合格通知
相変わらず声が可愛い。無難に俺は返事を返す。
あ、いえ、こちらこそ。またログインしたんだね」
「はいー、ダウンロードしちゃいましたぁ」
愛嬌の塊でこの子は出来ているのだろうか。俺の身も心もダウンロードして
ほしいくらいだが
「そうなんだ。えと、良かったらまたお話したいのだけど、まだうたおうしまに
いるの?」
「えーと、昨日のとこの近くにいますぅ」
それをヒサヒに伝えると
「よし!ユリオス、ワー──」
「はい、分かりました!」
まだ、ワープとも言っていないのに、ヒサヒが何を言わんとしているのか
従順なユリオスは即刻返事をし、呪文を詠唱しだした。
こいつも色々とヒサヒのせいで苦労が多く、俺と同様にこき使われている
被害者なのである。専ら、ヒサヒはユリオスを程のいい奴隷程度しか思って
いないので命令をきくのは当然だとくらいしか思っていないのだが。
アジトで落ち着く暇もなく、またまたうたおうじまに戻された俺は、少女がいる
かどうか辺りを見渡した。辺りを見ると、パン屋の前でどうやら見覚えのある
甲冑の女の子がいた。
「あーいたいた。おい、あの子だぞ」
「何あのこなの?女の子じゃないの」
そういえば、女性である事は言ってなかったので、若干驚いていたようだが
おーいと声をかけつつパン屋前の椅子にちょこんと小じんまりに腰掛け
パンをはむはむと噛じっていた少女に近づき、こちらが挨拶をする前に
「あ、ミムラーさんこんにちわぁ。あ、えーと、そちらの方は・・・」
俺が少女に質問を返す間もなく
「私はヒサヒよ。あんた何よ、ちっこくて可愛いわね。よし合格!」
「えぇ!?何ですかぁ」
ろくな挨拶もせず、何の合格認定かすらも知らされていない少女は驚愕の表情だ。
たぶん見た感じが可愛かったから、その理由だけでヒサヒは合格にしたの
だろうが、色々説明を省きすぎて、パンを両手で握りしめたまま
たじろいでいる少女がまたいじらしい。