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ロボットの話です。
主人公が事件を追う捜査パートと、ロボットで敵と戦う戦闘パートに分かれています。
血と裸は極力出しません。
全12話。毎週日曜夜~月曜朝に更新予定です。
読みやすく、分かりやすくをモットーにテンポよく進めていきます。
ジャンプのついでに読んでいただければ幸いです。
朝、警察が山奥の河原を捜査していた。現場は肌寒く、斜面には雪も残っていた。
河原のブルーシートから、こにゅうどう君ネクタイの刑事と、スーツ姿の太った老人が出てきた。
老人は身長百九十センチの体重百十キロ。大黒様のように福々しい顔立ちで、頭はすっかりはげ上がっていた。
こにゅうどう君は状況を説明した。
「死亡推定時刻は一昨日の三月二十七日二十三時から翌一時の間。死因は凍死。体内からアルコールと睡眠薬が検出されました。
徳さん、八幡大臣は最近どんなご様子でしたか?」
「そりゃ色々お疲れだったでしょう。思い詰めていらしたよ」
「遺書もあるしねえ」
「他殺の可能性は?」
「自殺を強制されたって事はあるかも。もちろん、全ての可能性は捜査しますが」
こにゅうどう君は「何か分かったら連絡します」と挨拶して、パトカーに乗り込んだ。ドアには「星都警視庁」と書かれていた。
車にタイヤはなく、車体は路面の数センチ上に浮いていた。パトカーはホバー移動で静かに走り去った。
徳さんは「テロの可能性もあるんだよなあ」と呟いた。
北東の山岳地帯を流れる川は、大河と合流して南西の内海に注ぎ込む。この河口に、アールデコ建築の巨大首都が築かれた。アメリカ風の簡素で機能性の高い工業デザインで統一された、若く新しい都市である。
大河南岸の再開発地区で、様々な重機ロボが働いていた。
一反木綿の動きで空を飛ぶムカデ型多脚重機。
垂直の壁を上るヤドカリ型重機。
人間の代わりに細かい作業を行うケンタウロス型作業ロボ。
どれも無人機で、現場に人はいなかった。
解体中の銭湯の隣に、築四十年の木造アパート「やまだ荘」が建っていた。
刑事と大家がアパート一階の「磯川」の部屋を訪れた。大家はドアを叩いた。
「磯川さんー?畑中でーす、おはようございまーす!」
反応はなかった。刑事が呼びかけた。
「磯川貴一さーん、警視庁の者ですがー」
逃走に備えて、もう一人の刑事がアパートの裏手に回っていた。刑事は磯川の写真を確認した。
総金歯で、口の中に金閣寺をぶち込んだような男だった。
表の二人は何度も呼びかけたが、金閣寺は無反応だった。刑事は大家に鍵を開けさせた。
中はユニットバス付きの六畳一間だった。荷物はなかった。
刑事は部屋を出て、携帯で捜査本部に連絡した。
「こちら姫川班向井です。マルT消えました。ええ、醍醐の会の……」