変なおじさんが何か喋ってる
初めての投稿になりますが、皆々様よろしくお願いします。
1章 新規者を引退に持ち込めないはずはない
自分の置かれている状況を事細かに整理したとしても状況が
何一つ好転するわけでもなく、ただ呆然とする事はないだろうか。
自身がまさにその状態に至っているのである。
それならば、いっそこの状況を楽しもうと半場投げやり感も
あるのだが、当面はうそんくさい命題をクリアする事だけに
全力を注ぐ事にしよう。
もうログインしないであろう俺の目の前で姿を消した新参者の
彼女の行く末を案じながら、そう固く決意したのだった。
そうだな、皆にはどこから話をすればいいのだろう。
まずは、この状況に至った経緯を話す事にしようか。
会社を退職してもう1年の月日が経った。
簡単に次の就職先なんて見つかるだろうと退職した当初は
思っていたが、この不況の中自身の浅はかな考えは見事に
玉砕することになる。
退職した初めの1ヶ月は、積極的に面接を受け落ちては面接の繰り返し。
まだ見ぬ職場に希望を胸に抱えながらも、就職活動に励むが結果がついてこない。
そして3ヶ月も経つと、その現状から次第に面接すら億劫になってくる。
自分はニートになんか絶対にならないぞとニートを小馬鹿にしていた
時期も懐かしく、今は貯蓄を食いつぶしながら就職活動なんのそので
ネットゲームに嵌り込む毎日が増えていくのである。
現実とネットゲームに費やす時間も半年が経つと見事に逆転し
ニート1年生の今ではゲーム世界でフルタイムの皆勤賞も
貰えるほどに成り下がったのだ。
荒んだ生活を送り健全な生活とは言えないせいもあったんだろう。
もういっその事このゲームの中が現実であればいいのにと
思っていた最中とある声が突然頭の中に響いたんだ。
「お前、そんなにこのゲームが好きならお前の望む通り
それを現実にしてやろう」
寝ずにネットゲームをしていた俺もさすがに疲れが見えたのだろうか。
太陽がまさに顔を出そうとしている時間の最中、気にもせずに布団に
入ろうとすると
「いや、お前無視するなよ。話し聞いているのか?」
やばいな、さすがに寝ずにゲームし続けると幻聴すら聞こえて
くるようになるのか。今日はさっさと寝よう。
「おい!」
何なのだろう。久々怒鳴られたのも新鮮だが、幻聴ではないようだ。
何やら、恐怖に近い感覚を覚えながらもなんなんだよと誰もいない
部屋にて呟いた。
「いいか、ゲーム内に入りたいのであろう?ただし、条件がある。
お前は1年でこのネットゲームの住人の100人を2度とログイン
しないように持ち込むのだ。もし、1年でそれがクリア出来ない
場合は、元の世界に戻ってもらおう。しかし逆にだ、それが出来たら
貴様をずっとこのゲームの中にいさせてやろうじゃないか。
どうだ、悪い話でも無いだろう」
聞いてもいない事を話したり、お前呼ばわりされたりなど、どこから
突っ込めばいいのかわからないが、中年であろう図太い声の持ち主が
何やらメタいことを話している事までは理解が出来たのは言うまでも
ない事だろう。そんな馬鹿な話し信じる奴がいるのか。
「疑うのも無理はない。ただ、どうなのだ。お前はネットゲームの中に
入りたいのだろう?好きなだけお前の自由にゲームの中で暮らせる
のだぞ。これ以上の幸せがあるのか?」
ドン引きに近い、冷静に一歩引いた状況でどこからとも無く
聞こえてくる得体の知れないおじさんと話しをしているのだが
早くも畳み掛けに近い言葉巧みな甘い誘惑な言葉を並べ
ゲーム内に連れ込もうとしやがる。この押しの強さは
営業の仕事でもやっているのだろうか。