別れなんて突然
「はじめまして、私はユリオスを申します。私はミムラさんの運営するギルドの
一員でございまして、ヒサヒさんもその一人です。昨日の事をミムラさんに
伺って、あなたを是非私たちのギルドに勧誘しに参った次第です」
バカ丁寧な敬語を使って、少女に挨拶をしているが、俺が言おうとしている
事を言ってくれているので黙って聞いていたが、勧誘ではなくて拉致の
間違いって事は訂正をしないといけないだろう。
「ギルドですかぁ。う~ん・・・」
初めて見せる戸惑いの表情だ。何かギルドに対して強い抵抗でも
あるのだろうか。
「あなた興味ないの?いいわよ~ギルド。こいつら使い放題だし。決まりね」
勝手に話を進める恣意的な保険屋のおばさんみたいな強引さだが
「いえそれが、別のゲームをする事になったので、私もそっちに行く事に
なったんですぅ。」
友人と一緒にゲームでもしているのだろうか。少女は、俺が知らない誰かの
意志のせいで別のゲームにいく事になったらしいのだが、この少女と一緒に
ゲームをしている何て羨ましい限りだな。俺が質問しようとすると、ヒサヒが
先に喋りだした。
「あらそうなの?でも、あなた今ログインしてるじゃない」
「はいー。昨日お世話になったので、ミムラさんにご挨拶だけでもしようかとぉ」
律儀な女の子で、俺は涙が溢れそうなのだが、挨拶をする前にパンを
かじっていたのは少女がマイペースで他ならない証拠だろうか。
「そういう事ならば、しょうがないですね。残念です」
ユリオスは既に諦めモードになっているが、ヒサヒはあくまで引き止めにかかる。
「その誰かわからないけど、一緒にこっちに連れてくればいいじゃないの。
このゲームのほうが面白いわよ」
「はい、それも考えたのですがぁ、やっぱり別のゲームに行くことに
決めたんです。でも、このゲームはとっても面白いと思いますぅ」
「んー残念だわ。せっかく知り合ったのに、う~ん、まぁでもしょうがないわね。
色々ゲームあるしさ、そっちでも楽しんでね」
俺には優しくないのに少女には何故か対応が優しいヒサヒであり、大人の対応で
少女を見送ろうとしている。それを横目に、俺はただ目線を地面に向かせ
何も言えず俯いている限りだ。俺もそっちのゲーム行きたい。
「わかりましたぁ。少しの間でしたが、とてもいい人達に巡りあえてよかったです。ミムラーさんもヒサヒさんもお元気でー」
「うん・・・お元気で」