表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう俺以外愛さない  作者: カイザーソゼ
3話 若竹の真面目なパイロット
15/83

3-1

 道重元作戦局長は防衛局長室に呼び出された。

 スチールラックと事務机が並ぶ殺風景な部屋だった。本棚にはパステルカラーの背表紙の少女漫画が並んでいた。

 防衛局長は深々と道重に頭を下げた。


「君に反攻部隊の指揮を取ってもらいたい」

「敗北者をトップに据えても組織は回らん。俺にも罰を与えて欲しい」

「全て大臣、次官、情報局の責任です。大臣はあの世に敵前逃亡した。次官は参議官(自宅待機の閑職)に降格した。勝手に兵力を使用した情報局は反乱罪で処分する。そして君はテロを防いだ。何の問題もありません。

 俺はテストとペーパーワークには強いが、部隊指揮は不得手でね。今国内に残っているまともな軍人は君だけです。この際水に流して、お国のために一緒に頑張りませんか」

「……理由を問わず、相手を選ばず。俺の軍人としての誇りだ」

「助かります。君は東郷元帥レベルで運がいい。指揮官は結局ここが一番大事ですよ。これ、出征祝いの佑定です」


 防衛局長は室町時代の刀を手渡した。作戦局長は刀を抜いて、今なおギラつく古刀の刃を眺めた。

 二人の前に、戦況図を映したホログラムモニターが現れた。


「貧乏人は戦うほどに弱くなる。敵は既に息切れを始めています」


 北の地桶共和国。フランス型共和制を敷いており、中央集権的で、トップの力が強い。

 中央の須弥連邦。地域色豊かな小国家のイタリア風寄り合い所帯で、足並みは悪い。

 東の仙予連合王国。テロと分離主義と国営企業に冒された、オーストリアのような老国だ。

 東北の無勝荘厳国。地桶と仙予の国境地帯にあるテロ国家で、両国の侵攻を何度も受けてきた。


 南の金輪聖王国。イギリスモデルの立憲国家で、合意と手続きを重んじる。

 西の獅子法王国。金輪と同じく立憲制だが、システムは官僚優位でドイツに近い。

 南西のGIF。金輪と獅子法の国境地帯にある開拓船団国家で、永世中立国。


 去年十一月、地桶の首都で無勝荘厳による大規模テロが起こり、地桶軍は報復のため同地に侵攻した。政権交代で新総理が就任した金輪は、地桶に対して経済制裁を発動、また無勝荘厳に軍事援助を与えるなどして圧力を強めた。しかし地桶は無勝荘厳から撤退せず、開戦奇襲に打って出た。貧しいテロ国家のために負ける戦争を始めるはずがない、と考えていた金輪は、初戦で大敗を喫した。

 北の地桶と、その同盟国の中央の須弥が南の金輪に攻め込む、という構図である。

 テロ国家の無勝荘厳は既に併合されて滅んでいた。

 小国のGIFは敵南進軍の侵攻ルート上にあり、地桶は当初から中立を踏みにじる気でいた。GIFは長年の中立政策を捨てて、金輪との同盟交渉に入った。

 腐敗国家の仙予と野心国家の獅子法は好意的中立を保っていたが、地桶は裏で盛んに参戦工作を仕掛けていた。金輪が少しでも弱味を見せれば、両国は地桶側に立って参戦するだろう。


 地域の大半が人跡未踏の暗黒空間だった。宇宙に山も川もないが、侵攻ルートは未開領域の影響である程度限定されていた。例えばAからCに移動するには、AからBにワープして、更にBからCへとワープする必要があった。

 敵の南進軍は西部、中央、東部の三軍に分かれていた。この内、東部軍は順調に南下していた。金輪と須弥の国境地点がA、金輪の本星の聖王星がZとすると、既にPまで行っていた。しかし補給不足から進撃速度が鈍った中央軍はN、西部軍はKで停止していた。なおGIFは西部軍のNの位置にあった。


 防衛局長は西部軍を指差した。


「君はこいつを叩いてください。暗礁空域を利用して動けば、フリードリヒ大王のロイテン会戦を再現出来るはずです」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ