泣き虫
私は極度の泣き虫だった。
人の前では絶対泣けない、どうしようもなくかわいくない子だった。
映画を観て、そこでほろりと泣けばいいのに、
うれしい、といってそこでほろりと泣けばいいのに。
一滴も出ない。
しかし、
一人になると、
やばいくらいに涙がだーだーでて…
どうして人前で泣けないんだろう?
と思って、
また泣き出す。
自分自身を
悲劇のヒロインにしたくて。
どう考えても、自分は悪くないのに、
全部自分のせいにする。
相手は誰かに、悪い印象は持ってほしくない。
友達にも彼はいい人って、ずっと思ってほしい。
私は良心に掛けるひとって、思われても、
彼はそう思われてほしくない。
たとえ、時間にルーズでも、
相手を美化して、
『私、早く来すぎちゃったね。あせらせてごめんね。』
たとえ、ドタキャンされても、
「ひまじんに付き合ってくれなくてもいいよ。むりいってごめんね。』
たとえ、なかなか、デートに連れて行ってくれなくても、
『連れて行ってくれなくても、彼がそう思ってくれているだけでうれしい。』
たとえ、知らない間にだれかとどうにかなっていても、
『私がちょっと忙しかったから、いけないんだよね。』
しばらくたって、
もうこのロマンスは終了かと…
たまにね、
ただたんに、
自分の独りよがりで
れんらくしてなかったり、
別件にエネルギー使ってたり
してるだけなんだけどさ。
自分がふってないのに、
ふられたかのように
話をする。
私がかわいくなくて、どうしようもない子だから、仕方ないね。
って。
言った側から、違うロマンスが始まっている。
まったくここでも、
矛盾が生じている。
相手にはある程度の常識と思考をもっていると
思ってほしいと思っているなら、
ふった
なんて
マイナスなイメージ、
他人に言わなければいいのにね。
でも、
ほら、私は、
悲劇のヒロインだから、
ふられた
=
私はかわいそうな人
にしたいから。
そこは矛盾でも、
そういうストーリーに
しておかないと。