ある男の決意
ラノベの新人賞で、一次落ちした作品です。
一次くらいは通ってくれるかなと思っていたのですが、難しいなぁ、と思います。……何がそんなに悪いのだろうか。
友達が死んだ。
幼い頃からの付き合いの友達で、いつも一緒に居る事が多く、誰よりも長い時間を共有した友達だ。
馬鹿なこともやったし、互いに競い合うように訓練に励みもした。
互いの良い所を知っているし、互いの恥ずかしい過去はそれ以上に知っている。
同じ人を好きになり、二人ともフラれたことなんかもあった。
無二の親友であり、ライバルだったのだ。
そんな関係は、いつまでも続くと思っていたけれど、そんな俺の親友は、呆気なく死んでしまった。
自分達は、人を害する妖怪と戦う存在だ。だから、いつ死んでもおかしくない。
彼にしても俺にしても、死んでしまうかもしれないという覚悟はしている。
けれど、今回の件は、あまりにも納得できなかった。
親友が行った、妖怪退治の現場は、ある学校の学生寮だった。
その学生寮では、夜な夜な妖怪が現れては、悪さをしていた。
窓が割られ、備品が壊され、挙句の果てに、寮に住まう学生にも怪我人が出てしまう。その行いは、エスカレートしていったのだ。
妖怪退治にやって来た親友をはじめとした封滅士達は、痕跡に残った妖気から、相当な力を持った妖怪だと結論付ける。なので、万全を期して、数人で挑むことを提案した。
どんなに強かろうと、伝説的な大妖怪でもなければ、数人で挑めば確実に仕留められるという自信があった。
しかし、一般的に良く知られていない封滅士は、一般人にとって、妖怪と対して変わらない存在のようで、寮内に何人もの封滅士がいるのは、とんでもないと、学校側が言いだした。
確実に、妖怪を退治する為に必要だという封滅士の意見と、偏見による状況を理解していない学園側の意見。採用されたのは、意外にも学園側の意見だった。
封滅士の雇い主は国であって、国にとって大切にすべきは、封滅士ではなく、一般の国民なのだろう。
そして、一人で戦うことになった俺の親友は、妖怪との戦いで、力及ばず亡くなってしまった。
俺が駆け付けた時には、無残な状態になっていた彼の姿。しかし、学校の人間が、そんな彼に対して向けた言葉は、労りの言葉ではなく、妖怪を退治できなかったことへの罵倒だった。
ふざけるな。
言う通りにしていれば、親友は死ぬことなどなく、妖怪だって倒せたのだ。それなのに、学校の連中は、彼を馬鹿にする。
俺は我慢が出来なかった。
死んだのはお前らの性だと叫び、殴りかかろうとした。けれど、目的を達成する前に、周囲の仲間達に取り押さえられてしまう。
俺は反省を促され、閉じ込められた部屋の中、俺は考え続けた。
何故、親友は死ぬことになったのだろう?
それは間違いなく、学校の連中身勝手さと、それを許した国の性だ。
この国は、封滅士にばかり、負担を強いる。妖怪とまともに戦えるのは封滅士だけだから。だから、封滅士を酷使するのだ。まるで、奴隷のように。
この世は間違っている。
封滅士は人より優れた存在だ。
何故、劣った人間の言うことを聞かなければいけないのだ。
俺は、どんなことをしても、正したい。
二度と、彼のような犠牲を出さない為に。