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ザセツ系主婦の片付け日記  作者: 三条まこ
8/30

7日目「クローゼット」

「爽子さん、部屋の片付けをしながら自分を見つめ、心の中の片付けも始まっていますね。

素晴らしい!

我慢したり、諦めたり、自分に嘘をついたりし続けると、1番傷つくのは自分です。

とても大切な自分を、思う通りに生きさせてあげてください。

しっかりと片付けに向き合っている分、爽子さんの変化は早いです。

心が軽やかになりつつありますね。


隊員の皆さんの中には、お仕事や体調でなかなか思うように片付けが進まないでいる方も多くいらっしゃいますが、

とにかく毎日手を動かすこと、

例えほんの少しであったとしても、昨日より片付いていること、

その頑張りが明日を変えます。

誰かと比べるのでなく、自分のために片付けましょう。


それでは今日も片付け隊スタートです。

報告お待ちしています。」


人から褒められるのは久しぶりかもしれない。

爽子は、唯子のメッセージを読みながら嬉しくなった。


朝家事が終わったら今日は洋服を片付けよう。


そんなことを考えながら、莉音を登校班まで送ろうと立ち上がると、

今朝も莉音はぐずぐずと立ちすくんでいた。


「学校、遅れるよ」

と声をかけると、

「休みたいなあ」と莉音。


学校、楽しくないの?と聞くと

「楽しいことは楽しいんだけど、お友だちとあんまりうまくいかなくて…」


そうなんだー。まだ仲良く出来そうな子、見つからないかな?


「白ばらさんとひまわりさんが戦っててー、莉音保育園だからどっちにも入れなくてー…」


白ばらとひまわりはどちらも市内にある幼稚園だ。

「長くなりそうだから、歩きながら話そうか?」と言うと、

割と素直に歩き出してホッとする。


「他の幼稚園や保育園の子はいないの?」


「いるんだけどー、保育園の子はいじめられててー」


えー!


「お母さんが、保育園育ちの子とは遊んじゃいけません、って言うんだって」


えー!!!


と言ってるうちに集合場所に着いてしまった。


他の子たちはもう全員揃っていて、見送りのお母さんたちの視線を感じる。


「遅くなってすいません。」と声をかけて、登校を一緒に見送る。


子どもたちが歩き始めてしばらくしてから、「失礼します」とまた声かけてその場を離れる。


全員会釈を返してくれたけど、誰もその場を離れようとはしない。


気まずいまま、家まで帰る。


気まずいし、気になる。

下校班に同じ登校班の同級生ママがいるから、今日のお迎えの時聞いてみようかな?

…聞けるかな?。

ドキドキするけど、このままじゃ嫌だから勇気を出して聞こう。



帰って、朝家事をさっさと済ませて、クローゼットの片付けに入る。


隊長の唯子さんは、以前は200着くらいの服を持っていたのを、片付け隊で36着まで減らしたそうだ。


爽子は、自分がどれくらい服を持っているのかまだ知らない。


まずは数えてみようかな?


クローゼットの前にはパイプハンガーがあり、ぎゅうぎゅうに服がかかってパイプがしなっている。

タンスに入らない服は、鏡台の上に高く積まれている。

窓際のソファの上にも服が積んである。

タンスの中にももちろんギッシリと服が入っている。

南側の壁1面の大きめのクローゼットの中にはもちろん服。でも、バッグと靴も大量に詰まっている。


とりあえず、服だ。

服を全部床に積んで行く。


ざっと数えても数百アイテムはありそうなので、数えるのは断念した。


とにかく数が多いので、直感を頼りにどんどん仕分けて行く。


仕分けながら畳む。


夢中で作業していたら、あっという間に午後2時。


クローゼットまでたどり着かなかった!



今週から莉音の帰宅はちょっとだけ遅くなり、学校と家の中間で待つことになっている。


マンションのエレベーターで、ちょうど莉音の同級生ママと会えた。


思い切って声をかけ、一緒に歩き始める。


お子さんは女の子で、確か幼稚園は白ばらさんだ。名前はみおちゃん。


「あのー、登校班のお母さんたちのことなんだけど…」

と切り出すと、

みおちゃんママはあっさり、

「だよね。やっぱり気になるよね」と返してくれて、ちょっとホッとする。


「いつか聞かれると思ってたの。私もあまりいい気待ちはしてなくて。」


「私、何かしちゃったかな?」


「いやいや、莉音ちゃんママは悪く無いと思うよ。ほら、女の人って誰かの悪口言って楽しんで団結を深めるとこあるじゃない?」


「私、何言われてるの?」


「えーっと…

聞かれたから言うんだけど、気分の良い話じゃないよ…。

先月旦那さんが車に荷物積んで出て行って、見送りも無かったし、それ以来姿見ないし、離婚じゃないか、って。」


「えー!!ないよそれは!長期出張なんだよ」


「そうなんだ!!よかったー。すごい誤解だね…」


「他には?」


「莉音ちゃんママお仕事辞めたみたいだし、慰謝料たくさん分捕ったんじゃないか、とか」


「……」


「だから行ったじゃない、良くない話だって。

あとは、いつもお化粧バッチリだし、服も高そうだし、気取ってるとか。

いつも高そうな雑誌買ってるとか。

使ってる生協が地元のじゃなくてオーガニックの高いやつだとか。

ゴミの分別が甘い、とか…」


「もういいでーす…。」


みおちゃんママは

「ごめん」って謝ってくれた。


「私も、もう悪口気分悪いし、聞きたくないと思ってたの。もう、私は加わらないようにするね。」


「ありがとう…。」


「こちらこそー。話して良かったかどうか分からないけど、私は話せてよかった。

莉音ちゃんママと友だちになれたらいいな。

後でline教えて?」



その日はお迎えの後、一旦帰宅してから、みおちゃんと莉音はマンションの共有スペースで少し遊び、

ママ同士でlineを教えあった。


松田有美さん。話すと年も近く、明るくて感じの良い人だった。


仕事辞めても毎日何かと忙しい。

特に頭の中が。


夜はまた服の仕分けの続きをした。





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