げたり、強い言葉で自分を奮い立たせたりした。


 砲撃終了直後、中央の各隊は一斉に前進を開始した。

 敵陣から猛然と青いビーム砲撃が飛んできて、辺りはまた真っ青になった。精度は悪いが、ともかく手数が多かった。若竹隊は怯えて減速したかったが、了介達三機がぐんぐん前に出ていくのでブレーキを踏めなかった。

 味方が接近してくると、中央の敵は背中を見せて逃げ出した。それを見て、両翼の敵も総崩れになった。

 ここから先はメタルスライム狩りのボーナスゲームだった。

 了介機はアクセルベタ踏みで直進し続けた。逃げる敵を追い抜いて、単騎で敵陣深く潜入し、レーダーで調べて味方に送った。了介機が先行して魚群探知機となる事で、味方は有利にメタル漁を進めた。

 全方向から了介機に攻撃が飛んできた。ホログラム分身+蝶の動きで全てかわした。

 敵は正面を塞いで弾幕を張った。その弾幕に正面から飛び込んで、玉の間を飛び抜けて接近し、距離五十メートルから肉薄射撃ビームを一発打って飛び去った。

 星美機は人型変形して突撃した。

 星美機の周囲に複数の輪違い紋が現れて、そこからウェポンコンテナが飛び出してきた。コンテナからは各種装備が射出された。

 四本腕の大型ドライブユニットが背中に付いた。両肩と両腰に対艦ビーム砲四門が付いた。ビームマシンガン六丁が手に付いた。全身に空色のアーマーが張り付いた。

 フルアーマー星美機は逃げる敵を追いかけて、中距離から流し射撃で打って打って打ちまくった。百発に一発当たる攻撃を、一万発以上打ち続けて強引に当てた。

 ビームマシンガン六刀流とミサイルの乱れ打ちで、逃げ続けた嘉風も最後は穴だらけにされた。軍艦は簡単に追いつかれて、対艦ビーム砲で船体を打ち抜かれた。

 星美機は上下左右に蛇行しながら敵陣を暴れ回った。仲間からはぐれた敵や、手傷を負って鈍った敵が出てきた。

 帯刀機は足を失った敵に対して、遠距離から長射程ミサイルを見越し射撃で二発打った。

 敵は一発目を囮光弾を飛ばしながら右カーブでかわしたが、曲がりきった所に二発目が飛んできて爆散した。

 帯刀機は付かず離れずで最大射程を維持しながら、星美機が食い散らかした敵をハイエナした。また部下にも弱った敵を攻撃させて経験を積ませた。余程の事がない限りは好きにさせた。


 了介は綺麗な肉薄射撃、星美はド派手な流し射撃、帯刀はクレバーな見越し射撃を得意としていた。

 了介は基本操作だけで、プログラムアクションをほとんど使わなかった。彼が基礎ステータスの高さで敵を圧倒する武道家なら、星美は豊富なMPで大火力魔法を連発する賢者、帯刀は毒針装備の魔法使いだった。


 元ヤンは見越し射撃を得意としていた。彼女は有利な射点を求めてあちこち動き回り、十分悩んでから、手負いの軍艦にミサイルを発射した。軍艦は上部甲板が炎上して、各部標識灯や艦尾スラスター口の光が消えた。

 もう動けない軍艦に、元ヤン機は何発もミサイルを打ち込んだ。その間、部下は後ろで見ているだけだった。パーティそっちのけでザラキを連発する僧侶である。


 村田は肉薄射撃を得意としていた。村田隊ははぐれた豪風一機を四機で長時間追い回したが、村田本人は真後ろ五十メートルからの会心必中攻撃にこだわって、いい形が作れても打たなかった。その間に敵本隊は逃げてしまった。最後には豪風にも逃げられた。戦士である。


 透明感は流し射撃を得意としていた。しかし彼女は戦闘より前進を優先した。逃げる敵は追わず、動けない敵も放置した。戦う敵は部下のミサイルで有利なポイントに追い込んでから、飛び込んで流し射撃ビームで仕留めた。バランスの取れた勇者である。


 了介機はノーダメージで敵陣中央を突破して、空母一番乗りを果たした。彼は最初からメタルキング空母だけを狙っていた。

 惑星の軌道上に、隠岐の島ほど大きな敵空母二隻と、対馬ほど大きな葉巻型移動ドック一隻が浮かんでいた。惑星の自転は止まっており、日の当たる表側は赤黒く焼けただれ、日の当たらない裏側は真っ暗になっていた。

 一方の空母は弾幕を張りつつ必死に逃げた。

 了介機は弾幕をすり抜けて後方に近づくと、ここまで温存したミサイルとビーム全弾、空母の艦尾大型スラスターに打ち込んだ。スラスターの一部が吹き飛んだ。

 隠岐の島空母は制御を失って大きく右に傾き、そして百八十度横転した。更には縦に、斜めに、ジャイロコンパスのように回転し始めた。

 回転空母は停止惑星の夜側へ落ちていった。やがて回転空母は大気摩擦で燃え上がり、巨大な炎のコマと化した。


 星美機を先頭に、若竹隊が敵陣を突破した。

 もう一隻の空母は強引にワープ態勢に入った。その正面に、色が薄く、形も欠けた不完全な輪違い紋が現れた。

 若竹隊は残りのミサイルを全弾発射した。隠岐の島空母は輪違い紋に飛び込んだ。

 空母の前半分が入った所で、不完全な輪違い紋は消滅した。前半分はどこかに消え去り、後ろ半分だけが取り残された。後ろ半分は全ての光を失った。

 若竹隊のミサイルは全弾命中した。真っ暗な巨体がまばらに炎上したが、全体ではびくともしなかった。断面からは紫色の煙が吹き出てきた。


 移動ドックから新手が四機出てきた。

 全身金色のブーメラン型全翼機である。スラスター口はオレンジ色に光っていた。


 若竹隊は緊急離脱した。「愛」の翼の了介機は逆に突撃した。

 新手の四機はスラスターの光を失って停止した。どれも未整備のまま強引に出撃していた。

 三機は土に変化して砕けた。

 一機の体から、隠岐の島空母と同じ長さの麦が一本生えてきた。穂にはモンシロチョウ型の白い花が実っていた。麦も花も枯れてしおれていた。

 了介機は人型変形して、フライングニールキックで全翼機を蹴り落とした。全翼機は炎上しながら停止惑星の昼側に落ちていった。

 麦穂から花びらが飛び散った。大半は燃え尽きたが、一割は移動ドックの底に当たった。底は土に変わって穴が開き、そこから武器弾薬が流れ出した。

 麦と全翼機は大気圏の炎に焼かれて消えていった。

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