たかっち行方不明事件
と二人言葉は違えど同じ仕草で驚いている。ここらへんは改めてだが
兄弟であるからやはり似ているな。
「レベルがあがったみたいですぅ。すごいですぅ。すごいですぅ。すごいですぅ」
大事な事なので3回も言ったのだろうか。レベルが上がって興奮している
少女なのである。ぴょんぴょん跳ねながらくるりと手を広げながら
綺麗に一回転している姿は例え犯罪意識がない男性でも直ぐ様攫っていく
レベルの可愛さだ。
「やーーっと、これでレベル20になったわね。じゃ、うちのギルドでは
レベル20なったら全体会話システムで、ある事を言ってもらう
規則があるから頼むわね」
そんな決まり事などあったかなと思いつつも、ヒサヒの思いつきで
話しているだけの事は少し考えれば分かることだ。この世界では
レベルが一定数を超えると、このワールドのユーザー全体に発言を
出来たりするシステムがあるのだ。用途としては、ワールドユーザーと
雑談したり、商売のためにと色々あるのだが、何をさせる気なのだろうか。
「え、何ていうんですかぁ?」
先程の興奮治まらないまま、大きな眼をパッチリしながら興味津々で
ヒサヒを見つめていると
「売ります アカウントって言うのよ」
馬鹿じゃないのかこいつは。この台詞を言わせるって事は、運営から
止むおう無しにアカウントBANをくらう発言だぞそれは。
幼気な少女を闇に落とす気か。
「冗談よ冗談。そんな本気で怒る事ないでしょ!」
「そうなんですかぁ?よくわかりませんー」
鳥かごの中の少女の生き写しといったところだろうか、外界の数々の
危険を知らないとこういう無垢な子に育つのだろうと俺は思いながら
ヒサヒが言った事の危険性を全く理解していないようだ。
まぁそれならそれでいいんだが、通常この手の発言は運営で規約上
禁止されているアカウント売買に抵触する行為であり
例え冗談で発言したとしても見つかり次第、永久ログイン出来くなる
つまりはアカウントBANになるのだ。冗談で言ってるにしても
タチが悪い冗談であり、真に受けたらどうするんだよ。
「しつこいわね。はいはい、悪かったわよ!」
反省の色が全く見えなく、こういうところが好きになれないのだが
「あの、ちょっと・・・皆さん」
ユリオスが何か気まずそうな顔をしている。
「なんだ、ユリオス」
ヒサヒに対して気が立っていたので、ユリオスに対しても強くあたると
「いえ、それがその何て話せばいいのでしょうか。言葉に困りますが」
「だからなんだ、早く言えよ」
もったいぶるユリオスに俺は急かす。
「いえそれが、もう既にたかっちさんが発言しているようですが・・・」
素直な事はいいことだ。ただ、素直すぎることで、人生損をする事が
割合多いのじゃないだろうか。冗談混じりの言葉も受け止め
己の無知のせいかそれを信じる人も多い。もちろん騙す方が一番悪いが
仮に過失だったとしても、やはり騙される方もまた同様に悪いのであろう。
まぁつまりは、一言で言うとたかっちが運営にBANをされたのだ。
俺達の前から時間差でふっと姿を消したたかっちに対して、何が起こって
いるのかすら理解していない少女に顛末を理解させ、理解したかと思ったら
ふくれっ面になり、その顔も可愛いなと思いながら、シリアスな場面なので
必死になだめつつも、ヒサヒも必死に謝っている。
過失である事をやっと理解してもらったようで、その後「ちょっとだけ
待っていてください」と語尾を珍しく伸ばさずに少女が真面目な顔をして
らしくないお辞儀もせずにログアウトしたのを待つことにしたのだった。
待っている間、ヒサヒの落ち込んでいる姿を見ると、こういう面もあるんだと
思いながら軽率だったヒサヒに対して怒る気も失せ、ヒサヒの肩をぽんと
叩きまぁしばらく待とうぜとフォローするのであった。
しばらくして少々が戻ってくると、少女なりに一生懸命説明しているようだが
断片的でかつ、あせって思いつくまま喋っているせいか言葉のふしぶしを
理解するのに苦しんだが、要約すると、恐らくこういう事だ。
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少女がたかっちと話をして、BANの理由の話をした。
たかっちも初めはかなり怒っていた。
しかしながら、少女の必死の代理謝罪に怒りも次第に収まってきた。
話し途中で雨が降ってきたので、急いでお父さんの洗濯物を家に入れた。
少し濡れていたが、そのまま下着入れに畳んでいれた。
たかっちのとこに戻って、過失である事を理解したたかっちから
飴をもらってその飴がメロンソーダ味でとてもおいしかった。
たかっちは犬の散歩に行く事になった。
たかっちは、玄関際でもう2度とこのゲームはしないと言った。
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そりゃそうだろうよ。