忠犬ユリオス
俺からするとこんな雑魚モンスターなど簡単に倒せるレベルで100個
集めるのに造作も無いのだが、この二人にとっては1匹1匹倒すのに
苦労するレベルなのである。気が重そうに言っている少女ではあるが
まためげじとモンスターを叩いている。
10分位だろうか。しばらく二人がクエストアイテムを集めるのに
健闘しているのを眺めていると
「ん~やっぱり時間がかかるわねぇ」
「まぁ初心者レベルだしな、こんなもんだろう」
「ねぇミムラ、面倒くさいからあの手でまたいかない?」
やるのかあれを。恐らく流れ的にそういう事になるのだろうとは予感は
していたが、元々こいつは気が短いから手っ取り早く済ませたいのだろう。
「いやあれはなぁ、ほら何ていうか楽しみを奪う感じになるのもな。
まぁ黙って見とこうぜ」
「ちょっと、ユリオスに連絡とってみるわ。待ってなさい」
あぁ駄目だ。もうやる気だ。こうなると説得しても無駄だからもう
従うしかないのだが、まぁ本当のところは賛成なんだけどな。
黙ってずっと見とくのも暇だし。ヒサヒがその場で静止したまま
動かなくなっているのだが、恐らくユリオスと現実世界で
連絡をとっているのだろう。女性の連絡先を知っているというのは
男としてやはり嬉しいものなのだが、こいつに限っては例外で
連絡先を教えないほうが身のためである。一旦捕まるともう逃げれらない。
「来るって、ユリオス」
来るんじゃなくて、無理やり呼んだんだろう。
「どっちでもいいのよ。黙ってなさい」
このやりとりも何千何万回目なんだろう。俺もギルドの管理者として
立場上言うがこいつも意志を曲げる気が無いので、このやりとりは
これからも続くのであろう。
「じゃ、私今から引き連れてくるからユリオスに伝えといてね」
「はいはい分かったよ。だけど、あんまり派手にやるなよ。
見つかったら、俺も色々口煩いやつに言われるんだからな」
「わかってるわよ。任せなさい!」
絶対わかってないだろと突っ込みを入れる暇も無く、マッハで加速して
消えたヒサヒである。それを確認して地べたに座ろうとすると
「やぁミムラさん、昨日の方が戻られたと伺いましたよ」
いつからいたのか分からないのだが、ヒサヒと同じく突然現れたのに
驚きもしないのはいつもこんな感じでひょっこり現れるからなのだろう。
それにしても呼ばれてすぐ来るとはお前も相当暇なのか、忠犬として
ご主人様の命令を忠実に行おうとしているのかどっちなんだんだろうかと
考えつつ
「まぁな。俺としては仲間が増えていいんだが、ヒサヒから聞いているだろ」
「えぇ、まぁ。ところでヒサヒさんはどちらに」
「どちらにっていうか、もうモンスターを集めに行ってるぞ」
ユリオスは少女の居場所を確認した後、知らない男が一緒にモンスターを
叩いているのを見て不思議そうに首を傾げている。
聞いてなかったのかもしかして。
「あのお連れの方はどちら様なのでしょうか?」
説明するのも面倒くさいんだけどな。彼氏とでも言ってみようかと企てつつも
彼氏と認識してもこいつは無反応であろうから、兄だよと応答した。
「あぁそうなんですか。兄弟でゲームしていたんですね。どうりで」
兄とだけしか伝えていないのに、それだけで色々と納得したユリオスであり
少女がユリオスに手を振っているのを見て軽く会釈している。
良かったなあおば様に覚えていてもらっていて。
「ところで、前もこの方法で行いましたけど、あの時のユーザーさんも
すぐゲームを止めてしまいましたし、私としては長期的な面でじっくり
やられた方が宜しいかと思いますが・・・」
まぁそうなんだけどな。だが、もう遅いようだ。見てみろ。ヒサヒが大量の
モンスターを連れてきている。節度あるモンスターを引き連れてくるように
口添えしたはずだが、見た感じ300は超えている数のモンスターだ。
限度を知らないのかこいつは。それにユリオスが来てなかったら
どうするつもりだったんだろうか。