少女との出会い
「いや、でも仮にそのゲーム内にずっと入れたとしてもな、こう見えても心配する人がいるんだよ。ゲームにいる間俺はこっちの世界じゃいない事になるのか?
そうだとしたら、行方不明って事になるよな。そうなると刑事事件にでもなり
かねないぞ」
すごく真っ当なことを話している自分がいると同時に、既に半分興味がある事は
先方にはひた隠ししていると
「大丈夫だ問題ない。それよりも・・・」
いやいや、どこかで聞いた台詞なのは突っ込まないにしても、問題ありまくり
だろう。それよりもってなんだよそれよりもって。
「お前は行きたいのか行きたくないのか。どっちなんだ」
半分キレ気味で私に問いかけているが、何一つ悪いことしていないのに何故か
突然キレる様は、まるで前職の上司のようだ。
はいはい、とりあえずまぁアンタの行ってることがもしホントで行けれるなら
行ってみたい気もするがねと生返事をしてカーテン越しに日差しが照っていた
のを確認し、そのまま眠りについたのであった。
「わかった。また連絡する」
何か最後につぶやいたようだが、気にもせず眠りについたのであった。
まぁそうだな。2択で迫られたら、そりゃ行きたい方を選ぶさ。俺には当時これ
しかなかったしな。そんなもんだろう?
ふと気づくと、そこは見慣れぬ光景であった。
はて、一体ここはどこなのだろう。
布団の中で寝ていたはずだが、当たりは何故か和やかな景色に包まれていた。
小鳥のさえずり、パンの焼ける匂い、辺り一面には花が植えられていて、どこと
なく心地いい感じだ。そんな中、どこからとも無く、声が聞こえてくる。
「う・・・・・へ・・・・・こそ!」
ん、なんだ。何か言ってるな。俺は何も考えずにその言葉を聞きたいのかは
わからなかったが、無意識に声が聞こえる方に足を運んでいた。
「・・・たおう・・・ようこそ!」
ん・・・・
「うたおうしまへようこそ!」
へ???
うたおうしま・・?うたおうしまだと?ここは一体どこなんだ。
自分の足で歩いてここに辿り着いたのか。ニートだけじゃなく、いつのまにか
夢遊病持ちのステータスも含まれてしまっていたのか。それとも、誰かに寝て
いる間に連れされられたのか。不安が加速度的に上昇してきて、もう何が何だか
わからない。混乱呪文でもかけられたかのようだ。
事態がわからずに、「うたおうしまへようこそ!」と同じ言葉を連呼している
奇妙なやつから遠のきながら、いい香りがするパン屋の前で途方に暮れていると
「あのすみません~」
後方から声が聞こえ、パブロフの犬並に呼びかけに対して条件反射で即刻ワンと
振り返ると、なんとまぁそれは背丈に似合わないぶかぶか甲冑に覆われている
可愛らしい少女だった。何て可愛いんだ。一言二言でも異性と話すと、その人の
ことを好きになる俺だが、悪魔で冷静な装いを保ちながら、俺は返事をした。