第四勢力は何もしない。
あのようなあらすじで来てくれるなんて感激です!少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです!!m(_ _)m
「なら、私は灰色を選ぶ!!」
――そういった彼女の言葉は、イヤホンしてたから聞こえなかった。
私立パリヴィンヌ学園。
ここには二種類の制服がある。一つは白を基調とする生徒会委員派、もう一つは黒を基調とする風紀委員派。それらは学園創立以来から仲違いしており、委員以外の生徒は入園3ヶ月後にどちらかの派閥に入らなければならないという掟がある。勿論、不満があるのなら制服を変えれば移動は出来るが、それをする人はほぼ0に等しいだろう。
さて、そんな状態は先週、ある転校生によって変革されようとしていた……らしい。
「……なるほどー。だから風紀委員長あんなにプンスカしてたのかー。いつもの便秘じゃなかったんだねー」
「いやいやいや、お前の情報収集はどんだけ遅いんですか!?これもう校内全員知ってることだよ!?つーか黒瀬が常にお前の前でイライラしてるのは確実にその格好の所為だからな!!」
「いいではないか。楽だぞ?ジャージは」
言ってから私は学園指定の紺のジャージをチラリと見る。うん、本日も快適です。
「今時の女子高生がおばあちゃんみたいな発言すんな!」
「相変わらず五月蝿いなあ小姑くんは」
「俺の名前は小野崎修斗だ!いい加減覚えろ今井梨沙!!」
「やだ」
……眠い。だらだらするのために貴重な昼休み。週に一度、人気のない第二校舎裏で、生徒会派の小野崎と風紀派の私は、お互いの学園生活のため入園当初から二大勢力の情報交換している。
そのついで、朝、風紀委員長に普段より長く説教されたので、何をピリピリしてるんだと愚痴を溢すと絶句、罵倒、ため息、それから疲れた顔で懇切丁寧に今の状況を教えられた。
なんでも新しく来た一年の転校生が風紀派の問題児と一緒に私服を着る第三勢力をつくり派閥廃止宣言をしたそうな。初めは皆鼻で笑ってたが一昨日、生徒会派の花園薫さん―野の花のような可憐さが男子に密かに人気がある―が灰色に入った事で現在、両派閥は機嫌が悪いそうで。
…しかし、説明くらいで疲労するとは、小野崎は全くもって軟弱な奴だな。
「…おい。休み時間終わるから戻って来い」
仕方ない。小言が終わったようなので回想という名の現実逃避から帰って来てあげるとするか。
「何だ?」
「こんな状態になってるんだ。今までは一応派閥に入っているから相手にされなかったけど、明日からはちゃんと制服着た方がいいじゃないか?下手したら、第四勢力とか言われてもっと酷いとばっちりがくるかもしれない」
「そうだな。さすがに痛いのは嫌だし、もうちょっと様子見してからそうするよ」
「…ああ。それ聞いて少しは安心したよ」
「何だ?私が何かすると思ったのか?」
「お前なら着心地の良さでジャージを貫くと考えてもおかしくないさ」
それを聞いて少女はクツクツ笑った。そして一言。
「心配しなくても第四勢力は何もしないよ」
ただ、チャイムが鳴ったので、少年にその言葉は届かず、聞き直したが、少女何もせずに去って行ったという。
―…少女は思った。決め台詞を何度も言うのは恥ずかしいと。それから、心の中で転校生に詫びを入れた。
ここまで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m