理不尽
叩くも何も1年間フル稼働していたおかげでレベルがカンストに
近い廃人プレイヤーの俺が叩いても経験値が増えるわけも
無いのだが、この少女にネットゲーム廃人だと悟られぬよう
つまらないプライドを心に秘めつつ
「いや、俺はもうすでに訓練終わったんだ。だから大丈夫」
「あ、そうなんですねー。やぁ!えい!」
叩くのに夢中で適当な返事を返さたが、コロコロと転がるどんぐりを
追いかけている天然物のリスのような少女を見てると逆に好印象で
ある。うん、もう好きです。
「え、なんですかぁ。終わりましたよー」
あ、終わった?早いな。えと、じゃ次は早速モンスターを倒すんだけど
こっちに・・・
「あの~すみません。もう時間がなくて、家に帰らないと。
でも、これすごく面白いから家に帰ってまたダウンロードする予定ですぅ」
おぉそうか。まだマトリョーシカ追い回したくらいで、何も教えて
いないのだが、このネットゲーム屈指のマゾゲームに対して
素質はあるようだ。とりあえずは、ログアウトしようとしている
少女を引き止め、また良かったら連絡してくれとだけ伝えた。
「はいーわかりましたー。でも連絡ってどうするんですかぁ?」
俺は直接この世界にいるので、会話システムがどのようになって
いるのか不明だが、恐らくいつものようにやっていた会話システムを
少女に伝え、また来ますという挨拶をしながらログアウトした少女に
対して寂しさを感じていたのだった。
少女が消えたと同時に、例の頭痛だ。
「おい、お前私がいった事忘れたのか?2度とログインしないよう
にって言っただろ。あの子、続ける気満々じゃないか。どうするんだよ」
「いやちょっとまて、確かにゲーム内にいけるなら行ってみたいとは
言った気もするが、所謂このゲームのユーザーに対して引退に
持ち込むような事をする約束をした覚えはないぞ。そもそも俺はもう
十分だ。元の世界に返してくれ。それから毎回この頭痛はなんなんだ。
痛いだろ」
「元の世界っていっても、1年間はどっちみち帰れないぞ?お前何言ってんだ?」
頭痛の事は触れもせず、何言ってるんだと、さらっと何の問題も
ないような感じで流れるように話されても困るのだが、台詞そのままお
返しするよ。
「まぁお前は1年たてばどっちみち戻れるだろ。やりたくならやりたく
ないで、元の世界に帰れるし。あぁそうそう。それまでこの世界を
満喫したらどうだ?あぁでも元の世界に戻っても現実世界でしっかり
1年間時間たってるからそこのとこよろしく」
あぁまた重要な事を後追いで言ってきたよ。取り交わした契約に
対して、後付で色々不都合な事を言ってくる悪どい人間そのものだ。
契約した覚えも無いが、間違いなくこれは契約不履行だよな。
いずれにしても、一つだけわかったことがある。こいつは元の上司
より最低だ。ふざけんな。早く帰せ!