咬み合わない二人
「ん?何?」
「いやぁあのですねぇ、何か友達に面白いって言われたからログインしたんです
けどー、何かよく分からない状況でぇ」
どうしたらいいのかよく分からないのは、あなたよりも俺の方であって突然
わけもわからない所へいるにも関わらず、ただそれをこの可憐な少女に話し
てもしょうがないだろうと思い、何でしょうだけと受け答えをする事にした。
「いやあのですね~わた─」
少女が何か喋ろうとしている中、突然の頭痛だ。偏頭痛など全くの無縁の俺なの
だが、これは痛い。アイスクリーム頭痛の経験は皆あるだろうか。その頭痛と
全く同じだ。
「おい、どうだ。この世界はいいだろう。お前の願いは叶えたぞ。お前の
好きなネットゲームの中だ。どうだ見覚えある世界だろ」
「おい、まて。お前まさか本当に俺をネットゲームの中に連れ込んだのか?
見覚えある世界?ここは一体どこなんだよ?」
「どこだって!?お前ならわかるだろ。ここはな・・・」
「あの~あの~、どうかしたんですかぁ?」
今の俺の状況そのままどうかしているのは全く言葉の意味
その通りで、それは置いとくとしても、聖徳太子でも無い俺は
同時に二人の問いかけに答えれるはずも無く、迷わず二重瞼の
美少女と話す事に決めた。
「いや何でもないんだ。話し途中でごめんね。どうしたの?」
「はい、このゲーム始めたばかりで、よくわからなくてぇ」
「えーっとこのゲーム?」
「はい、今ガイドブックとか見てるんですけど、
よくわからないんですよぉ」
例えば、一人で解けない問題があったとしよう。
二人ならば、解ける事もあるかも知れないだろうが、まだ悪魔の身を
食していないアダムとイブの知識程度では問題の解決に当然
至らないわけで、また一人足りないせいもあり文殊の知恵が
発動するはずも無く、この有り様なのである。それにしても
この子いくつかな。話し方からして、中高校生くらいだろうか。
「ガイドブック?でも今、何も持ってないよね?」
「え?どういう意味ですかぁ?今手元にありますよー」
150cmくらいであろう少女の手元をまじまじと上から見下げても何も持って
いない。俺の眼球が腐っているのか、それとも本当は持っていないのか
どちらだろう。
「ネットカフェのガイドブック見ながらですね、えーーとぉ」
「おい!おいっ!!」
またか・・・少女と話すのに夢中ですっかり忘れていた元上司の声に
似たおっさんだ。毎回こいつの呼びかけの度に頭痛がするのだが、痛みを
こらえつつ話すのも面倒くさいので無視を決め込むが勝手にこいつは喋り出す。