なんとなく解ってた
「おい、聞いてるか?いい忘れたけど、お前だけネットゲームの
中にいる状態だからな。後はそれぞれお前がやってたように
外部から接続してるんだよ。そこんとこよろしく。あ、それから
LVはゲームデータのままにしといたぞ。サービスだ」
LVはともかく、またまた何がよろしくなのか理解し兼ねるわけで
ところでこれは契約破棄出来るのか。まだ契約書らしきものに
印鑑はついた覚えないし。
それに、そもそもまだ隠している事あるのじゃ無いのか。
「・・・じゃ、またな」
言いたいことだけいって、都合がおそらく悪いのであろう
またなの言葉以降は一向に何も喋ろうとしない性悪おじさんを
蹴り倒したくなったが、姿が見えなく声だけなので不可能なわけだ。
まぁとりあえずは事の状況だけはだいぶ掴めた。
ところで結局、このゲームって何なんだ。
「え、あ、はい。えーっと、公式マネージュブックってガイドブックに
書いてますぅ」
これが夢だったらいいのにと思いながらも、夢だとしても精神学的に
君はそれを望んでいたのじゃないのかねと、かの有名なフロイト先生
から間違いなく指摘されるのであろう。
薄々は気づいていたさ。ただ認めたくなかったんだ。いきなり知らない
世界に来て、直ぐ様順応するやつはそうそういるはずも無いだろ。
という事で、俺がまさにこの一年ハマり込んでいたゲームにどうやら
引き込まれたらしいのだ。初めこそ錯乱したが、まぁしばらくは
全く知らない世界でも無いわけだし、無邪気な笑顔の少女をほっとく
わけにも行かないから、夢の続きと思って案内する事にしよう。
と、一人でいるよりかは、誰かと一緒にいて気を落ち着かせた方が
得策だと判断した俺は、先ほどの「うたおうしまへようこよ!」しか
発言しない初心者の登竜門であるNPCに話しかけさせ
初心者装備セットをNPCに貰うやいなや「わぁ!」と感嘆の言葉を
あげられた少女様に対して、お互い軽い自己紹介をしつつも
訓練場であるマトリョーシカ広場へと案内差し上げるのだった。
ちなみに、このマネージュのゲームシステムでは、LV2から~LV5
まではこのマトリョーシカ広場で訓練をすればいとも簡単にLVが
あがるのである。次々に小さくなるマトリョーシカを仕留めていけば
すぐにLV5だ。どうだ、簡単だろう?
「えぃ!えぃ!たぁー!」
100層式の30匹目当たりの逃げるロシア製の木人形を叩いている
少女の光景は、何だか非常に和む。案内したのは正解のようだ。
この子、実家にマスコットとして置きたいくらいだ。
「ミムラーさんも叩かないですかぁ?」