魔法の絨毯
昔、空飛ぶ魔法の絨毯があった。
一見するとごく普通の絨毯なのだが、人がその上に乗り「飛びたい」と強く願うことで宙に浮き、意のままに操ることができる、魔法の絨毯だ。
魔法の絨毯は世界中の富豪達の間で大層高い値段で取引きされ、世界各国を渡っていった。
だが気が遠くなるような長い時が経つにつれ、いつしか魔法の絨毯の使い方を知るものはいなくなってしまった。
ついには魔法の絨毯の「魔法」の部分は忘れ去られてしまい、普通の絨毯として扱われるようになった。
普通の絨毯の上で「飛びたい」と願う者はいない。
今では歴史博物館に「大昔の高級絨毯」として展示されている。
狭いガラスケースの中で魔法の絨毯だけが唯一、「飛びたい」と願っていた。