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君と過ごす日常的な非日常  作者: こころ 
否《いいえ》・是《そうです》
93/98

93 彼女と彼の、中間存在  其の十


 銀の色と力に染まった女が一人。

 魔王の目を奪ったのは、その混乱か、その有り様か。


 守護を、守護を、守護を。


 血肉を喰らいて、喰らわせて。

 混じり合わせて、その境界を頑なに。

 頑なに、おまえという存在に。


 ――― 呪をかけよう。



「 ここは、どこ? 」


 いまはその目を瞑るがいい。

 我もまた、その目を瞑ろう。


 ここにあるのは、愚かな。


 愚かな、二人の存在の、 ―― 共存共生、 生きるがための呪いが一つ。










 彼は、手を差し出す。

 彼女は、手を求める。

 彼は、片目を瞑り。

 彼女も、片目を塞ぐ。




 障害だらけのその関係。

 それでもいいから、と片目を瞑り、片手を結び。

 塞いだその目の視界の果てに、あると知りながら素知らぬふりして。


 いつか訪れる、終わりがくるまではそのままに。




「世界は、愛おしいか? 友よ」




 おまえには、もはや我等を害することは叶わない。

 何故なら、それが呪《守護》の本質。


 魔王の守護とは、―――共生の呪。



 ――― 我がこの世を思うがために、主にこの世を害することはできぬのだから。



 異界から訪れた彼女へと、彼がかけたのはそんなまじない。




 共に生きるがためにこそ、全ての共有を果たそうか。





 言葉も。

 痛みも。

 祝福も。




 有すればこそ、いつかお前は我を思うだろう。

 愛すでも憎むでも、好きにするがいい。

 その呪があるかぎり、主には世を害せられぬ。



「…おまえの罪は重いよ、魔王陛下どの」

「知っておる」




 人の聴覚では聞き取れぬほど小さく零れたその言葉は、覚悟の上だよ、異界渡りの新しき我がよ。


















 歯が鳴って、爪が顕れて。

 久方ぶりの魔王への翻意を示す。威嚇のために。

 ただ一人で完成されている竜王には、本来聖魔の別はない。

 神がそのように創った故ではあるが、なればこそヴィラード=オークスには魔王への恭順を示す意味はなかったのだ。


「『沈むは聖、廻るが魔、この二大なくば延世叶わず』との言、忘れたわけではあるまい?」


 樹王が喪神の混乱期に述べたこの言葉は、まさに真実。

 なればこそ、魔の象徴である魔を統べる魔王の乱心は認められぬ。

 魔を生みしは世界なれど、魔を制せよと望まれたのはただ一柱の創世の神。

 ヴィラード=オークスにとっての聖上たる。


「そなたが魔の制御を放棄するというのであれば、我は新たなる魔王を祝福せねばならぬわ」


 赤色の瞳の中に、金の瞳孔が細長く収縮して、彼の本気を示した。


「急くな、ヴィラード=オークス」

 おまえの弱点は、彼の方に関することだと全く余裕がなくなることだな。


 竜王の殺意を前に、8代が魔王は何一つ焦ることなく呟いた。



「 あれは敵ではない 」




 どこまでも、冷淡に。

 この世界を見守るものはそう告げた。



























 …ほのぼの、かえってこーい。(泣)

 タグにほのぼの(出張中)か足したほうがよいのでしょうかのう? 






 本日の覚書


喪神の混乱期


 創世神の出奔直後。








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