イケメンDQN
「あの~ミムラーさん、いますかぁ?」
はいはい、いますいますよ~っと、んっ!?
「あ、ミムラーさんこんにちはぁ」
え・・・狼狽を隠し切れず、やや声高々に喋る俺。
「あれ、えと別のゲームいっちゃったんじゃないの?」
「はいーそのつもりだったんですけど、やっぱりこっちの方が面白いので
きちゃいましたぁ」
布団の中で枕を濡らしつつ、センチメンタルな気分に耽っていたのは
なんだったんだろうか。だが、そんな事はもはやどうでもいい。
「はいー。こっちの方に行きたいって説得したんですよぉ」
何をそこまで彼女がさせたのか。何時ぞやか叩いたマトリョーシカによほど
深い思い入れがあったのだろうか。戻ってきたのは嬉しいのだが、アニメや
ドラマでよくある運命的な再会などを期待する暇もなく、さらっとまたこの
世界に顔を出してくるとは、壮大な感動の再会シーンを演出する脚本ばかり
見てきたので、あまりもあっけないが素直に嬉しい。
「頑張ったんですよぉ」
そうだろうそうだろうとも。誰かはわからんが、必死に説得した光景が目に
浮かぶ。ご褒美に頭を撫でて差し上げたいが、セクハラなのだろうか。
「ミムラーさん今、どこですかぁ。」
仮に地獄の果てだとしても、すぐ様飛んでいける自身がある俺は、その後
交わした会話によりうたおうじまに身をおいているという少女の発言に対して
クールに俺がそっちに行くよとだけ伝え直ぐ様ワープアイテムを使うのだった。
その前に、この靴変えたほうがいいのかな。
誰一人歌っていない名ばかりのしまにつくと、例のごとくあたりを見渡す。
確か前はパン屋にいた事を思い出して、パン屋の方向へ目を向くと、少女が
パンを片手に手を振っている。どんだけパン好きなんだと思いながら
そんな事は些細な事にすきず、俺は羽が生えたように少女のもとに
向かうのである。少女のもとにつくと俺は
「パン好きなんだね」
と、いきなりパンの話題をする俺も変なのだが、些細な事とは言えども
やはり気になって質問をした。
「この焼きいれパンおいしいんですよぉ」
うたおうしまの名物パンである食べればヒットポイントが全開する
初心者レベルしか食せない焼きそば風味のパンという設定で、その味は
ヒットポイントが全開するほどだから絶品である。ちなみに
店主が丹精込めて生地を愛情込めて練り込んで焼き上げた力作であり
決して誰かに制裁を下す為に作ったパンである事じゃないのは
説明しておかねばならないだろう。俺も出来たらまた食べたいが
店主が売ってくれないのは言うまでもない。
ところで、この少女の隣にいるイケメンは誰なんだろう。
「こちらは、たかっちですぅ」
ざっくりとした説明だが、まさか男を連れてくるとは思いもかけず
この少女とどういう関係なんだろうか。見た感じ爽やかな好青年のようで
あまりに容姿が良すぎて貶すところが無い。
「あ、どうも~たかっちっす。あおばがいつもお世話なってまーす」
前言撤回。なんだこいつは、最近の若者というかなんていうか
礼儀を知らない奴だな。どういう間柄で少女をかどわかしたかは知らんが
少女を呼び捨てにする軽々しいお前なんかにあおばは嫁にやらんぞ。
出て行け!とも言えず、
「あっ、えーはい、初めまして」
と、引き気味で返事をする俺。続けて、彼は
「いや~なんて言うか、マジでーあおばにどうしてもこっちに行きたいって
言われたというかーあれなんでー、俺もこっち来たんすよー」
何があれなんだろう。こういうタイプが一番俺が嫌うタイプで、波長が合わず
生理的に受付けないのだが、元上司に合わせたら、即効鉄拳パンチが
飛ぶのだろうと思いながら、あくまで理性的に話しを進める事にした。
「えぇまぁそのーあおばさんとは先日知り合ったんたんですけどね。
えと、たかっちさんはあおばさんとお知り合いの方なんですよね」
こんな少女にこんな知り合いがいるとは思えず、付加疑問で質問をすると、
「いやー知り合いっていうかー──」




