2日目『トイレとお風呂』
朝起きてすぐにスマホを起動し、メッセージを確認した。
朝6時。
昨夜遅くに書き込んだ何人かの隊員の片付け報告に続き、唯子さんのコメントがある。
「片付け隊隊員の皆さんおはようございます。
昨日は隊員全員が片付けに手をつけましたね!
いい感じのスタートです。
2日目もこの調子で頑張りましょう!
今朝の私の片付けは『トイレと洗面所とお風呂』です。
毎日の掃除のついでに、洗面台の下を整理しました。
使いきれなかった整髪料、香水etc、皆さんどうやって処分しますか?
私はビニール袋の底にボロ布を入れて、それに染み込ませてしっかりまとめ、今日のゴミに出して来ました。」
ゴミの出し方…。
爽子は気分が落ちて行くのを感じる。
ゴミ出しは夫の蒼介の担当だった。
先々週までは…。
蒼介は1日付けで秋田に長期出張に出かけてしまった。
転勤なら家族みんなで行くことも考えたが、予定では半年間となっている。
旅費がかさむ為、来月の連休までは帰って来ない。
先月末までは爽子も同じ会社で共働きしていた為、家事も2人で分担していた。
買い物と料理と娘の莉音の世話が爽子、
洗濯と風呂掃除とゴミ出しが蒼介、となっていた。
それが、
蒼介が出張でいなくなり、全部爽子の担当になった。
正直、爽子はゴミ出しをしたことが無い。
実家では出しておくと母が全てやっておいてくれたし、会社では少しはやったけど、次の新人が入ってくるまでの1年間だけで、しかも同期の男性社員がほとんどやってくれていた。
市のゴミ出しカレンダーをじっくり眺め、なんとかこの10日ほどを乗り切って来たのだ。
仕事を辞めていてよかった…。
こんな難しいこと、働きながらでは無理だったかも。
世の働く女性全員から突っ込まれそうなことを考えながら、爽子は朝の家事を片付けて行った。
片付けも2日目、娘の莉音も小学生2日目。
今週は給食を食べるとすぐに下校になり、1年生の保護者は今週は学校まで迎えに行くことになっている。
来週は半分くらいの道のりまで、その次の週は自宅の前で待っていてください、と入学式の時に学校から指示があった。
仕事辞めなかったらやらないで済んだのかな、という気持ちと、
一人娘に手をかけてあげられて嬉しい、という2つの気持ちがある。
何か物言いたげな莉音を登校班に合流させて、急いで家に入り、
今日の片付けは「トイレとお風呂!」と決めた。
トイレには特に片付ける物は無く、いつもの掃除を丁寧にやったくらい。
トイレはいつもきれいにしている。
正確には、トイレの玄関は。
爽子の母がいつも口うるさく「トイレと玄関はきれいにしないと幸せが来ない!」と言ってくるからである。
実際、爽子の実家もトイレと玄関だけはきれいだ。
トイレを素手で力強く掃除している母の姿を思い出すと、爽子は何故かいつも胸が苦しくなる。
何かやり残している気がする。
そんな気持ちは置いておいて、洗面台を磨き、古くなった歯ブラシ、カミソリ、ヘアゴムなどをどんどん抜いて行く。
古いヘアムース、香水、虫除けスプレー、洗濯糊など、処分が面倒そうなものは別によけて置く。
ここまでは順調。
正直お風呂の片付けは憂鬱だ。
お風呂の掃除は蒼介の担当だったのだが、几帳面な彼にしては珍しく、というか、本当に仕事が忙しくて余裕が無かったのだと思う。
ほとんど掃除をせず、浴槽の栓を抜いて終了、という日も多かった。
爽子も、それを知りつつ、忙しくて言わなかったし、担当制ということでムキになって、代わりに掃除したりもしなかった。
とにかく汚いのだ。
勇気を振り絞って、
マスクにゴム手袋を装備して風呂場に入る。
カビの生えた子どものおもちゃをガシガシ洗い、水を切ってゴミ袋に入れていく。
使いかけで多分もう使うことのないシャンプーの容器はとりあえずよけておく。
買っておいた例の黄色い液体を浴室中にまんべん無くスプレーして、
その間にシャンプー、香水、ヘアムースなどの中身をビニール袋の中に捨てて行く。
ヘアムースがなかなか手強くて、臭くて途中で頭がクラクラしてきた。
ようやく終わったと思い、スプレー缶にキリで穴を開けると、出し切れていなかった泡がプシュー!っと飛び出してがっかりした。
スプレー缶は危険物。
シャンプーのボトルはプラスチック。
香水のビンは…?
ビン・缶だろうか?不燃物??
後で調べよう。
浴室を洗う。
洗う。洗う。洗う。
黒カビは落ちなかった。
漂白剤買って来ないと。
キッチン用でもいいのかな?
とりあえず今日はここまで。
疲れた。
ゴミの分別の冊子を読んだら、香水のビンは不燃ゴミだった。
※各自治体で異なりますのでお問い合わせください。
ビニプラの収集日は昨日、ビン缶は明後日、不燃ゴミは来週だった。
すぐに家から出したいところだけど、待とう。
ゴミ袋をとりあえず主の不在の夫の部屋に置かせてもらった。
写真、撮るの忘れた。