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【4歳】 歴史のお勉強です。

 ここは、王宮の一角にある、言ってみれば王族博物館。歴代の統治者たる王様や女王様たちの肖像画や、歴史に名を残した王族たちの遺品などが展示されています。年に数回、一般参賀の日や特別な記念日に国民へ解放されるけれど、今日は平日なので誰もいません。


「二の姫様。そろそろお戻りになりませんと……」


 もとい、私付の世話係と2人きりです。世話係と言っても、正確には私の従姉で、公爵家のご令嬢。2年後、隣国スワニール王国の王族へ嫁ぐことが決まったので行儀見習いというか、花嫁修業というか、ぶっちゃけ嫁入りまで変な虫がつかないように王宮で暮らしているのです。


 この従姉は、例にもれず、めっちゃ美人で、おっとりとした性格で、ぼんきゅっぼんのナイスバディの持ち主。しかも、箱入り娘で大切に育てられたからか、誰も彼もが良い人で優しいと信じている純真無垢な女性。故に、王宮内のオオカミたちからお茶に誘われても、二つ返事で承諾してしまうのです。


 結果、私が無邪気な子供の振りをして邪魔をするという、どちらがどちらの世話役なんだか分からない始末です。でも、いつも私を気遣ってくれる従姉のことは大好きなので、文句も言えません。


 尤も、私の知る限り、王宮の人たちは良い人(に見える)ので、もしかしたら私の思い過ごしなのかもしれないけれど、でも!どんなに良い人だって目の前に食べてくれと言わんばかりの美女が無防備に現れたら、紳士でいられる保証はありません!用心に越したことはないのです!……ええ、ブスの僻みではありませんよ、断じてっ!


 それはさておき、何故、この博物館にいるのかというと、歴代の統治者たちの御尊顔を拝見しに来た次第でございます。一の兄上曰く、私に似ているという始祖様の肖像画は、どど~ん!と正面に飾られています。誰よりも大きなキャンバスに全身が描かれていて、見落としようがありません。


 うむ。確かに目と髪の色は異なるけれど、浮腫んだ奥二重、小さな鼻、おちょぼ口に、ぽっちゃりした丸顔は、私の10数年後を予想して描いたと言われても頷けるような出来栄えです。というか、この顔。今まで鏡を見るたび、自分の顔に微かな違和感を感じていたけれど、何が違ったのかはっきりと分かりました。いや、思い出したと言った方が良いかもしれません。


 私の金髪と紫の瞳を、黒髪と黒い瞳に置きかえると現れる『二ホン人のような』のっぺり顔。ああ、そうです。私は、かつて始祖の女王でした。そして、女王になる前は、『二ホン』に住んでいた平凡な学生だったのです。


 そこまで思い出した瞬間、女王であった記憶と二ホンの学生だった記憶が怒涛の如く蘇り、私のポンコツな脳みそは処理が追い付かずに仕事を放棄し、次の瞬間、「おやすみなさい」とばかり電源を落としたのでした。


「姫様っ!……姫様がお倒れに!至急、宮廷医を!」


 遠くで従姉の悲鳴が聞こえます。心配かけてごめんなさい。ちょっと眠いだけだから、すぐ起きるからね……zzzzz



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