空気を読まないマザコン
全面的に悪かったヒサヒが少女に頭を下げつつ、もう大丈夫ですと何故か
少女も頭を下げ全日本お辞儀大会が開催されているのだが、どうやら事件は
終息に近づいているらしい。
「いやーお前よくやったな! 」
俺が直接手を下したわけじゃないのだが、どうやらこいつは俺が仕組んだ
罠と勘違いして俺を褒め讃えている。
「わっはっは!記念すべき第一号だ」
マザコンが嬉しそうに笑っているが、空気を読まないこいつの笑い声に
呆れるばかりだ。後、99人だなとか続けて言いながら、会話を続けると
揚げ足を取られるのを理解しているのだろうか言いたい事だけ言って
言い逃げしたマザコンである。あ、そういえば頭痛は解消されてるな。
こうして、俺の意図しないところで、引退者もとい被害者がでたようで
この世界から脱出するワンステップを改めて踏むことになったのだが
釈然としないのは言うまでもない。ところで、あおばちゃんはこの世界に
残るのだろうか。お兄さんがいなくなった今お兄さんの元に行くのだろうか。
何だかんだで仲良さそうだしな、きっと別のゲームに巣立ちするのであろう。
未だにお辞儀を止めない少女を見てると、なんだかね。
いろんな感情がまじって、うまく言葉に出来ない。
止めなければ永遠続くであろうお辞儀を止めさせ、これからどうするのか
質問を投げかけると、このゲームを続けるかどうか迷っているらしいのだが
止める止めないは保留という形でしばらくはこのゲームを続ける事にするらしい。
俺としてはこの上ない話しなのだが、この子をこの世界に引き止めるのは
たかっち含めてやはり色々と問題が山積みである。
「だから、保留なのですぅ」
と一言だけ言って、少女の笑顔が戻ってきたのであった。
この子だけは引退者送りを避けようと保護者気分でいると同時にいち早く
元の世界に帰りたい俺は、99人もどうやって引退に持ち込めばいいの
だろうかと考えると一気に鬱モードな気分だ。
まだまだ先は長い。先が見えなさすぎてため息すら出てこない。
当分帰れるのは先だろうが、次は誰を引退送りにしようかねと呑気に
杖を磨いているユリオスを見ながらこいつでいいかと思い始めた
俺なのであった。